紙・パルプ

日本の紙需要

日本における紙・紙製品の需要は、消費人口の減少といった構造的な要因に加え、とくに印刷・情報用紙ではオフィスにおけるペーパーレス化、メディアのデジタル化にともなって最近、急激に落ち込んでいます。しかしこうした需要不足を嗤(わら)うかのように、海外、とりわけインドネシア産のコピー用紙輸入量は確実に増えています。いまや、インドネシアを除く海外で最大の市場、日本で消費されるコピー用紙の三割はインドネシア産といわれています。

紙と森林資源

紙は森林資源からつくられています。日本の紙生産でもっとも多く使われているパルプ原料は古紙ですが、いうまでもなく古紙もまた木材からつくられています。バージンパルプの場合、コピー用紙や印刷用紙をつくるために投入される木材チップはほとんどがベトナムやオーストラリアなどの海外から輸入されています。その内訳は植林材がおもですが、なかには製紙業界が「天然林低質材」「天然二次林」などと呼んでいる天然林に由来する木材チップもふくまれています。

インドネシア産の紙製品はどこから?

「植林材100%」の宣伝文句が並ぶコピー用紙やティッシュペーパーなどのインドネシアから輸入される紙製品。ただ、アカシアやユーカリの単一樹種による産業植林地の由来をたどれば、乱伐などによる荒廃地や土地利用の少ない休閑地だったと言われている場所もじつは、地元住民が慣習的に使ってきた森林や、地域の生活を支えてきたゴム園や米作地、危惧種動物の生息地だったりする場合が少なくありません。スマトラトラが生息する泥炭湿地林はパルプ原料をつくる産業植林に姿を一変させました。西カリマンタンのダヤック先住民が慣習的につかってきた熱帯林はいま、重機が轟音を響かせながらつぎつぎとなぎ倒されています。

【参考】 

(JATAN) インドネシア最大の紙・パルプ企業APP社による森林破壊とグリーンウォッシュの疑い(続) 

(JATAN) アスクルの《安心して使えない》格安コピー用紙 ―紙原料向けの植林がインドネシアの熱帯林と暮らしにあたえる大きな影響

何が問題なのか?ー巧妙なグリーンウォッシュング

インドネシアで操業するアジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)社とアジア・パシフィック・リソーシズ・インターナショナル・リミテッド(APRIL)はいずれも過去30年以上にわたって熱帯林を破壊し続けてきました。大規模な森林伐採、泥炭地の排水、深刻な森林火災ばかりか、地域住民や先住民コミュニティからの土地を奪う土地紛争もまた、両社が依然として、解決を先送りしている重大な問題です。EUをふくむグローバル市場への進出を目指す両社にとってFSC認証は喉から手が出るほど手に入れたいグリーン証明です。APPもAPRILもずっとFSCと絶縁状態がつづいてきましたが、APRILは昨年11月に、APPは今年5月にFSCとの間で関係修復プロセスを開始するための覚書に署名しました。これを対外的にアピールする両社のプレスリリースには過去の負の遺産への言及は皆無、プロセス開始を以ってこれまでの悪行の数々を一挙に清算しようかという意図が垣間見えます。

【参考】   

(APP Japan) APPグループ FSCとの関係修復のための枠組み実施に向け合意書にサイン 

(APRIL) APRILグループのステークホルダーフォーラムでFSC救済プロセスに関する建設的な対話が実現(英語)

(WRM) インドネシアにおけるパルプ・製紙会社、APP社とAPRIL社の拡大: 森林破壊と暴力が広がる懸念(英語)

使っていませんか? 熱帯インドネシアからやって来た紙製品

最近ではオフィス用品に限らず、ティッシュやトイレットペーパーといったコモディティ商品も通販サイトを使って購入する人が増えています。商品検索のヒット上位には格安のインドネシア産製品が並びます。また、ドラッグストアやホームセンターに足を運べば「Made in Indonesia」と表示された商品を目にすることでしょう。植林をつくることで熱帯林の破壊や住民との土地紛争など深刻な問題が起きています。日本から遠く離れた生産現場で起きている問題ですが、遠大なサプライチェーンによって通販サイトやホームセンターの店頭まで連鎖しているのです。わたしたち消費者は購入・消費することで間接的に関与してしまう恐れがあります。たしかに単純な問題ではありませんが、少しでも理解を深め、それを消費行動に移していただきたいと思います。

【参考】 

(JATAN) 使っていませんか? 熱帯産コピー用紙   

(JATAN) 紙製品の選び方  

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