マレーシア連邦裁判所 暫定的借地権(provisional lease)が発効された土地で先住慣習地(NCR land)は失効と判断

2016年12月、マレーシア連邦裁判所は、先祖伝来の森林についてNCRを主張するサラワクの先住民(ダヤック)に対して不利な裁定を下した。裁判所の裁定によれば一人の判事が反対したものの、先住民には、かれらの生計と文化を支えてきた手付かずの共有林に対する権利がなく、先住民(ダヤック)の先住慣習権(NCR)が適用されるのは、「トゥムダ(耕作地)」に限られ、伝統的なロングハウス周囲の森林エリアには適用されないということだった。先住民側の主張は、ロングハウスの周囲にある「プマカイ・ムノア(共有地)」に対して慣習権が与えられており、コミュニティが所有する、領地内の一次林もそれにふくまれるというものだった。

この裁定はサラワクの先住民にとって壊滅的な打撃となった。現在、サラワク州全体で沸き起こっている数百件もの先住慣習権の主張に対して影響を与えるものとみられている。最後の希望は判事の入れ替えによってこの判決が見直されることである。訴訟においては依然、改善されなければならない余地がある。判決に矛盾があるからである。この場合の矛盾点は、マレーシアをふくむ英連邦の司法制度に適用されている慣習法のひとつ、コモンローの適用範囲についてである。マレーシア以外の英連邦諸国の司法当局は、先住民の慣習は、国家の法律にではなく、コモンローに拠るものと述べている。しかしマレーシアのこの裁判において過半数の判事は、裁判で争われた権利を認める国の法律は存在しないという事実に拠って判断した。先住民側は、コモンローは別の法理であり、こうした状況にも等しく適用される有効な法律であると主張している。

【参考】
Federal Court rules native land cannot be restored after lease conversion