【プレスリリース】人権侵害と汚職疑惑を受け、市民社会が日本政府に対しサラワク州における ITTO プロジェクトへの資金提供停止を要請

2025 年 11 月 10 日

クアラルンプール/東京、2025 年 11 月 10 日 — 市民社会組織連合は、サラワク州森林局(FDS)が実施するプロジェクトに関連する深刻な人権侵害、汚職、環境破壊の疑惑を受け、日本政府に対し、マレーシア・サラワク州における国際熱帯木材機関(ITTO)プロジェクトへの資金提供を直ちに停止するよう要請した。

茂木敏充外務大臣宛ての正式書簡で提出されたこの要請書は、サラワク州北部アッパー・バラム地域における日本政府資金による ITTO プロジェクトにおいて、自由で事前の情報に基づく同意(FPIC)、市民社会の参加、透明性を含む国連原則の複数の違反があったことを指摘している。

ブルーノ・マンサー基金のルーカス・シュトラウマン代表は「残念ながら、サラワク州森林局は ITTO の支援下で実施されるプロジェクトにおいても、国際的な要請や基準を満たす意思がないと結論づけざるを得ません。よって日本政府に対し、サラワクにおける ITTO 活動への資金提供を即時凍結するよう要請します」と述べた。

主な申し立てと事例

書簡では、2023 年以降に発生した日本政府資金による ITTO プロジェクトに関連する一連の重大な事例を記載している。具体的には以下の通り:

市民社会への標的化と表現の自由の抑圧

2025 年 9 月、ミリ市で開催された ITTO 主催の地域対話において、サラワク州森林局は地元指導者に対し、NGO の先住民族コミュニティへのアクセスを制限する決議採択において圧力をかけたとされる。その後、サラワク州政府職員が WhatsApp 通話アプリで指示を流布し、コミュニティ指導者に禁止措置の公的承認を促した。これらの行為は結社の自由及び表現の自由という基本的権利を侵害している。

プロジェクト関係者への重要情報の隠蔽

森林局は、ITTO「アッパー・バラム森林地域(Upper Baram Forest Area) 」プロジェクトにおいて、木材伐採許可の期限切れに関する重要な情報を隠蔽したと報告されている。これにより、地域コミュニティ、ドナー、プロジェクト運営委員会のメンバー(日本政府代表を含む)が、十分な情報に基づく同意と監視を行うことが妨げられた。

主要な木材伐採権の秘密裏な付与

2024 年 3 月、サラワク州森林局長は、入札や公的開示なしに、政治的コネを持つ企業と関連するボルネオランド・ティンバー・リソーシズ社(Borneoland Timber Resources Sdn Bhd)に対し、新たに 17 万ヘクタールの木材伐採権(T/9246)を秘密裏に付与した。この許可は ITTO プロジェクト区域の大部分をカバーしており、サラワク州首相アバン・ジョハリが天然資源・都市開発大臣として個人的に承認したものである。

原生林の伐採と破壊

衛星画像と目撃証言によれば、ITTO プロジェクト区域内(スリン・セラアン保護林を含む)で大規模な伐採が行われている。こうした活動はサラワクに残された最後の大規模原生林を脅かし、ITTO の保全目標に真っ向から反する。影響を受けたプナン人コミュニティからの苦情や請願は、州森林局(FDS)と ITTOによって無視されてきた。

人権調査への妨害

マレーシア人権委員会(SUHAKAM)は最近、ボルネオランド・ティンバー・リソーシズ社による脅迫、強制移住、土地権利侵害の報告について調査を開始した。FDS は 2025 年 9 月、SUHAKAM が影響を受けたコミュニティを訪問する際に、訪問延期を求める書簡を送付することで SUHAKAM の活動を妨害した。

即時行動の要請

これらの問題の深刻さを鑑み、市民団体は日本政府に対し、サラワクにおける ITTO 活動への資金提供を直ちに凍結するよう強く要請している。日本は ITTO の主要な資金提供国であり、2019 年以降サラワクにおける ITTO 活動を支援する主要な国際ドナーとなっている。

以上

連絡先:

・ルーカス・シュトラウマン、ブルーノ・マンサー基金 事務局長
Lukas Straumann, Executive Director, Bruno Manser Fonds
電話:+41 78 744 51 24
・原田 公、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)代表理事
Akira Harada, Representative Director, Japan Tropical Forest Action Network (JATAN)
Email:harada[@]jatan.org

添付ファイル:

添付ファイル 1:茂木敏充外務大臣宛て書簡
添付ファイル 2:マレーシア・サラワク州アッパー・バラムにおける旧 UBFA 区域内の林道

ITTOのUBFAプロジェクト地に敷設された伐採道路

日本語字幕「バラムの森を救え!」(BMF制作ビデオ6分半) ※画像をクリックするとYouTubeサイトに移ります

【参考:人権侵害に晒されるサラワクの先住民】

[2025.09.13] 人権侵害にまみれたマレーシア産木材の輸入禁止を日本政府に対し要請:ロング・テペンのプナン人コミュニティが日本政府に対し、シンヤン社製品の日本への輸入を即刻禁止を要請

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[2025.09.16] いまなお続く強制退去の脅威-ブルドーザーに対峙するイバン人の伝統的コミュニティ: 州森林局によるコミュニティの強制収用をヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が告発