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【プレスリリース】パーム油を利用する日本企業の取り組み状況を評価する「企業格付け2023」発表

パーム油を利用する日本企業の取り組み状況を評価する「企業格付け2023」発表
〜森林保護や人権尊重を求める方針を公表する企業は全体の2割のみ パン業界、外食産業、食料品販売会社の対応は低いまま

プランテーション・ウォッチ(注1)は、本日、「企業格付け2023:企業のパーム油調達への取組状況」を発表しました。本評価は、2016年より実施しているアンケート調査に基づいており、プランテーション・ウォッチ独自の基準により企業の取組状況を比較したものです。パーム油を利用する主要な8つの業界(注2)について、これらの業界における売上上位の企業を対象としています。

7回目となる2022年度のアンケート調査では、対象とした112社のうち52社から回答が得られました。残りの60社からは、残念ながら回答はありませんでした。評価の結果、環境・社会問題に対処するためのグローバル・スタンダードであるNDPE(注3)方針を採用している企業の数は増えてきているものの、その方針の実施状況の独立検証による十分な確認ができている高評価のA評価の企業は、未だ存在していません。A評価に次ぐBBB評価では、少なくとも調達方針に違反する事例に関する対応状況の情報開示を行う「苦情リスト」や取引停止先リスト(No Buy List)を公表する必要があります。今回、BBB評価に達したのは、112社のうち不二製油グループ本社と日清オイリオグループのみでした。BBB評価に次ぐBB評価では、少なくとも自社の搾油工場リスト(注4)を公表する必要があります。BB評価に達したのは、明治、日清食品ホールディングス、雪印メグミルク、花王、伊藤忠商事、三井物産の6社でした。さらにB評価では、少なくともNDPE方針を持っている必要があります。B評価に達したのは、江崎グリコ、カルビー、森永製菓、味の素、パルシステム、J-オイルミルズ、日本ケンタッキー・フライド・チキン、ユニ・チャーム、三菱商事、丸紅、住友商事の11社でした。

昨年度から新たにBBBに評価を上げたのは日清オイリオグループの1社、BBに評価を上げたのは雪印メグミルク、三井物産の2社、Bに評価を上げたのは住友商事の1社でした。

2016年以降、パーム油に適用される調達方針の策定やRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)への加盟およびRSPO認証油の調達開始など、全体として各企業の取り組みに少しずつ前進が見られる一方で、パーム油のサプライチェーンの把握やNDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ)方針に基づくリスク評価の取り組みを行っている企業は、全体の二割程度にとどまっている状況です。
特に、パン・マーガリン会社のパン業界、外食サービス会社、食料品販売会社といった業界については、昨年度に引き続き、全体としてアンケート調査への回答率が低く、責任あるパーム油の調達に対する意識の低さを露呈する結果となりました。

RSPOへの加盟やRSPO認証油の調達は、責任あるパーム油の調達に向けた取り組みの第一歩ではありますが、認証システムや監査体制には課題があることから、認証制度に頼るだけでは重大な環境社会問題のリスクに十分に対処することはできないと私たちは考えています。

2023年4月、欧州連合(EU)が森林破壊防止法を承認しました。この法律はパーム油を含む森林リスク産品について、サプライチェーン上で森林破壊を引き起こしていないことのリスク評価を企業に義務付けるものです。また、日本でも政府が2022年9月に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を発表するなど、責任ある原料調達に向けた機運が国際的に高まりつつあります。これらのリスク評価において、まずは調達方針の作成などのコミットメントをし、問題の所在を知るためにパーム油のトレーサビリティを確保することが重要となります。その上で、認証制度等の仕組みを活用しつつ、サプライチェーン管理体制の遵守の取り組みを進めていくことが求められます。

*格付け評価の詳細はこちらをご覧ください。

*企業格付けのウェブページはこちらをご覧ください。

*アンケートの質問票はこちらをご覧ください。

注1)プランテーション・ウォッチは、以下の7団体が協働して、熱帯地域での単一作物の大規模栽培が抱える問題について情報提供し、責任ある原料調達を目指す取り組みを支援するNGOネットワークです。
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表部、一般財団法人地球・人間環境フォーラム、非営利活動法人国際環境NGO FoE Japan、特定非営利活動法人メコン・ウォッチ、サラワク・キャンペーン委員会(SCC)、ウータン・森と生活を考える会

注2)菓子会社:20社、インスタント食品会社:19社、食料品販売会社:25社、パン・マーガリン会社:10社、外食サービス会社:20社、日用品会社:6社、油脂会社:10社、総合商社:5社(業界によって一部の企業に重複あり)

注3)NDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロ)方針では、森林減少禁止のために、保護価値の高い森林や高炭素貯留林の転換禁止、火入れ禁止、泥炭地開発禁止に加えて、労働権や土地権の尊重などを含んでいる。

注4)アンケート対象企業112社のうち、63社(約56%)がRSPOに加盟しています。RSPOの加盟企業に対しては、BB評価の基準となっている搾油工場リストの公表を求められているが、2023年現在で公表しているのは10社にとどまっている。

注5)評価基準の詳細は以下の通り。業界によって企業に重複があるため、企業全体数の合計は112社と一致しない。

免責条項について
この評価は2023年1月〜2月に実施したアンケート調査の回答に基づいています。本プレスリリース発表時までに、企業の取り組みに変化が生じている可能性があります。

お問い合わせ
プランテーション・ウォッチ事務局
熱帯林行動ネットワーク(担当:中司)
Email:jatan.office[@]gmail.com

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