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遺漏の認証制度-サムリン社の汚れた木材を隠蔽し、国際市場を欺く森林認証の実態

                                            

以下は、ボルネオ・プロジェクトとブルーノ・マンサー財団による共同調査によるレポートを熱帯林行動ネットワークが日本語抄訳したものである。
The Borneo Project & Bruno Manser Fonds, Lost in Certification:How Forest Certification greenwashes Samling’s dirty timber and fools the international market, November 2023

免責事項:本レポートは、発行日時点で入手可能な情報に基づいて誠実に作成されたものである。著者らは、すべての情報が完全であることを保証するものではない。読者は、本書の内容の妥当性と正確性を評価する責任を負う。著者らは、本書の情報を使用または信頼したことにより発生した損失、損害、費用、経費について、一切責任を負わない。
発行日:2023年11月15日
特に断りのない限り、すべての写真はボルネオ・プロジェクト、ブルーノ・マンサー財団、またはCanvaStockに帰属する。特に断りのない限り、衛星画像の出典先はブルーノ・マンサー財団のアーカイブ、EOX- 4326によるSentinel-2 2020、およびGoogle Earth(Maxar Technologies Landsat / Copernicus CNES / Airbus 2023年にアクセス)である。

 

日本語抄訳版 目次 

サマリー「遺漏の認証制度」 最新の報告書が暴くマレーシア木材業界のグリーンウォッシング

本レポートについて

主な調査結果

はじめに

パート3: 欠陥だらけの苦情処理メカニズム

パート4:サムリン社と紛争木材製品の国際的な供給

結論と提言

重要な提言

【参考】※Part 1およびPart 2 は下記オリジナル(英語版)を参照されたい。

PART 1: Background & Context

PART 2: Evidence of Ethical, Environmental and Compliance Issues

 

サマリー:「遺漏の認証制度」 最新の報告書が暴くマレーシア木材業界のグリーンウォッシング

木材大手のサムリン社が管理し、PEFC森林認証プログラムの承認プログラムであるマレーシア木材認証制度(MTCS: Malaysian Timber Certification Scheme)によって認証された伐採事業には、重大な欠陥があることが分析によって明らかになった。

(米国・バークレー/スイス・バーゼル)米国を拠点とするNGOボルネオ・プロジェクトとスイスを拠点とするブルーノ・マンサー財団が本日発表した100ページに及ぶ画期的な報告書は、マレーシア政府お墨付きのMTCSに重大な欠陥があることを明らかにした。

「遺漏の認証制度-サムリン社の汚れた木材を隠蔽し、国際市場を欺く森林認証の実態 (Lost in Certification: How forest certification greenwashes Samling’s dirty timber and fools the international market)と題されたこの報告書は、マレーシアのボルネオ島で伐採産業の影響を受けている先住民コミュニティが長年にわたって積み重ねてきた証拠をまとめたものである。

木材大手のサムリン社が先住民コミュニティと大きな対立を起こし、環境破壊行為を繰り返しているにもかかわらず、マレーシアのサラワク州における同社の伐採事業は、MTCSによって「持続可能」であると認証され続けている。これによりサムリン社の木材製品は、PEFC森林認証プログラムのグリーン材ラベルのもと、国際市場で販売されている。

報告書では、サムリンの継続的な認証基準違反が、ほとんど結果を伴わないまま、適切な改善を継続的にもたらさなかったことを詳細に記述している。

サムリンに対する苦情がMTCSの苦情処理手続きに従って先住民コミュニティから申し立てられた場合、苦情は日常的に無視され、その結果、意味のある影響はもたらされなかった。特に興味深いのは、サラワクのアッパー・バラム地域にあるジェレナイ森林管理ユニット(FMU)である。サムリンは伐採事業に対するコミュニティからの苦情を受け入れるどころか無視し、後にコミュニティとそれを支援する草の根NGOに対して法的脅迫を行うに至った。

ジェレナイ森林管理ユニットの約5万ヘクタールという広大な森林は現在、アブラヤシのプランテーションに転換されようとしているが、これはMTCSの基準にあからさまに違反している。この調査結果は、森林保護と気候変動対策というサラワク州の公約に照らして、認証機関の役割に疑問を投げかけている。

報告書はまた、サムリンの国際的なバイヤーの名前を初めて挙げ、世界中に輸出されたサムリン社製品の軌跡をたどることで、その複雑な会社組織を覆っていたベールを暴いている。複雑な会社組織のもとで、サムリンの製品が、メゾナイト、無印良品、ローランド、大建工業などのブランドを通じて、EU、米国、オーストラリア市場に参入している可能性があることが明らかになった。

報告書は、マレーシア木材認証評議会 (MTCC: Malaysian Timber Certification Council)とPEFCが基準を保証し、コンプライアンスを実施することの有効性に疑問を投げかけている。認証・審査機関であるマレーシア標準工業研究所(SIRIM: Standards and Industrial Research Institute of Malaysia)は、認証の一時停止や取り消しにつながるコンプライアンス違反の件数について明確な制限を設けていない。MTCCには、基準を確実に実施するためのメカニズムがない。その結果、認証制度に対する信頼は著しく損なわれ、MTCSやPEFCのラベルを付けた木材製品の正当性は、ひいき目に見ても疑問の余地が残る。

「サラワク政府が森林保護に真摯に取り組んでいることは理解している。しかし、MTCSが現在機能している方法では、この制度が主張する基準を保証することはできない。この制度を改革する必要がある」とボルネオ・プロジェクトのジェティ・ワード事務局長は語った。

ブルーノ・マンサー財団の事務局長ルーカス・ストラウマンは、「サムリン社のジェレナイ森林管理ユニットに対するMTCS認証が、即刻停止されることを期待する」と述べた。

報告書は、苦情処理手続きの改革と被害住民からのFPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の適切な確保をふくむ、制度改善のための15の重要な提言をおこなっている。特に、ジェレナイFMUに対するサムリンのMTCS認証の即時停止と、紛争地域におけるサムリンの伐採作業の一時停止および独立したレビューを求めている。

Source: LOST IN CERTIFICATION: NEW REPORT EXPOSES GREENWASHING IN MALAYSIAN TIMBER INDUSTRY

図1: サムリン社のコンセッション(事業権地)

本レポートについて
本レポートは、2018年から2023年までのサラワク州におけるマレーシアの木材会社サムリン・グローバル社(Samling Global Limited)およびその子会社(サムリン社)の伐採事業に焦点を当てている。本報告書には、サムリン社に関わる以下の証拠書類と調査が含まれている。
● 倫理、環境、コンプライアンスの問題
● 先住民コミュニティとの対立
● 疑わしい環境慣行
● 企業構造と世界貿易のフロー
本報告書はまた、マレーシア木材認証制度(MTCS)の苦情処理手続きの問題点を検証し、影響を受けた地域コミュニティが利用できる苦情処理メカニズムが、よく言えば欠陥があり、悪く言えば設計破綻していることを明らかにしている。
サラワクの先住民コミュニティは、公式の苦情処理メカニズムを行使してきたが、ほとんど効果はなかった。彼らは2020年以来、#StopTheChopcampaignを軸に団結し、サムリンの伐採事業に対して公然と声を上げてきた。
そうすることで、本報告書は、マレーシアとサラワク州の当局、輸入国、バイヤー、認証機関、監査人、そして社会一般に、サムリン社の疑わしい慣行を警告することを意図している。また、マレーシアの森林認証に携わる団体が、先住民保護の公約を掲げる基準を保証できず、先住民の権利を守るための行動を取ろうとしないことにも警鐘を鳴らすものである。

主な調査結果

  1. サムリン社は、伐採事業において自由意思に基づき、事前に十分な情報を与えられた上での同意(FPIC)を適切に得られなかったことに関して、サラワクの先住民コミュニティと複数の紛争を継続中であり、現在もその当事者である。
  2. サムリンは繰り返し、サラワクにおける著しい環境劣化に関与している。
  3. マレーシア木材認証評議会と森林認証プログラムは、自らの基準を保証し、遵守を強制することに何度も失敗してきた。
  4. 度重なる不服申し立ての結果、国内外の木材認証機関に対する信頼は著しく損なわれている。

はじめに
ボルネオ島の生物多様性ホットスポットであるマレーシアのサラワク州は、その異常に高い森林伐採率で悪名高く、熱帯木材輸出の世界的リーダーとなっている[1]。 2009年の分析によると、同州で伐採を免れている森林はわずか11%であった[2]
サムリン・グループは、マレーシアのコングロマリットで、多くの国で木材採取、アブラヤシ・プランテーション、不動産開発、自動車事業に関わっている[3]。グループの創設者であるヨー・テック・セン(Yaw Teck Seng)は、1963年にサラワクで伐採事業を開始した。バミューダで設立され、現在は香港で登記されている持株会社サムリン・グローバル社の傘下にある3つの子会社を通じて、同社は林産物、プランテーション、伐採に関連する65以上の企業を支配している。ヨー一族は広範な政治的つながりを持っており、彼らの会社はマレーシア国内外での環境および人権侵害の疑いで繰り返し非難を浴びてきた。
サムリンは「ビッグシックス」と呼ばれる伐採会社のひとつで、数十年にわたってサラワクの木材ブームを支配してきた。バラム川とリンバン川の流域での木材採取から始まったサムリン社は、現在ではサラワク最大の木材伐採権および植林地の保有者であり、110万ヘクタールを超える森林と20万ヘクタール近くの植林地を管理している[4]。この複合企業は、パプアニューギニア、インドネシア、ガイアナなど森林破壊の世界的なホットスポットで活動している[5]
サムリンは、サラワク州ミリにあるサムリンの事業本部が密接に調整・管理する多数の異なる法人を通じて、サラワク州の上流事業を運営している。本レポートでは、個々の法人名ではなく、「サムリン」と総称する。本レポートで調査するサムリンの子会社には、サムリン・プライウッド(ミリ)(Samling Plywood (Miri) Sdn Bhd)、サムリン・プライウッド(バラマス)(Samling Plywood Baramas Sdn Bhd)、ツリーワン・メガペレット(TreeOne Megapellet Sdn Bhd)およびレイヴンズコート(Ravenscourt Sdn Bhd)が含まれるが、これらに限定されるものではない。

・サムリンとその関連企業による違法伐採、伝統的コミュニティや先住民族コミュニティとの紛争、森林伐採に関する報告は、長年にわたって流布している。

「サラワクは、世界の他のいかなる場所にも見られない熱帯林伐採の最悪の例である」
※2023年8月バーゼル熱帯林法廷(Basel Rainforest Tribunal)での世界的探検家サー・ロビン・ハンベリ=テニソンの発言[6]

・2011年のグローバル・ウィットネスの報告書には、1998年までさかのぼるサムリンによる違法伐採の疑惑が含まれている[7]
・ノルウェー政府年金基金は2010年、サラワクとガイアナでの森林事業における「違法伐採と深刻な環境破壊」の重大な証拠が調査で見つかったため、サムリン・グローバルから手を引いた[8]。2011年、サムリンの創業者ヨー・テック・センが支配株主(60%)を務めるコンコード・パシフィック(Concord Pacific)社[9]は、パプアニューギニアでの違法伐採で1億ドルの罰金を科せられた[10]
・2023年5月、森林管理協議会(FSC)は、違法伐採、人権侵害、保護価値の高い(HCV)森林の破壊、土地転換基準違反の疑いでサムリン社に提出された申し立てを受理した[11]

サラワク政府は、枯渇した熱帯林における持続可能な伐採方法の確立に向けて取り組んでおり、すべての伐採権に森林認証を義務づけている。このイニシアチブにより、サムリンは木材採取事業の森林認証取得を余儀なくされている。しかし、本レポートで提供される証拠は、サムリンが持続可能性を高め、倫理的懸念に対処するどころか、その慣行を根本的に変えていないことを示している。
森林伐採を推進し、地域コミュニティの資源を搾取しているにもかかわらず、サムリンは、森林認証のお墨付きで、いわゆる「持続可能な」木材を世界中に輸出することができる。マレーシア木材認証制度(MTCS)はこのプロセスを促進し、本質的にサプライチェーンをグリーンウォッシュしている。

パート3: 欠陥だらけの苦情処理メカニズム
欠陥のあるシステム
以下のセクションでは、サムリンとMTCSの苦情および紛争解決手続きの欠陥と、コミュニティと市民社会の苦情が組織的にどのように未解決のまま放置されているかを評価する。

図2: サムリンFMUとコミュニティー・テリトリー

歴史的に、サムリンは伐採に関するコミュニティの苦情を無視してきた。適切な苦情処理手続きがないため、コミュニティは繰り返し、唯一の手段である伐採道路の封鎖を通じて苦情を訴えることを余儀なくされてきた。バラム川流域では、サムリンに対する大規模な封鎖は1990年代初頭までさかのぼる[12]。本報告書のパート2で扱った報告事例は、サムリンがコミュニティの苦情にほとんど応じず、苦情と紛争解決の手続きが不透明なままで放置されていることを示している。

持続可能な森林経営とFMU認証に伴う新たな義務化の一環で、サムリンは苦情手続きの策定を余儀なくされ、それは2022年にウェブサイトで公開された。適切な苦情手続きがなくても、SIRIM はサムリンの FMU に MTCS 認証を与えた。

苦情手続きに関する情報は、NGOが情報不足を批判してはじめて、MTCCとサムリンのウェブサイトで公開された。にもかかわらず、苦情処理手続きは依然として探すのに苦労する。

こうした困難は、コミュニティが自分たちの土地の状況について正確な情報を得たり、懸念や反対を表明したりすることを妨げ、本質的にコミュニティがテリトリーで起きている伐採活動に影響を及ぼすことを妨げ、いざ紛争が起きたときにはすべての管理機関が責任を回避することを許している。

苦情処理プロセスの本質的な複雑さは、国際標準化機構(ISO)のアクセシビリティの原則に違反している*:

*「苦情処理プロセスは、すべての潜在的な苦情申立者が、苦情の申し立て方法と解決方法に関する情報に容易にアクセスできるものでなければならない。言語は理解しやすいものであるべきで、組織は苦情を申し立てる際の支援を提供すべきである。アクセシビリティを支援するため、必要に応じて他の言語やフォーマットも利用できるようにすべきである。いかなる苦情申立人も不利益を被るべきではない」[13]

サムリンの苦情手続き
コミュニティは、サムリンの管理者にレターを送るだけでなく、サムリンの伐採キャンプで働く労働者に直接苦情を伝えようとした。これらのコミュニケーションは、コミュニティにとって満足のいく結果をもたらさないことが常であった。2018年にロング・モー(Long Moh)のテリトリー内の特定地域を伐採から保護する合意がなされたにもかかわらず、サムリンは後にこれらの地域で伐採を行い、合意の存在を否定し、法的措置でコミュニティを脅した。

ロング・アジェン(Long Ajeng)のプナン人もまた、2021年にサムリンがUBFA(Upper Baram Forest Area)プロジェクト内の彼らのテリトリーから丸太を伐出しているのを発見した後、サムリンの現場スタッフとの対話を求めた。それにもかかわらず、2022年にサムリンはその地域を伐採し、UBFAの提案された中核保護地域に侵入した。

ジャモック(Jamok)のコミュニティが2020年にサムリンのチーフ林務官に手紙を送り、彼らのテリトリーでの伐採について懸念を表明し、彼らがFMUについて相談を受けていないことを指摘したところ、林務官は彼らの懸念については管轄外であり、コミュニティはサラワク州森林局(FDS: Forest Department Sarawak)に訴えるべきだと回答した。

2020年6月、プナンの草の根組織であるKERUANは、スリン・セラアン(Suling Selaan) FMU内のコミュニティ(ロング・アジェンを含む)が伐採に反対していることを伝えるレターをサムリンに送った[14]。KERUANが返事を受け取らないまま、2021年にサムリンはこの地域を伐採した。2020年、サムリンはGCRAC(Gerenai Community Rights Action Committee)の要請に応じてMTCSに関するセミナーを開催したが、情報を提供したのはMTCCとSIRIMのみで、サムリンの従業員はコミュニティからの質問に答えることができなかった。

サムリン社との対話や公式のレターは、苦情を訴えるための効果的な手段にはならない。また苦情を申し立てるための他の手段を知らないコミュニティは、2021年のロング・アジェンやロング・パカン (Long Pakan)のように、何度も封鎖行動を余儀なくされている。

ブロケードをつくり、会社の伐採を物理的に阻止するという行為は、サムリン社の伐採活動に影響を与える唯一の方法である。ブロケード封鎖は、他の手段が効果的でないことが判明した場合の、コミュニティにとっての最後の手段である。

彼らはまた、地元のNGOに支援を求めた。後にコミュニティがサムリンの不作為を公に批判したとき、彼らは法的措置で脅かされた。SAVE Riversの場合、サムリンは脅迫から名誉毀損による実際の訴訟に発展させた。

持続可能な森林管理に関する政府の新政策[15]とMTCSスキーム[16]の下では、伐採会社は紛争を解決するための適切なメカニズムを持つことが義務付けられている。さらに、これらのメカニズムは一般に公開され、紛争における交渉や調停の記録を保持する必要がある。サムリンは、最初のFMUの認証から数年後の2022年に、公に利用可能な苦情手続きの要件を満たしたのみである。2022年、サムリンはまず、苦情がどのように処理されるかを説明するフローチャートをウェブサイトで公開した[17]。サムリンはその後、このフローチャートを更新し[18] 、また、苦情および要望のための新しいフォームを、企業の社会的責任(CSR)ページで公開した[19]

サラワク州森林局は各FMUに対し、紛争に対処するための森林管理認証連絡委員会(FMCLC)の協議枠組みを確立するよう求めている。

FMCLCは政府機関、ライセンス保有者、地域コミュニティなど様々な利害関係者で構成される。コミュニティは、各コミュニティの少なくとも1名の代表者で構成されるコミュニティ代表委員会(CRC)の下に組織されることになっている。

SIRIMの監査報告書は、サムリン社がジェレナイFMUの認証取得時に正式にCRCを設立したかどうかについては矛盾しているが、村の人々の大半がCRCの存在や目的を知らなかったことは明らかである。

例えば、CRCのメンバーの一人は、CRCが設立されたはずの数年後に、初めて自分がCRCのメンバーであることを知った。サムリンと州森林局の代表者と合同で開かれた会議で、この人物は自分のコミュニティのCRC代表は誰なのかと尋ねた―「突然、私の名前が他の3人とともにCRCとして挙げられた。私や他のメンバーはいつ任命されたのですか?誰が私たちを選んだのですか?CRCのメンバーは承認された手続きに従って選出されたのか?彼らは答えることができなかった」[20]

MTCSの苦情手続き

MTCSの苦情処理手続きは、断固とした反対にもかかわらず、伐採が野放しにされている紛らわしく複雑なシステムである。

この不透明な苦情手続きは、信頼できるインターネット・アクセスや語学力、経験を持つ人々にとってさえ、困難でわかりにくいものである。ましてや、このような資源にアクセスできず、自分たちの土地に対する基本的権利を行使しようとしている遠隔地のコミュニティにとっては、はるかに苛立たしいシステムである。

MTCC苦情処理メカニズムは、コミュニティがサムリンの活動に対して苦情を訴えはじめてから何年も経った2020年後半まで、オンラインで利用できなかったか、うまく機能していなかった。PEFCは2020年11月、MTCCの紛争解決プロセスのページをSAVE Riversと共有した。インターネットアーカイブによると、このページはこの時期に公開された。当初、苦情のセクションは、MTCCのウェブサイトに掲載されていたメッセージの送信欄だけであり、他の情報はなかった[21]

2020年5月、MTCCはウェブサイトに「お問い合わせとフィードバック」というセクションを追加した[22]。コミュニティは認証プロセスに対する懸念を表明し、その懸念を伝える術を持つまでは、苦情のメカニズムが存在していたとしても、一般には容易に利用できなかった。さらに、テクノロジーに精通し、苦情を提出するための複雑な要件を読み解くことができる人だけが、オンラインでアクセスすることができたが、インターネットが不安定な、あるいは利用できない遠隔の農村地域はアクセスできなかった。

PEFCは、十分とは言えない苦情処理メカニズムにもかかわらずMTCSを支持し続け、この欠陥を調査しなかった。PEFC は 2020 年と 2021 年に新しい MTCS 基準の検証を依頼した。この検証では、基準自体は分析されたが、苦情処理手続きは考慮されなかった[23]。PEFCはこの非常に重要な要素の評価をしないままMTCSを支持しつづけた。

さらに、SIRIMは、何が認証書の撤回や一時停止にあたるかについて、明確な制限を設けていない。これは実際には、地域社会がコンプライアンスや同意に関して無数の苦情を申し立て、サムリン社が不適合に十分に対処していなくても、認証書が発行される可能性があることを意味する。

ケーススタディ 責任転嫁
以下は、サムリン・グローバル社の完全子会社であるサムリング・プライウッド(ミリ)社によって管理・運営されているジェレナイFMUのケースに焦点を当て、苦情処理プロセスを理解し、ナビゲートしようとすることに伴う困難について説明している。2018年から2023年にかけて、コミュニティとNGOの代表者たちは、自分たちが使うように言われた多くの苦情処理手段を使い果たし、何年も経つまでMTCCの公式な苦情処理メカニズムについて知らされなかった。MTCC、PEFC、SIRIM、サムリンのさまざまなマネージャーや管理者は、他の組織に責任を負わせることで、繰り返し説明責任を回避した。

これは、MTCCとPEFCが、持続可能であるとの刻印を押された伐採権に関する苦情に対処してこなかったことを示している。

これらの組織への公式な苦情や連絡は、コミュニティの懸念に適切に対処することができなかった。これらのプロセスにおける救済措置へのアクセスの欠如は、PEFCとMTCCの苦情処理手続きが、認証企業によって引き起こされた真の苦情や悪影響に対処するには不十分であることを示唆している。これはPEFCとMTCCにとって大きな信用リスクであり、彼らの基準の意図と実際の適用との間に溝があることを露呈している。

経緯
2018年7月
ジェレナイFMU認証プロセスに対するコミュニティの懸念は、ケニャ・ジャモック(Kenyah Jamok)のコミュニティが、サムリンが彼らの共有林であるバイ・ケレムン・ジャモック(Ba’i Keremun Jamok)に侵入していることに気づいたことから始まった。ジャモックはすぐにサムリンとサラワク州森林局に連絡し、自分たちの領土での伐採に同意しないこと、そして自分たちの共有林を木材コンセッションから除外してほしいことを通知するプロセスを開始した。この時点では、コミュニティは自分たちの地域にFMUがあることも、サムリンがジェレナイFMUのMTCS認証を申請していることも知らなかった。

2019年9月

MTCCとSIRIMの代表者は、MTCSの下でのジェレナイFMUの認証について、ミリで地域住民との会合を開いた。参加者は、この会議が、サムリン社がジェレナイFMUのコミュニティに対して十分な協議を行っていないとSIRIMが判断した後に開催されたことを理解した[24]。コミュニティは、FMUへの反対または支持に関してサムリン社の管理部門に報告するよう指示された。

MTCCとSIRIMが会議を去った後、関係コミュニティの代表者たちは、ジェレナイ・コミュニティ権利行動委員会(GCRAC: Gerenai Community Rights Action Committee)を組織した。GCRACはその後、SAVE Riversにこの会議と進行中のMTCS認証について報告した。GCRACと認証プロセスを懸念するコミュニティは、SAVE Riversに支援を求めた。GCRACはまた、MTCSをコミュニティに説明するため、より大規模なコンサルテーション・ワークショップの開催についてサムリンの森林担当者と話したが、これは2020年9月まで実現しなかった。

2020年2月

SIRIMの代表者は、コミュニティを支援するNGOの代表者と面会し、認証に同意できないコミュニティや協議プロセスを問題視するコミュニティは、その懸念をサムリンに直接報告すべきであり、サムリンには3ヶ月の猶予期間があり、その後SIRIMが介入して対応することを確認した。これは正しいアドバイスであり、典型的な苦情処理メカニズムのエスカレーション・プロセスの始まりである。

この助言を受けて、ジャモックのケニャ人、バ・ジャウィ(Ba Jawi)とロング・ラマイ(Long Lamai)のプナン人から、3通の異なるレターがサムリンに送られた。レターには、適切な協議が行われていないことへの懸念、伐採への反対、すでに進行中のコミュニティ森林保護プロジェクトについての説明が書かれていた。GCRAC はこれに続き、サムリン、SIRIM、天然資源環境委員会(NREB: Natural Resources And Environment Board )にも同様の書簡を送った。

コミュニティとNGOによる行動

  • 複数年にわたり、少なくとも6つの異なる団体に多数の書簡を送り、6件の苦情を申し立てた。
  • 手続きや協議プロセスについて繰り返し説明を求めた。
  • コミュニティは、道路封鎖や警察への通報を含め、伐採反対を繰り返し表明した。

2020年3月

サムリンのチーフ林務官であるデビッド・マースデンは、ジャモックのケニャ人による書簡に対し、簡単な電子メールで回答した―「森林区域の割り当て、土地利用の提案などに関する問題は、サムリン社が管轄権を持たない政府の問題である。そのような問題は、森林局長に直接申し出てほしい」。

このメールで、マースデンは事実上、コミュニティからの苦情に対する責任逃れをしたー。支援するNGOは、彼の回答をSIRIMに転送し、今後の対応を尋ねた。サムリンは、バ・ジャウィとロング・ラマイからの他のレターには返信しなかった。MTCCの苦情処理手順によれば、サムリンは各レターに回答し、苦情として正式に受理し、苦情処理を開始すべきだった。

2020年4月

ジェレナイFMUのMTCS森林管理証明書がSIRIMから発行された。

2020年6月

GCRACはSIRIMに書簡を送り、ジェレナイFMUのMTCS証明書に対する懸念を表明した。書簡では、FPICの欠如とサムリンが以前の書簡に回答しなかったことを指摘している。また、事前に合意した協議がミリで実施される前になぜ、証明書が発行されたのかについても質問している。

マレーシアは当時、移動制限令の下にあり、遠隔地の先住民コミュニティは事実上ロックダウンされ、意思決定者との面会を求めることができなかった。このために、書簡の返事がないことの苛立ちは一層募った。移動制限令にもかかわらず、伐採は必須産業(essential industry)として新型コロナウイルス感染症パンデミック下のなかでも続けられた。

SAVE Riversと支援NGOは、「ストップ・ザ・チョップ(Stop the Chop)」と呼ばれる認証プロセスへの不満に関するメディアキャンペーンを開始した。ジェレナイFMUと協議の欠如に関する一連のプレスリリースと意見記事は、地元メディアや国際メディアに報道された。

2020年を通じて、ロング・セラワン(Long Selawan)、ロング・ジュラン(Long Julan)、ロング・モー(Long Moh)、ロング・パライ(Long Palai)、タンジュン・テパリット(Tanjung Tepalit)の各コミュニティもキャンペーンに参加した。SAVERiversのウェブサイトでは、「ストップ・ザ・チョップ」請願が開始された。MTCCとサムリンの両組織は、コミュニティの主張を中傷する内容の反応をウェブサイトで発表したが、どちらも代替の苦情処理プロセスを提供せず、苦情処理手続きについても言及しなかった[25]

サムリンのとった行動

  • コミュニティの申し立てを繰り返し否定
  • コミュニティからの苦情をサラワク州森林局に回送
  • コミュニティを法的措置をもって脅迫
  • 地元NGOを提訴
  • 地元NGOに対して警察に被害届を提出
  • ウェブサイトに苦情の仕組みを掲載

2020年9月25日

GCRACが要請したワークショップはついにミリで開催され、サラワク州森林局、MTCC、SIRIM、WWFがプレゼンテーションを行った。サムリンはワークショップでいかなる情報も提供しなかった。さらに、FMUの代表者は質疑応答には出席しなかった。コミュニティのメンバーは、ワークショップで得た情報や回答に非常に失望したと感じており、多くの問題や疑問が未解決のままであると報告した[26]

2020年10月

支援NGOがサムリンとMTCCについてPEFCとの会合を要請した。「マレーシア・サラワク州におけるマレーシア木材認証制度(MTCS)の実施に関する現地からの苦情」と題する共同報告書が PEFC に送られた。報告書では、透明性の欠落、FPIC 原則の不履行、森林資源へのコミュニティの依存度の否認、森林保全のためのコミュニティのイニシアチブの軽視、苦情処理メカニズムの欠陥などが指摘されている。また、これらの問題を改善するための提案も行っている。SIRIMはこの報告書とSAVE Riversの批判を新しい監査に盛り込んだ。

10月下旬、支援NGOとコミュニティ代表はPEFCとビデオ会議を行い、初めてMTCCの公式苦情処理メカニズムを通じてコミュニティの懸念を提出するよう指示された。このオンライン会議にはMTCCも同席し、このメカニズムについて代表者たちに電子メールでフォローアップするよう命じられた。MTCCから二週間音無の状態が続いたのち、PEFCからMTCCの公式苦情処理メカニズムへのアクセス方法に関する情報が提供された。

2021年3月~4月

サムリンとその子会社であるツリーワン・メガペレットは、苦情の書簡を送った複数のコミュニティにレターを送り、コミュニティの申し立てを否定したうえで、法的措置の可能性があると脅した。ロング・モーへのレターの中で、サムリンはベキア(Bekia)、アンパイ(Anpai)、セルエン(Seru’en)の諸地域の伐採を行わないことに同意したことを否定した。その直後の2021年4月9日、サムリンの弁護士はSAVE Riversに書簡を送り、公の謝罪と誹謗中傷とされる発言の撤回を要求し、それらの発言を二度と繰り返さないことを約束させた。

MTCCによる対応

  • ウェブサイトに苦情処理手順を公開
  • 2021年5月に正式な苦情を受理した時点で苦情解決プロセスを開始
  • サムリンがSAVE Riversを提訴した時点で苦情解決プロセスを実質的に一時停止
  • 訴訟が進行中の場合MTCCのプロセスを一時停止する条項が明示的に含まれるよう苦情処理手順を修正
  • FMUの管理および伐採慣行に関する問題を除外するよう苦情処理手順を修正
  • サムリンとSIRIMにほぼ丸投げ

2021年5月

GCRACとケルアン・オーガニゼーション(KERUAN Organisation)はコミュニティを代表してMTCCに正式な苦情を申し立てた。MTCCは苦情を受理し、紛争解決委員会(DRC)がこれを取り上げることになった。MTCCはサムリンに通知し、7月15日までに報告を提出するよう要請した。

2021年6月

MTCCは、ブルーノ・マンサー基金(BMF: Bruno Manser Fonds)、SAVE Rivers、ボルネオ・プロジェクト(Borneo Project)に書簡を送り、懸念事項を話し合い、問題の円満な解決策を見出すための円卓会議に、彼らと関連利害関係者を招待した。各団体は対話に熱心に取り組み、翌月の会合を提案した。残念なことに、サムリンがSAVE Riversに対して名誉毀損訴訟を起こしたため、この対話は頓挫した。サムリンは、SAVE Riversが原告でないにもかかわらず、訴訟のために対話の延期をMTCCに要請した。NGOは、訴訟の動機のひとつがMTCCによるプロセスが進むのを阻止するためであったのではないかと疑っている。

2021年7月28日

DRCの会合が開かれたが、サムリンからの提出物はなかった。訴訟で提起された問題について審議することはできなかったが、MTCCが苦情を受け、ウェブサイトの苦情処理メカニズムを改善したことを明らかにした[27]

2021年11月~12月

2021年11月と12月に実施されたSIRIMによるジェレナイFMUの2021年サーベイランス審査は、サムリンに送られた書簡に注目している。SIRIMはサムリンによる12の重大な不適合および12の軽微な不適合を発見した。その中には苦情処理メカニズムに関する以下のものが含まれる。

「紛争解決のためのメカニズム(資源と土地所有権)は公開されておらず、地域コミュニティとの協議は2020/2021年に実施されなかった」[28]

指標3.2.2に対する軽微な不適合

 「FPIC原則に準拠したコミュニティの参画を含む森林認証および管理プロセスに関するエンゲージメントと情報の開示の欠如」[118]。地域コミュニティの合法的・慣習的な保有権や利用権に影響する FMU の管理プロセスに関するエンゲージメントと情報の開示の欠如。森林管理認証連絡委員会(FMCLC)コミュニティ代表委員会(CRC)の目的と機能に関する情報開示の欠如。コミュニティにとって重要な場所の特定とモニタリングが不十分。提供された是正措置が十分に実施されていない」

指標2.2.2[29]に対する重大な不適合 

 「適切なメカニズムによる補償状況に関する更新された記録が入手できなかった」[30]

指標4.5.2に対する軽微な不適合

 「紛争に対応する期間を含め、紛争メカニズムのプロセスのエンゲージメントと開示がない。土地の権利主張に関する紛争メカニズムがコミュニティに提供されていない。土地所有権や使用権をめぐる紛争に関する最新の記録が入手できなかった」[31]

指標2.3.1に対する軽微な不適合

2022年10月

NGOの連合体は「FSCと組織の関係に関する指針」に対する苦情申し立てを行った。二つのCoC認証を保有しているサムリンはそのすべての操業においてFSCの指針を遵守しなければならいない。

SIRIMによる対応

  • コミュニティと NGO によるレターと苦情を監査対象に含めた。
  • レイヴンズコートFMU認証の取り消し
  • 長年にわたって多数の重大および軽微な不適合が発生し、 サムリンがこれらの不適合に対処しなかったにもかかわらず、ジェレナイFMU認証の再発行を継続している。

2023年5月

FSCは、FSCの方針違反に関する十分な証拠があると判断した後、「FSCと組織の関係に関する指針」違反の申し立てを正式に受理した。

2023年3月

クアラルンプールを拠点とする広報企業によって登録されているNGO、アドボカシ・プリブミ(Advokasi Pribumi)は、二つのプレスリリースでSAVE Riversを批判し、サムリンとの裁判を解決するよう促した[32]。アドボカシ・プリブミには明確な活動歴も報道部門もないため、「サラワク・レポート (the Sarawak Report)」は、このNGOがSAVE Riversの信用を失墜させるために設立されたのではないかと疑問を呈した[33]

2023年6月

SIRIMは、コミュニティ支援NGOの要請に応じて、2022年からのジェレナイ・サーベイランス審査の結果を公表した。審査報告書では、前述したように、数多のコミュニティの苦情と不適合への対処の怠りが確認された。

2023年7月~8月

SIRIMは、サムリンが以前の審査で指摘された不適合に関する効果的な是正措置を報告および実施しなかったと判断したため、リンバン川上流域のサムリン社レイヴンズスコートFMUのMTCS認証を取り消した。

警察は、サムリンのCEOによる通報のため、SAVE Riversの幹部を尋問した[34]

コミュニティ支援のNGOはSIRIMに書簡を送り、サムリンのMTCS遵守の評価におけるSIRIMの独立性と公平性にさらに疑問を呈した。その書簡では、SIRIMが、複数回の審査後もサムリンが何度も不適合を繰り返し、状況を改善しなかったことを踏まえ、なぜジェレナイFMUのMTCS認証を停止または取り消しを行わなかったのかを疑問視している。

これに対しPEFCは、認定機関であるマレーシア標準局(Standards Malaysia)に対し、この書簡を公式な苦情とみなし、調査を開始するよう要請した。マレーシア標準局は、この書簡を公式な苦情として受理し、SIRIM に対する調査を開始した。

しかし、マレーシア標準局の調査は、SIRIMの認証機関(Crediting Body)としてのパフォーマンスに関する基準への適合性を取り上げただけで、サムリンと地域社会間の問題の核心には触れていない。

2023年9月

サムリン社、SAVE Riversに対する名誉毀損の訴訟を取り下げる。

2023年10月

マレーシア標準局とSIRIMは、SIRIMによるジェレナイFMUの認証に関する調査を終了し、認証に関する認証機関の行動は手続きに準拠していると判断した。マレーシア標準局はまた、SIRIMが認証の一時停止につながる明確な手続きを持っていなかったことを明らかにした。

このことは、コミュニティや支援NGOが適切な苦情手続きを理解し利用することがいかに困難であったか、また、コミュニティが自らの慣習地での伐採に抵抗することがいかに難しいかを明確に示している。審査報告書でサムリン社がコミュニティからFPICを適切に取得していなかったことが繰り返し確認されても、コミュニティの懸念に対処することはほとんど行われていない。

マレーシア標準局のSIRIMに対する調査は、SIRIMのシステムの評価にすぎず、現場での不適合という本来の問題を調査したわけではない。しかし、SIRIMが認証書を取り消すべき明確な基準を持っていないことがわかった。

このことは、木材企業が実際には数え切れないほどの不適合を積み重ねても、また、基準への適合性がいかに低くても、認証を取得できる可能性があることを意味する。

SIRIM は、数年にわたる苦情と不適合の後、レイヴンズコートFMU の MTCS 認証を取り消す措置をとったが、ジェレナイFMU については、大小の不適合が繰り返されているにもかかわらず、なぜ同様の措置がとられていないのか不明である。

認証の制度設計には欠陥がある。関係者が他の組織に責任を負わせることで、木材産業が先住民の権利を無視し続けることを許しているのである。

先住民の権利に関する紛争に責任を負う主体が存在しない

  • サムリンはサラワク州森林局を責任主体として指摘し、疑惑が持ち上がった際にはウェブサイト上で弁明の声明を発表し、コミュニティの疑惑をすべて否定した。
  • サラワク州森林局は、今回のプロセスを通じて、ほとんどのコミュニケーションで情報共有されていたが、ほとんど介入しなかった。
  • MTCCは、サムリンがSAVE Riversを提訴し、コミュニティの懸念や苦情はSIRIMが処理しなければならないと強弁したとき、紛争解決プロセスを一時中断した。
  • PEFCはこの件をMTCCに差し戻した。
  • SIRIMは、繰り返し不適合への対処を怠った会社に認証を発行し続けた。

苦情処理手続きに内在する問題

図3: MTCS苦情処理

上記のケーススタディは、マレーシアにおける木材認証の苦情処理システムが破綻していることを示している。少なくとも 6つの異なる団体に苦情が提出され、5 年以上経過しているが、そのどれもが救済に至っておらず、またそのほとんどが公式の苦情処理手続きに定められているプロセスに従っていない。

PEFCのシステムでは、苦情のエスカレーション・プロセスを用いて、権威のより高いレベルにエスカレーションする前に、まず現場レベルで苦情の解決を図っている。現在、サムリン社とMTCCのウェブサイトで公表されている苦情処理手順によれば、コミュニティからの苦情はまずサムリンに届き、FMUの管理およびマルチステークホルダー委員会の中で処理されるべきであった。SIRIMはその後、審査の際にこれらの苦情を評価すべきだった。

サムリンはコミュニティからの苦情に対応できなかった。SIRIMは審査報告書に苦情を盛り込んだが、ジェレナイFMUの場合、十分な救済措置にはつながらなかった。さらに、これは根本的に問題のあるアプローチである。何が苦情にあたるかを特定し、そのプロセスを擁護する責任を、認証プロセスに関与するコミュニティに負わせていているのだ。コミュニティは、会社や他の誰からも、苦情制度にアクセスし、その権利を理解するための支援を受けることなく、これを行うことを期待されている。

また、このプロセスは、認証機関(この場合はSIRIM)が苦情を立証することにかかっている。多くの場合、認証機関はステークホルダーの懸念として苦情を提出し、正式な苦情手続きを発動させないようにする。

SIRIMは、コミュニティからの苦情の結果としてサムリンに不適合を出したが、コミュニティを苦情申立人として扱わず、彼らの責任を無視した。問題に対処するためのサムリンの是正措置は不十分であり、コミュニティには苦情をエスカレートさせる権利を含む正式な苦情処理手続きを受ける資格があることが明確にされなかった。

マレーシア標準局はSIRIMに対する苦情を扱うが、SIRIMを認定要件に照らして審査するだけで、コミュニティの懸念に直接対処することはない。さらに、このエスカレーションの段階は、5年経過するまで行われなかった。彼らの調査によると、SIRIMは認証の取り消しや一時停止に関する独自のプロトコルに従っていた。プロトコルに是正措置につながる不適合の数に関する制限がないことを考えると、これは非常に簡単なことである。

国際認定フォーラム(The International Accreditation Forum)はマレーシア標準局に対する苦情を調査するが、これまでのところ、彼らはこのプロセスには関与していない。

重要なことは、PEFC と MTCC がこのエスカレーション・プロセスに関与していないことである。MTCC 苦情処理手順の 2021 年 12 月版によると、MTCC は認証保有者、認証機関、規格に関する苦情を受け取り、解決することができる。しかし、2023年5月のバージョン(現在はオンライン化されていないが、苦情申立人と共有されている)では、この責任は放棄されている。MTCCが処理できるのは、ロゴの使用や認証機関とのコミュニケーションなど、非常に限定された範囲の苦情のみとなった。これは事実上、MTCCが認証保有者(すなわちサムリン社)に関する苦情に対処する手段を持たないことを意味し、SIRIMに頼らざるを得ない。また、現在では、法的な訴訟が進行中の場合、MTCCの手続きを一時停止する条項も明示されている。

このことは、苦情処理プロセスを拡大し、利害関係者の懸念に対応できるように改善するのではなく、MTCC(ひいては PEFC)が認証機関に責任を転嫁し、苦情申立人が MTCC に基準制度に関する重大な問題の仲裁を求めることをより難しく、より複雑にしていることを示唆しているように思われる。

SIRIMの審査プロセスにおいて、MTCS認証の取り消しや一時停止にどのような基準があるのかは不明である。マレーシア標準局の調査では、一時停止のための明確な基準がないことが確認された。これは、企業が不適合への対処を繰り返し怠ることができることを意味する。ジェレナイ FMU における複数年にわたる重大な不適合は、是正措置が FPIC 原則の不採用に対処していないことを示しているが、このことは認証状況に何ら影響を及ぼしていない。

さらに、MTCC は、認証プロセスやFMU の運営に重大な問題があると判断しても、認証状況に介入する権限を持たない。SIRIMが不適切な評価を行ったり、木材企業側で重大な不適合が繰り返されたにもかかわらず認証を停止しなかったりした場合でも、MTCCはその企業との関係を断つことができない。

料金体系もまた、SIRIMを通じた審査処理に問題をもたらしている。企業は審査を実施するためにSIRIMに直接支払う。これは、企業が審査プロセスに不当な影響を及ぼすリスクを高める。

図4: 適格性に関する苦情処理手続き

パート4:サムリン社と紛争木材製品の国際的な供給

サムリンの活動は、伐採によって地域社会や環境に悪影響を与えているが、その及ぶ範囲はサラワクにとどまらない。

丸太が伐採された後、それがどのような製品になり、どの国に送られるかを追跡するのは、複雑なプロセスである。以下のセクションでは、サムリン社の企業構造と貿易の流れについてこの調査で判明したことの一部を概説し、サムリン社から購入している企業を特定し、同社が参加しているその他の疑わしい企業活動に注意を喚起している。欧州への貿易フローは考慮していない。MTCS木材の大部分はEUに輸出されているが、規制がこれらの取引の透明性を要求していないため、EUのどこに行き、誰が買い手なのかを正確に追跡することは不可能である。

企業構造と取引の流れ

サムリン社は、広大で複雑な企業構造を持っている。サムリンの最後の年次報告書は、同社が非公開になる前の2011年に発行されたため、同社に関する公開情報は現在、ほとんどない。以下に詳述するつながりは、灰色文献(未公開あるいは入手困難な文献や資料)を通じて可能な限り立証されたものである。

サムリン・グローバル社は最終親会社である。サムリン・グローバルの支配下にある3つの子会社(サムリン・ラブアン社(Samling Labuan Ltd.)、リングイ・デベロップメント社(Lingui Developments)、シャリカット・サムリン・ティンバー社(Syarikat Samling Timber))を通じて、同社は林産物に関連する65社以上の企業、さらにパーム油プランテーションと生産に関わる数社を支配している。

図5: サムリンの組織構造

図5 サムリン組織構造(PDF)

サムリンの主要な保有資産

グランド・パーフェクト社(Grand Perfect Sdn Bhd)

ヨー・ホールディングス社(Yaw Holding Sdn. Bhd.)の直接子会社であるサムリン・ストラテジック・コープ(Samling Strategic Corp)が35パーセントの株を保有している[35]

同社の株主リストが物議を醸している。サラワクで操業するもう一つの大手林業会社KTSがグランド・パーフェクト社の35%を所有し、残りの30%はサラワクのもう一つの大手林業会社タ・アン(Ta Ann)の子会社Gasijaya Sdn.Bhd.が所有している。[36]

グランド・パーフェクト社は、LPF 0043とLPF 0012の管理会社であるGP PUSAKA Sdn Bhd.の70%の株式を保有するスプリング・ユニオン社(Spring Union Sdn Bhd.)を所有している (100%)[37]。これらはサムリンが第三者植林地から調達した丸太の大部分(96%)を供給する植林地である。他には、ダイケンミリ社のテクウッド(Tekwood)のライン、サムリン・ホーム・プロダクツ社(Samling Home Products Sdn Bhd.)のHouse of Acacia、および他のサムリンによるベンチャーが含まれる[38]

図6: サムリン社製品需給フロー(サムリン社製品がどのように製造され、国際的に販売されているかを例示している)

ダイケンミリ

サムリン・マレーシアは、リングイ・デベロップメント社を通じ、ダイケンミリ社に30%出資している。同社はテクウッドおよびテクウッドAと呼ばれるブランドの中密度繊維板(MDF)製品を生産している。このMDFはいくつかの有名ブランドが販売する家具や楽器に使用されている。

完成品および半完成品

以下の情報は、合板、MDF、ドア、フローリングなど、さまざまな木材製品に関するサムリンの取引慣行について焦点を当てている。

貿易フローデータは、2021年1月から2022年7月まで*の貿易のサプライチェーンの推定値である。これは、バイヤーおよび顧客に、サムリン社の製品がどこで見つけられるかについての情報を提供するものである。

*マレーシアの通関データにアクセスすることは不可能であるため、以下の貿易フロー調査は、サラワク政府の輸出統計データと企業の公開情報を組み合わせ、マレーシアの輸出を調べるために仕向国の輸入データを使用する「逆通関データ」に基づいている。税関データソースには、米国の船舶積荷目録データとインド、インドネシア、メキシコ、パキスタン、ベトナム、中国、フィリピンの輸入データが含まれる。

合板

日本はマレーシア合板の主な輸出先である[39]。サラワクは伊藤忠商事や大建工業などの企業との提携を通じて、この貿易で重要な役割を果たしている。

サムリン合板は、米国のシャムロック建材(Shamrock Building Materials)とミッキー・グループにも販売している。シャムロック建材はFSC認証を取得しているが、サムリン社から購入した合板にサラワク在来種の単板が含まれているか、FSCの基準を満たしているものかは、データからは不明である**。

**シャムロック建材は2021年にサムリン合板(ビントゥル)から3000トンの合板を購入した。公表時点で、同社は今後サムリン社からの購入を控えるとの確約を拒否した。

中密度ファイバーボード(MDF)

MDFについては、Daiken Miri(サムリンが30%所有)はアカシアとフタバガキ科の熱帯広葉樹の残材を製品に使用しており、同社のMDFはアカシアのプランテーションとサラワクの天然林伐採用コンセッションの木材を混合している可能性が高い[40]

したがって、この報告書で取り上げているサムリンのコンセッションで生産された木材製品の一部が、このMDFに使用されている可能性が高い。サムリン社のMDF製品は、テクウッドおよびテクウッドAというブランドで取引されている。量的には、サラワクで生産されたMDFの65%が日本に、17%がフィリピンに輸出されている[41]

2020年と2021年に、ダイケンミリはテクウッドをアスト・インドネシア社(PT AST Indonesia)(住友林業グループ)に6,100トン(約3,000立方メートル)[42]を販売した。アスト・インドネシア社[43]は家具やピアノなどの楽器を製造している。インドネシアの輸出を見ると、無印良品、TOTO(住宅設備機器)、シモンズ(ベッドメーカー)、ローランド(ピアノ)、住友林業(インテリア家具)、フォレストワン(オーストラリア, 合板)などの顧客向けの家具の主要メーカーであることがわかる。これらの各顧客では、製品の大部分がMDFを使用している。

ダイケンミリ社はまた、マツザワ・ペリタ・ファニチャー・インドネシア社(PT. Matsuzawa Pelita Furniture Indonesia, 松澤功藝グループ)に1,300トンのテクウッドを販売した。マツザワ・ペリタ・ファニチャーは、パナソニック(楽器、スピーカーボックス)、カワイ(ピアノ)、タカラスタンダード(キッチン)、リクシル(LIXIL, キッチン)、パモウナ(家具)、パラマウントベッド(病院用ベッド)、コクヨ(家具)等のブランド向けにオフィス家具、ドア、キッチン、楽器を製造している[44]

ドア

サムリンは成形ドアスキンの製造および世界的販売で、米国のドアメーカー、メソナイト(Masonite)社と提携している[45]。サムリン・ホーム・プロダクツ(SHP)は、アカシアやその他の熱帯広葉樹を使用した「フロンティエラ(Frontiera)」ブランドのドアを販売している[46]。サムリン傘下のグランド・パラゴン社(Grand Paragon Sdn Bhd)も、入手可能な貿易フロー・データにドアスキンの販売として記載されている。グランド・パラゴンは、インドのSMコーポレーション(SM Corporation)に販売しており、同社はインドにおけるメソナイト社の独占的技術・ブランドパートナーである[47]

フローリング

サムリン社は、2つのグループ会社を通じて、マレーシアと中国で床材を製造している。うち一社は、サラワクと半島マレーシアを拠点とし、サムリン・ホーム・プロダクツとサムリン・フローリング・プロダクツ(Samling Flooring Products)を保有している。もう一社は、リバーサイド・プライウッド(Riverside Plywood)、エレガント・リビング(Elegant Living)、バロック(Baroque)、サムリン・グローバル(Samling Global)、サムリン・リバーサイド(Samling Riverside, 香港拠点)、蘇州タイムズ・フローリング(Suzhou Times Flooring)を保有している[48]。貿易フローデータによると、サムリン・リバーサイドは、サムリン・グローバルUSA社(Samling Global USA Inc)にエンジニアード・フローリングを販売している。この米国の企業は、ライフコア・フローリング(LifeCore Flooring)などのブランドを通じて米国でフローリングを製造・卸売りしている[49]

貿易データによれば、エレガント・リビング社(サムリンが70%を保有する、中国有数のフローリング流通企業のひとつ)は米国のバロック・フローリングに販売している。さらに、エレガント・リビング社は、さ「アドゥラ(Adura)」と呼ばれるアカシアのエンジニアード・フローリングのラインを製造しており、マニングトン・ミルズ(Mannington Mills)が米国で卸している[50]

サムリンはまた、サムリンの完全子会社であるキシロス・アルテリオーズ・インディア(Xylos Arteriors India)を通じて床材を販売している[51]。キシロスは、フローリングとBORNEOTEAK製品を販売している。BORNEOTEAKは、サムリンがLPF(産業植林コンセッション)で栽培されたアカシア・マンギウム種のために登録した商標である。アカシア・マンギウム製品は、サムリン社が川下[52]で主にキシロス社を通じてBORNEOTEAKとして販売しているが、「ボルネオ・チーク(Borneo Teak)」(アカシア・マンギウムとは異なる、準絶滅危惧種のマメ科インシア・ビジュガの通称)として販売されることも多い。

以下の図33は、サラワクからたどることができるサムリンの半完成および完成品の中核的(Tier 1)顧客と、それに関連する補完的(Tier 2)の顧客または市場、完成品、およびブランドをまとめたものである。

図7: サムリンの中核的(Tier1)顧客企業

図7: サムリンの中核的(Tire 1)顧客企業 (PDF)

図8: 日本におけるサムリン社製品顧客企業

結論と提言

本報告書で示された証拠は、深く厄介な現実を暴いている。それは、木材会社サムリンがサラワクの先住民の土地の権利をめぐり、長くさまざまな争いの歴史を持ち、著しい環境悪化に寄与してきたことを示している。この調査結果は、伐採産業におけるパラダイム・シフトの緊急の必要性を強調している。また、森林保護と気候変動対策というサラワクの公約に照らして、認証機関の役割に疑問を投げかけている。

この調査結果は、マレーシア木材認証評議会(MTCC)と森林認証プログラム(PEFC)が、自らの基準を保証し、遵守を強制することができないことを明らかにした。

認証機関であるSIRIMは、これらの基準を効果的に監視・実施できないことが証明された。その結果、これらの認証制度に対する信頼は著しく損なわれ、サムリンや同様の企業によって「持続可能な方法で調達された」と表示された木材製品の正当性は疑わしいものとなっている。

先住民コミュニティがサムリンとMTCCの苦情処理プロセスをナビゲートするのをサポートする私たちの長年の仕事では、苦情処理メカニズムの設計は本質的に欠陥があるというのが私たちの意見である。それは先住民の権利と環境正義を犠牲にし、木材産業の利益を支援する道具として機能している。

この調査から得られた重要な教訓は、サラワク産のMTCS製品と木材製品、特にサムリンに関連する製品は、この地域の先住民コミュニティが土地の権利を確保するまで避けるべきだという強い勧告である。MTCCは、彼らが守ると主張する基準を保証することはできない。現在進行中の多くの土地権利紛争と、それに続く認証機関の不作為を考慮すると、サラワク産の製品は高リスクであると考えなければならない。良心的な消費者や企業は、より透明性が高く倫理的に管理されたサプライチェーンからの木材調達を優先すべきである。

熱帯林のホットスポットであり、メガダイバースの国であるマレーシアは、気候変動との闘いにおいて重要な役割を果たしている。サムリンのような企業による無差別な伐採は、森林減少を悪化させるだけでなく、生物多様性の著しい損失と炭素排出の原因にもなっている。森林被覆に関する公約を履行し、気候変動との世界的な闘いに貢献するために、マレーシアは森林を無傷のまま維持し、再生にシフトすることを優先しなければならない。サラワク州森林局は、森林や先住民族の権利を保護するための自らの公約や政策に反して、伐採やアブラヤシの伐採権を与えることのないようにしなければならない。

さらに、目の前の問題に対処するためには、透明性を高めることが基本的な要件である。サムリン社もサラワク政府も、伐採活動に関連する社会・環境影響評価やその他の評価文書の透明性を高めることを優先しなければならない。この透明性により、独立した監視が可能になり、あらゆる違反の責任者が責任を負い、環境および社会的影響が徹底的に評価され、緩和されることが保証される。

本報告書は、サムリン社の慣行と認証機関の有効性に特に注目し、サラワクの伐採業界における早急な行動と変革向けた警鐘を鳴らすものである。先住民の土地の権利に関する紛争と、生物多様性のホットスポットにおける伐採の影響は、真摯な注意と是正を必要とする問題である。先住民コミュニティ、市民社会、業界の利害関係者との協力によってのみ、サラワクとマレーシア全体がより持続可能で公正な未来に向かって前進することができる。先住民族の権利を支援し、森林を保護し、断固とした行動と原則的な意思決定を通じて世界的な気候変動危機に対処することは、私たちの連帯責任である。

重要な提言

  1. サラワク森林局は、ジェレナイFMUおよび、伐採権者としてのサムリンの義務違反の疑惑のある、コミュニティからの苦情の来歴をもつその他のFMUにおけるサムリングの伐採作業に対しモラトリアムを発行すべきである。
  2. サムリン社のジェレナイFMUに対するマレーシア木材認証制度(MTCS)認証は、即時停止されるべきである。
  3. サラワク州森林局は、サムリン社の森林認証および森林法の遵守について、独立したレビューを開始すべきである。先住民族コミュニティは審査に密接に関与すべきである。
  4. マレーシア木材認証審議会(MTCC)は、自らの基準の遵守を確認できる仕組みを組み入れるべきである。
  5. すべての組織(SIRIM、MTCC、サムリン、PEFC)の苦情手続きは、より透明性が高く、 アクセスしやすく、タイムリーでなければならない。
  6. SIRIM と MTCC は、MTCS または FSC 認証の一時停止または取り消しを構成するものに関して、透明性を高めなければならない。認証基準への度重なる不遵守は、認証の一時停止および/または取り消しに繋がらなければならない。
  7. 消費者および企業は、認証プロセスが信頼できるようになり、土地の権利紛争が解決されるまで、サムリンおよびMTCS認証製品を避け、より透明性が高く倫理的に管理されたサプライチ ェーンから木材を調達することを優先すべきである。
  8. 欧州連合は、本報告書で取り上げた問題が解決されるまで、EUDR(欧州森林破壊防止規制)に基づき、サムリンの木材製品のEU共通市場への参入を禁止すべきである。
  9. 残存する全ての原生林または伐採されていない森林は、伐採コンセッションから、また、農業や他の土地カテゴリーへの転換から除外されるべきである。
  10. サラワク産の製品は、先住民コミュニティが確実な土地の権利を持つまで、紛争のリスクが高いとみなされるべきである。サラワク州森林局は、森林と先住民族の権利を保護するための公約や政策に真っ向から反する伐採権や植林権を与えないようにすべきである。
  11. すべての利害関係者は、社会・環境影響評価の透明性と質の向上を優先すべきである。
  12. コミュニティは認証プロセスにおいて適切かつ十分な協議を受けなければならない。SIRIM は、自由意思に基づく事前のインフォームド・コンセントが得られていることを確認しなければならない。
  13. 企業、MTCC、SIRIM、FDS、コンサルタントは、先住民コミュニティおよび市民社会と協力して取り組むべきである。
  14. マレーシアは森林を完全な状態に保つことを優先し、先住民族の権利に関する国連宣言の批准を含め、 先住民族の権利の再生と保護にシフトすべきである。
  15. マレーシアは反SLAPP法を可決しなければならない。

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References: Introduction

[1] International Tropical Timber Organization (ITTO), Annual Review and Assessment of the World Tropical Timber Situation 1993-1994, 1995, p. 28, https://www.itto.int/direct/topics/topics_pdf_download/topics_id=3114&no=0

[2] Bruno Manser Fonds, Sarawak Geoportal creates transparency on land use in Malaysian Borneo, February 24, 2014, https://www.brunomanser.ch/en/news/sarawak-geoportal-creates-transparency-on-land-use-in-malaysian-borneo

[3] LinkedIn, Samling Group of Companies, https://www.linkedin.com/company/samling-global-limited/

[4] Samling, Natural Forest, https://www.samling.com/natural-forest Accessed October 24, 2023

[5] See Global Witness, An Industry Unchecked, September 2013, p. https://www.globalwitness.org/en/campaigns/forests/industry-unchecked/; Global Witness, Japan’s timber imports fuelling rainforest destruction in Sarawak and violation of indigenous land rights, June 2014, https://www.globalwitness.org/en/archive/briefing-japans-timber-imports-fuelling-rainforest-destruction-sarawak-and-violation/; Global Witness, Wilful Ignorance, April 2016, https://www.globalwitness.org/en/reports/wilful-ignorance/

[6] Hanbury-Tenison, R., Rainforest Tribunal, August 2023 https://www.youtube.com/watch?v=SjQLfWdlSM4

[7] Global Witness, Pandering to the loggers: Why WWF’s Global Forest and Trade Network isn’t working, July 2011, p. 12, https://cdn2.globalwitness.org/archive/files/library/pandering_to_the_loggers_web_0.pdf

[8] Council on Ethics, The Government Pension Fund Global, February 22, 2010, https://www.regjeringen.no/globalassets/upload/fin/etikk/recommendation_samling.pdf

[9] Greenpeace, Partners in Crime: Malaysian Loggers, Timber Markets and the Politics of Self-Interest in Papua New Guinea, October 2001, p. 11, https://www.greenpeace.org/usa/wp-content/uploads/legacy/Global/usa/report/2010/2/partners-in-crime-malaysian.pdf

[10] Hance, J., Logging Company fined $100 million for illegal logging in Papua New Guinea, Mongabay, June 28, 2011, https://news.mongabay.com/2011/06/logging-company-fined-100-million-for-illegal-logging-in-papua-new-guinea/

[11] At the time of publication (September 2023), this investigation is ongoing, FSC Connect, Samling Global Ltd https://connect.fsc.org/actions-and-outcomes/current-cases/samling-global-limited

References: Part 3

[12] Greenpeace, Legal Forest Destruction, February 2006 https://www.greenpeace.org/static/planet4-netherlands-stateless-develop/2018/06/legal-forest-destruction.pdf

[13] International Standards Organization, Quality Management – Customer satisfaction – Guidelines for complaints handling in organizations, 3rd ed., July 2018, reference number ISO 10002:2018 (E), https://www.iso.org/standard/71580.html

[14] KERUAN Organisation, Letter to David Marsden, Chief Forester of Samling, June 23, 2020, http://borneoproject.org/wp-content/uploads/KERUAN-Organisation-Letter-to-David-Marsden-Chief-Forester-of-Samling-June-23-2020.pdf

[15] See, ‘Guideline 12: Conflict resolution guidelines for sustainable forest management’ THE GREEN BOOK, MANUALS, PROCEDURES AND GUIDELINES FOR FOREST MANAGEMENT CERTIFICATION IN SARAWAK (NATURAL FOREST), Forest Department Sarawak Management and Planning Division, 2019, p. 273, https://forestry.sarawak.gov.my/web/attachment/show/?docid=YWlvM2NlWFV2VGFJaythSmthMkNIdz09OjrrprvW5AU3KcLq0Z7OEzbq

[16] See for example Criterion 2.3 and its verifiers in the MTCS document: MTCS, Malaysian Criteria and Indicators for Sustainable Forest Management, MTCS, September 30, 2021, p. 16, https://mtcc.com.my/wp-content/uploads/2022/02/MTCS-ST-1002-2021-MCI-SFM-Final-B5.pdf

[17] Samling, Samling Grievances Process Flow Chart, January 2022, accessed via the Internet Archive: https://web.archive.org/web/20220120090316/https://samling.com/sustainability/corporate-social-responsibility-csr

[18] Samling, Samling Grievances Process Flow Chart, July 13, 2022, accessed via link from https://samling.com/sustainability/corporate-social-responsibility-csr

[19] Samling, Samling Complaint/Request form accessed 27 September 2023, https://samling.com/samling-complaintrequest-form

[20] Personal communication, August 30, 2023. Contact requested anonymity.

[21] MTCC, Malaysian Timber Certification Council Contact form, MTCC, September 29, 2017, accessed via the Internet Archive: https://web.archive.org/web/20170929054554/http://mtcc.com.my/contact/

[22] MTCC, Malaysian Timber Certification Council General Inquiry, MTCC, May 13, 2020, accessed via the Internet Archive: https://web.archive.org/web/20200513111040/http://mtcc.com.my/general-inquiry/

[23] Form International, PEFC Conformity Assessment: Malaysian Timber Certification Scheme (MTCS), May 2021, https://cdn.pefc.org/pefc.org/media/2021-11/4f36e0c0-e96e-4547-88de-2a3cd10a357f/dbce712d-0302-5859-8d37-63c3193a4060.pdf

[24] Male community member from a village within the Gerenai FMU (Anon.), personal communication: report of community meeting with SIRIM organized by Roland Engan, September 10, 2019.

[25] See, MTCC, Commentary: PROCESSES INVOLVED IN GRANTING CERTIFICATION UNDER THE MTCS, MTCC, August 13, 2020, https://mtcc.com.my/commentary-processes-involved-in-granting-certification-under-the-mtcs/; Samling, Media Release: Samling Group refutes online news reports, Samling, July 7, 2020, https://www.samling.com/sites/default/files/content/media-release/pdf/2021/Samling%20Group%20refutes%20online%20news%20reports.pdf

[26] SAVE Rivers, Absent from their own seminar: Samling continues to ignore indigenous voices, SAVE Rivers, October 9, 2020, https://saverivers.org/2020/10/09/absent-from-their-own-seminar-samling-continues-to-ignore-indigenous-voices/

[27] MTCC, Outcome of Meeting of Dispute Resolution Committee on Complaints Relating to the MTCS-PEFC Certification of Gerenai and Ravenscourt FMUs, MTCC, n.d., http://borneoproject.org/wp-content/uploads/Outcome-of-Meeting-of-Dispute-Resolution-Committee-on-Complaints-Relating-to-the-MTCS-PEFC-Certification-of-Gerenai-and-Ravenscourt-FMUs-MTCC.pdf

[28] SIRIM QAS International, op. cit., June 24, 2022, p. 15.

[29] Ibid., p. 42.

[30] Ibid., p. 78

[31] Ibid., p. 43.

[32] Dayak Daily, Timber co vs Save Rivers lawsuit: Advocacy group urges collaboration for sustainable future setting aside past grievances, May 17, 2023, https://dayakdaily.com/timber-co-vs-save-rivers-lawsuit-advocacy-group-urges-collaboration-for-sustainable-future-setting-aside-past-grievances/Dayak Daily, Attack on Telang Usan rep over logging issues in Baram uncalled for says NGO, March 17, 2023, https://dayakdaily.com/attack-on-telang-usan-rep-over-logging-issues-in-baram-uncalled-for-says-ngo/

[33] See, Sarawak Report, Dirty Tricks By Samling’s PR Department?, May 18, 2023, https://www.sarawakreport.org/2023/05/dirty-tricks-by-samlings-pr-department/; Sarawak Report, PR Cat & Mouse Games by Pro-Samling ‘Sustainability NGO’ APS?, May 20, 2023, https://www.sarawakreport.org/2023/05/pr-cat-mouse-games-by-pro-samling-sustainability-ngo-aps/; Dayak Daily, Timber co vs Save Rivers lawsuit: Advocacy group urges collaboration for sustainable future setting aside past grievances, May 17 2023 https://dayakdaily.com/timber-co-vs-save-rivers-lawsuit-advocacy-group-urges-collaboration-for-sustainable-future-setting-aside-past-grievances/; Dayak Daily, Attack on Telang Usan rep over logging issues in Baram uncalled for says NGO, March 17, 2023 https://dayakdaily.com/attack-on-telang-usan-rep-over-logging-issues-in-baram-uncalled-for-says-ngo/

[34] SAVE Rivers, SAMLING CEO MAKES POLICE REPORT AGAINST SAVE RIVERS, August 12, 2023, https://saverivers.org/2023/08/12/samling-ceo-made-a-police-report-against-save-rivers/

References: Part 4

[35] Samling Global Limited, Annual Report 2008 – Connect Transactions (4) Provision of services on timber extraction, establishment and maintenance of tree plantations to Grand Perfect Sdn. Bhd., p.73, https://www1.hkexnews.hk/listedco/listconews/sehk/2008/1028/ltn20081028611.pdf

[36] Faeh, D., “Development of Global Timber Tycoons in Sarawak, East Malaysia (history and company profiles), Bruno Manser Fund, February 2011, https://www.stop-timber-corruption.org/resources/bmf_report_sarawak_timber_tycoons.pdf

[37] GP Pusaka, Harvesting of Timber, Grand Perfect, https://www.gppusaka.com.my/harvesting-timber; see also, https://www.gppusaka.com.my/node/1

[38] Samling, Miscellany of Facts – about our timber based operations, rev.04, June 2021, https://www.samling.com/sites/default/files/inline-files/Miscellany%20of%20Facts%20UPLOAD%20(edit%204%20JUNE)%2021.pdf.

[39] Research conducted by Stand.earth Research Group based on Malaysian External Trade Statistics for January – December 2021, https://metsonline.dosm.gov.my/tradev2/category

[40] Samling claims that 100% of their sourcing is from Sarawak; see Ibid.

[41] Sarawak Timber Industry Development Corporation (STIDC), Statistics of Timber and Timber Products Sarawak 2021, STIDC, https://www.sarawaktimber.gov.my/modules/web/pages.php?mod=download&id=110

[42] Forest Product Conversion Factors: Project Overview and Status, United Nations Economic Commission for Europe, March 10, 2009, https://unece.org/fileadmin/DAM/timber/meetings/forest-products-conversion-factors.pdf

[43] Wesleynet Indonesia, eCatalogue: T Company profile, PAST Indonesia, Wesleynet.com, http://www.wesleynet.com/indonesia/ecatalogue/profile.php?Co_Code=1287

[44] Matsuzawa Kogel, “Product Introduction”, accessed September 2023, https://matsuzawa-kogei.co.jp/group-company/#

[45] Samling, Our Businesses: Downstream Timber Operations, https://www.samling.com/our-business/downstream-timber-operations

[46] Frontiera, Our Products, Frontiera Malaysia, January 2022, https://frontieramalaysia.com/product/

[47] SM Corporation, About Us, Masonite, November 2020, https://www.smcorpindia.com/about-us/

[48] International Trade Administration, Multilayered Wood Flooring From the People’s Republic of China: Final Determination of Sales at Less Than Fair Value [Notice], Federal Register, October 18, 2011, https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2011-10-18/pdf/2011-26932.pdf

[49] SCS Global Services, Lifecore Flooring Products – Samling [Independent Assessment], Registration No. SCS-FS-04055, n.d., https://cdn.scscertified.com/products/cert_pdfs/LifecoreFlooringSamling_2020_SCS-FS-04055_s.pdf

[50] Mannington, Floors – ADURA®Max Wood Plank: Acacia Tiger’s Eye MAX011, Mannington Mills, Inc., 2019, https://www.mannington.com/Residential/Adura-Vinyl-Plank/AduraMax/AduraMaxPlank/Acacia/MAX011

[51] Xylos Arteriors India, https://xylosindia.in

[52] Syarikat Samling Timber Sdn. Bhd., PUBLIC SUMMARY Forest Plantation Management Plan Lana LPF for the period 2016 to 2026, Samling, April 20, 2023, https://www.samling.com/sites/default/files/Lana%20FMP%20PUBLIC%20SUMMARY%20%2014%20April%202023.pdf

 

 

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