「世界チョコレート成績表2023」発表〜日本企業にトレーサビリティの改善が見られるが、足取りは遅い〜

世界チョコレート成績表2023へのリンクはこちら

要点

・日本からは不二製油グループ本社、明治ホールディングス、伊藤忠商事、ロッテ、森永製菓、江崎グリコ、大東カカオと小売業社のファミリーマートの計8社が参加。日本企業の中では、総合評価において、不二製油グループ本社が最も高い評価(3番目のオレンジ)を得ているが、それでも海外の企業には後れを取っている。

・明治ホールディングスと伊藤忠商事は「トレーサビリティ・透明性」の個別評価で初めての2番目のスコアカテゴリ「黄」を獲得。しかし、世界のカカオの 40% は「未だに追跡不能」であり、森林破壊を止めるには、さらに農場レベルまで追跡する必要がある。

・日本企業は児童労働の問題に積極的に取り組んでいるが、その他の課題への取り組みについては評価が低い。

・いくつかの日本企業は、パーム油と森林伐採に関する方針を持っているが、SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)のような方針をカカオにも拡大する必要がある。

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)とマイティー・アースが協力団体として参加し、豪州の人権団体であるビー・スレイバー・フリーが率いるプロジェクトにおいて、本日、『世界チョコレート成績表2023』(以下、「成績表2023」)を発表した。今年で 4回目を数える世界チョコレート成績表は、過去最大の規模であり、上記団体をはじめとする35の大学、市民団体、コンサルタント会社等が協力して実施された。

成績表2023では、2年に一度行っている小売業者への調査を含め、チョコレート業界の商社、加工業者、製造業者を含む世界大手のチョコレート企業 53 社の調達方針と取り組みを評価している。成績表2023では、世界のチョコレート製品の 95%をカバーし、マース、リンツ、ネスレ、モンデリーズ(キャドバリー)、フェレロ、ハーシーズなどの大手企業が含まれる。成績表2023は、6 つの分野(トレーサビリティと透明性、生計維持所得、児童労働・強制労働、森林破壊・気候、アグロフォレストリー、農薬管理)で企業を「緑」(方針と実行で業界をリードする)から「黒」(透明性に欠け、無回答) まで5段階に評価している。

総合評価の概要

・総合評価で「緑」を受賞した企業は、トニーズチョコロンリー、アルテルエコ、ビヨンドグッド、ハルバ、オリジナル・ビーンズ 。

・ネスレ、マース・リグレー、ハーシーズなど、世界最大のチョコレート メーカーのいくつかは、昨年からスコアを伸ばし続けており、それぞれ「黄」を獲得。

・チョコレート企業のゴディバ とストーク は、スターバックスと同じく、「オレンジ」を獲得。日本の企業では、不二製油グループ本社、明治ホールディングス、伊藤忠商事が含まれる

他の日本企業は、ケロッグと同じ、「赤」を獲得

・ユニリーバやモンデリーズ(キャドバリー)など、これまでサステナビリティの資格を誇っていた企業は、情報を提供せず無回答で、「黒」を獲得。

・世界チョコレート成績表と詳細な分析は、こちらで入手できます。
・2023年版の採点方法はこちらを参照。

森林破壊

世界チョコレート成績表をコーディネートする NGO のビー・スレイバリー・フリー の代表であるファズ・キット氏は、次のように述べている。

「最近、リベリアとの国境に近いコートジボワールを訪れたとき、私は法律で保護されている国有林の近くに立っていた。しかし、ブルドーザーはまだ稼働しており、手付かずの森林を伐採してカカオのプランテーションを作ろうとしていた。」

「企業や政府が根本原因に対処するまで、ブルドーザーは止まることはない。サプライ チェーンにおけるトレーサビリティと透明性の欠如、そして農家の生活維持所得の欠如である。森林伐採、児童労働、農薬の使用はすべて、この2 つの根本的な問題の兆候に過ぎない。」

また、「ガーナの現地の話として、『日本企業は、カカオの品質だけではなく、カカオの生産方法にも注意を向けるようになった』という評価の声が聞かれる」とも、ファズ・キット氏は述べた。「一部の日本企業の取り組みに変化が生まれていることが今年のスコアで明らかになっている。」

西アフリカでは世界のカカオの4分の3を生産しており、コートジボワールとガーナが最大の生産国である。この2つの国では、過去60年間に森林の大部分が失われた。それぞれ約94%と80%の減少であり、カカオ栽培のために失われた森林はそれらの約3分の1である。

2018年には、コートジボワールとガーナでは原生林の減少が熱帯諸国の中で最も高くなった。2020年には、コートジボワールのカカオ産地でさらに 47,000ヘクタールの森林が失われた。これは生物多様性に影響を与え、ゴリラ、チンパンジー、ピグミーチンパンジー等の大型類人猿の生息地の多くを破壊している。

森林破壊への取り組みで最高のスコアを獲得した企業は、オリジナル・ビーンズ、トニーズチョコロンリー、ビヨンドグッド、ハルバ、フェレロ、ネスレ、マースで、「緑」または総合評価で最高位のカテゴリに属している。これらの企業は、同業他社と比較してトップに立つための努力を行ってきた。

回答した53社の企業のうち、48社は、森林を破壊しない地域からカカオが調達されていることをサプライヤーに確認するという「森林破壊禁止」方針を採用している。しかし継続的に不遵守した場合に排除するような、サプライヤーの改善計画を明確に促すような方針がある企業は半数未満である。

次のステップに進むには

児童労働については、サプライチェーンにおける児童労働の実態を把握するため、児童労働フリーゾーンによってサプライチェーンの大部分を監視またはカバーしていく必要がある。生計維持所得については、生計維持所得参照価格を計算して、農家の収入を改善していくことである。農薬管理については、オーガニック農法に移行して殺虫剤の使用をなくすことである。生産現場で何が起こっているかを知り、そのプログラムの結果を知るには十分な知識が必要である。

・ガーナでの森林破壊の状況を示した地図は以下を参照。
マイティー・アースによるカカオ・アカウンタビリティ・マップ(ガーナ)
世界チョコレート成績表(2022年)
世界チョコレート成績表(2021年)
チョコレートについての基本情報(JATAN作成)

高解像度の写真をダウンロードするには、https://www.chocolatescorecard.com/mediaにアクセスしてください。

お問い合わせ先

・榎本肇 cocoa@jatan.org(日本語対応)
・ロジャー・スミス roger@mightyearth.org (英語・日本語対応)

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)について
熱帯林をはじめとした世界の森林の保全のために、森林破壊を招いている日本の木材貿易と木材の浪費社会を改善するための政府、企業、市民の役割を提言し、世界各地の森林について、生物多様性や地域の住民の生活が守られるなど、環境面、社会面において健全な状態にすることを目指しています。

マイティー・アースについて
マイティー・アースは、命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織です。自然のために地球の半分を守り、命が繁栄できる気候を確保することを目標としています。  当組織のチームは、世界に張り巡らされたパーム油、ゴム、カカオ、飼料などのサプライチェーンにおいて森林破壊と気候変動をもたらす汚染を大幅に削減するよう大手企業を説得し、熱帯地方の先住民族や地域住民の生活向上を図ることにより、変革を実現してきました。
ご連絡先:サミュエル・マウター、ロジャー・スミス press@mightyearth.org (日本語対応可)

ビー・スレイバリー・フリー(Be Slavery Free)について
ビー・スレイバリー・フリー(BSF)は、市民団体、コミュニティー、およびその他の組織からなる連盟で、オーストラリア、オランダ、そして世界各地で現代版の奴隷労働の防止、廃止、撤廃に向け活動を行っています。現代版の奴隷労働の防止、撤廃、対策を現地で行ってきた経験があり、特に、サプライチェーンにおける奴隷労働問題に注力し、豪州での現代奴隷法の可決に寄与しました。2007年以降はチョコレート業界との取り組みを行い、カカオ生産における児童労働と奴隷労働の問題への対応を求めてきました。
ご連絡先:ビー・スレイバリー・フリー(オーストラリア)ファズ・キット+61(0)407-931-115(オーストラリア東部標準時)fuzz.kitto@beslaveryfree.com