コピー用紙はどこから来るの?
2009年に国内で消費されたコピー用紙のうち、34%は海外からやってきたものです。そして、日本に輸入されてくるコピー用紙のうち約80%はインドネシアからのものです。
インドネシアから輸入されるコピー用紙のメーカー別シェアを見ると、約85%をインドネシアのエーピーピー(APP)社とエイプリル(APRIL)社が占めています。日本に流通している銘柄として、EXCEL PRO(APP)やPaper One(APRIL)、アスクルやコクヨの委託生産品(APP)、メーカー名が記載されていない商品もインドネシアから輸出されています。
インドネシア国内の紙・パルプ産業は、スマトラ島に生産拠点を持つエーピーピー(APP)社とエイプリル(APRIL)社の2社が大きなシェアを握っています。これらの企業は、原料となる木材をスマトラ島の泥炭湿地林を含む保護価値の高い森林や、そこを造成した産業植林地から得ています。
2, 泥炭湿地ってなに?
泥炭地の広がる地域には、今なお森林に依存する伝統的な生活を営んでいる先住民がいます。彼らは漁労、狩猟、農業、非木材林産物(蜂蜜・ラタン・染料など)の採取をして生活しています。しかし、企業の産業植林事業により彼らの土地が脅かされています。
インドネシア・スマトラ島には固有の動植物が多く存在します。そして、泥炭地は既に数百頭しかいないという絶滅危惧種であるスマトラトラの生息地でもあるのです。この貴重なスマトラトラの棲息地が企業による開発のため喪失されています。
2006年度のインドネシアのCO2排出量は世界第21位とされました。しかし、泥炭地からのCO2排出を含めると中国、米国に次いで世界第3位でした。泥炭地の蓄えるこれほど莫大な炭素が気候変動に与える影響は測り知れません。
3, なにが起こっているの?
インドネシアでは、森林は国の所有物であるため、政府が伐採権(産業植林権)を発行することで、企業は天然林をすべて伐り払ってプランテーションに転換しています。近年では、開発が困難とされる泥炭地にも産業植林造成事業が広がっています。
プランテーション用の植物を植えるために排水し土壌を乾かす必要があります。この排水により、蓄積されていた炭素が分解され大気中に大量のCO2が排出されます。また、乾燥した泥炭地では森林火災が起きやすく、さらなるCO2排出も深刻な問題となっています。
エーピーピー(APP)社やエイプリル(APRIL)社といった企業は、本来であれば伐採の対象にできないような天然林や、保護規制対象となっている泥炭土壌の深さが3m以上の泥炭地などでも伐採権を得て原料の供給地としています。インドネシアからやってくるコピー用紙には、これらを造成した植林地からの木材が混入している可能性が高いのです。
4, どうすればいいの?
私たちもコピー用紙の消費者として、このような問題に対して間接的に関与しているといえます。目には見えないだけに理解しづらい問題ですが、きちんと理解し、そして行動に移すことが大切です。まず簡単に始められる行動として、これから使用するコピー用紙は環境に配慮されたものにしましょう。古紙100%、つまりリサイクル紙100%のコピー用紙は資源の有効活用にもなり、CO2排出量も小さいことから環境に良い紙といえます。またFSC認証紙も適切に管理された森林由来の製品である証です。FSC認証紙であれば原料が木材パルプであるため、紙の品質に気を使う必要はありません。
この問題を知らない人々に伝えていく。問題のあるコピー用紙を購入しないように消費者として企業に働きかけていく。問題解決に向けて活動しているNGOを支援する。
※植林材が必ずしも環境に良いとは限りません。その植林地は天然林を伐り拓いて造成されたり、社会紛争を引き起こしている場合があるからです。また、第三者認証を受けているというだけでは適切な管理をされている理由にはなりません。認証によって基準が異なるからです。