干潮と満潮の差が最大となる満月を迎える頃には、場合によっては高さが3メートルを超える巨大な波がマラッカ海峡からカンパール河を逆流してくる。これが地元で″bono″と呼ばれる潮汐波である。まさにスマトラのポロロッカ(Pororoca)とでも呼べそうな自然の大イベントである。河口から70-80キロ上流のテルク・メランティ(Teluk Meranti)やプラウ・ムダ(Pulau Muda)という村で特に最大になるという。潜在的な観光資源として大変魅力があるが、過去には「ボノ」による大きな転覆事故が起きている。数年前には15名の村人などが亡くなるバージ(平底船)の転覆事故も。カンパール河の交通に伴う、こうしたリスクを回避するために南岸に道路敷設が進められているが、APP系の木材企業、アララ・アバディ社は敷地内の使用を拒んでいるために沿岸道路は寸断されたままになっている。2010年8月に訪問したときは地元の活動家がとっておきの観察場所に案内してくれて、とても壮大な自然現象のドラマを見ることが出来た。川面を見る視線の先端に一直線の白波が見え始め、少しずつ、その太さを増してくる。それとともに地響きのような低い轟音が聞こえてくる。4,5分前までにみんなと並んで眺めていた砂浜はあっという間に波間に呑まれてしまった。