パーム油を利用する日本企業115社の取り組み状況を格付け評価〜認証パーム油調達以上の取り組みはいまだ限定的〜

 プランテーション・ウォッチ(注1)は、本日、「パーム油関連各社の取り組み 状況評価:企業格付け」を発表しました。日本のパーム油利用の7つの業界(菓子会社、インスタント食品会社、食料品販売会社、パン・マーガリン会社、外食サービス会社、商社、日用品・油脂・調味料会社)について、これらの業界における売上上位の企業115社を対象としています。本調査は2016年より実施しており、今年で6回目となります。2021年末に実施した質問には、対象とした115社のうち49社から回答が得られました。

 評価の結果、環境・社会問題に対処するための国際基準であるNDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロ)方針を採用している企業の数は増えてきているものの、その方針の実施状況について、独立検証による十分な確認ができている最も評価の高いA評価の企業が、未だ存在しない状況が続いていることが明らかとなりました。A評価に次ぐBBB評価では、少なくとも調達方針に違反する事例やその対応状況を含む苦情リストを公表する必要があります。今回、BBB評価に達したのは、115社のうち不二製油株式会社のみでした。BBB評価に次ぐBB評価では、自社の搾油工場リストを公表する必要があります。BB評価に達したのは、ネスレ、明治、花王、日清食品ホールディングス、日清オイリオグループ、伊藤忠商事の6社でした。
 また、2社(日清医療食品、エームサービス)からは回答をしない旨の連絡を受け取りました。残りの66社からは、残念ながら返答がありませんでした。

 過去5年にわたり全体として調達方針の策定やRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)への加盟およびRSPO認証油の調達など、各企業の取り組みに少しずつ前進が見られる一方で、パーム油のサプライチェーンの把握やNDPE方針に基づくリスク評価および緩和といった取り組みを行っている企業は、未だ限定的であることがわかりました。
 特に、パン・マーガリン会社、外食サービス、食料品販売会社といった業界については、全体としてアンケート調査への回答率が低く、責任あるパーム油の調達に対する意識の低さを露呈する結果となりました。

 インドネシアやマレーシアといったパーム油の生産国における環境・社会リスクに対応するために、多少なりともRSPO認証油を取り扱う企業が増えたことは一歩前進ではありますが、監査体制に課題がある認証制度に頼るだけでは重大な環境社会問題のリスクに十分に対処することはできません。認証制度を活用しつつ、企業の調達方針として、農園までのサプライチェーンの把握と公表やNDPE方針に基づくサプライチェーン管理体制の遵守の取り組みを進めていくことが求められます。

 

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注1)プランテーション・ウォッチは、以下の6団体が協働して、熱帯地域での単一作物の大規模栽培が抱える問題について情報提供し、責任ある原料調達を目指す取り組みを支援するNGOネットワークです。

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表部、一般財団法人地球・人間環境フォーラム、非営利活動法人国際環境NGO FoE Japan、特定非営利活動法人メコン・ウォッチ、サラワク・キャンペーン委員会(SCC)

注2)NDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロ)方針では、森林減少禁止のために、保護価値の高い森林や高炭素貯留林の転換禁止、火入れ禁止、泥炭地開発禁止に加えて、労働権や土地権の尊重などを含んでいる。

免責条項について

この評価は2021年12月〜2022年1月に実施したアンケート調査の回答に基づいています。本プレスリリース発表時までに、企業の取り組みに変化が生じている可能性があります。

お問い合わせ

プランテーション・ウォッチ事務局
熱帯林行動ネットワーク(担当:中司)
Email:jatan.office[@]gmail.com