最新版「日本にやってくる熱帯林産物の原料生産にともなう土地収奪と森林破壊」(2022年)
過去四回にわたって公表したレポートではおもにサラワク産木材製品におけるさまざまな問題や影響について概説した。われわれは日本の住宅産業のサプライチェーンに連なる各企業に情報を提供し、かれらが使用している合板製品の原料調達にともなう現場の問題に注視するよう要望し、また、調達現場の環境・ 社会面の悪影響を未然に防ぐための調達方針を立案・実行するようもとめてきた。今回のレポート「日本に来る熱帯材合板の生産にともなう土地収奪と森林破壊―マレーシア・サラワクとインドネシア」では、タイトルが示すように調査と分析のスコープをサラワクだけでなくインドネシアにも広げ、また、これまでのように企業のアンケート結果の評価に加えて、両地域の現地視察による調査報告を盛り込んだ内容となっている。
<過去のレポート>
第一弾レポート「フローリングへと変貌する熱帯林」(2016年)
日本は世界のどの国よりも熱帯林に由来する合板の輸入が多い。その供給先のほとんどは日本の巨大な建設・住宅産業である。日本が輸入する熱帯材合板の半分は、ボルネオ島にあるサラワクから来ている。サラワクの熱帯林消失率は地球上では腐敗、不可逆的な環境破壊、違法性と言った問題が蔓延している。サラワクで生産されている木材のほとんどすべては自然熱帯林に由来している。2012年時点でサラワク州は、マレーシア全体の熱帯自然林からの木材生産のうち6割近くを占めていた。サラワクでは植林から生産された木材の海外輸出も増えている。しかし、そうした人口造林は熱帯自然林からの転換の結果であり、環境と社会に与える負のインパクトを伴っている。マレーシア木材製品の主要な輸出先市場はアジアだ。日本はその筆頭である。
2016年レポート
第二弾レポート「Too Little Too Late」(2017年)
オーストラリアのNGOマーケット・フォー・チェンジ(MFC)と熱帯林行動ネットワーク(JATAN)は2016年2月と3月にレポート、「フローリングへと変貌する熱帯林:日本の住宅産業が推し進めるサラワクの森林破壊と先住民からの土地収奪の実態」を発表した。わたしたちは、サプライチェーンを追跡する中で特定できたすべての購入企業にこれを送付するとともに、企業の担当者を対象に大阪と東京でセミナーを開催した。また、マレーシア・サラワク州に由来を持つ木材の調達に関わる問題について、多くの企業と会合を通して議論をおこなった。以来、そうした企業には然るべきコミュニケーション手段を通して関連する問題のアップデート情報を提供してきた。今回のレポートでは、合板基材のフローリング製品のサプライチェーンに関わっている日本の企業をターゲットとしてきたわたしたちのキャンペーンについて評価をおこなっている。
2017年レポート
第三弾レポート「足下に熱帯林を踏みつけて」(2018年)
オーストラリアのNGOマーケット・フォー・チェンジ(MFC)と熱帯林行動ネットワーク(JATAN)では、昨年に引き続きマレーシア・サラワク州からの輸入木材について、住宅関連企業を対象に実施したアンケート結果をもとに調達方針・実践に関する分析を行い、提言を盛り込んだ新レポートを発刊した。
2018年レポート
第四弾レポート「隠蔽された住宅建材」(2020年)
JATANが2016年から取り組んでいる、住宅セクターからサラワク材の排除を求めるキャンペーンで今回、新レポートに公刊に合わせて東京と大阪で住宅セクターの木材サプライチェーンに連なる65社を対象にセミナーをおこなった。レポートでは、昨年11月に実施した企業アンケートの結果によるランキング評価とならんで、サラワクと豪州タスマニアにおける日本向け合板製品の原料調達がもたらしている《環境》と《人権》の深刻な問題に焦点をあてている。
2020年レポート