【NGO連続講座】もいよいよ最終回を迎えます。第6回目の講演では『熱帯雨林のポリティカル・エコロジー ― 先住民・資源・グローバリゼーション』を著書にもつ金沢謙太郎さんを講師にお招きします。金沢さんは、森林開発のために疎外を余儀なくされるサラワクの先住民コミュニティが伝統的な生業を追い求めるさまに深い洞察をたたえたまなざしを向け続けている研究者です。前回につづきオンライン(ライブ配信)で開催いたします。
【講師】金沢謙太郎さん/信州大学教員
【講師紹介】
マレーシア・サラワク州の狩猟採集民・プナン人のもとに通い、彼らの森林資源利用について調べる。専門は環境社会学・環境人類学。
主著に
「平和の森―先住民族プナンのイニシアティブ」(『社会的共通資本としての森』, 東京大学出版会 , 2015)、
「熱帯雨林の英雄か国家の敵か:ブルーノ・マンサーとプナン人の闘い」(『マレーシア研究』,6号, 2017)
ほか。
《参考》「環境マインドを現場で体験するゼミ(熱帯雨林)」
【日 時】2021年3月26日(金)18:30~20:30
【開催方法】オンライン会議システムzoom
【参加費】無料
【申込み】申し込みフォームまたはEメール(info[@]jatan.org)よりお申込み下さい。
フォームより3月25日15:00までにお申込みください。お申込みいただいた方に、25日中にメールにてzoom参加用のリンク等をお送りします。
【概要(講演に際して)】
JATAN設立30周年おめでとうございます。これまでの活動を支えてきたスタッフ、ボランティアの方々に心から敬意を表します。
この連続講座1回目の講師を務めたフリージャーナリストの樫田秀樹さんに初めてお目にかかったのは1996年か1997年だった思います。樫田さんのすすめもあり、学生だった私はサラワクキャンペーン委員会に参加しました。当時まだあまり知られていなかったパーム油生産現場の問題について、日本インドネシアNGOネットワークとともに調べて、ブックレットを出しました。
そのころ、サラワクのランビルヒル国立公園では、生物多様性に関する大型の学術調査プロジェクトが動いていました。私はその末端で旅費をいただいていました。プロジェクトの中心は国立公園内での生態学調査でした。現地調査には制約があり、伐採問題などを扱う調査はありませんでしたが、報告書の表紙には木材伐採キャンプや搬出道路の写真が使われていました。私は国立公園から抜け出し、社会調査という名目で、先住民族の村々を訪ねて回りました。そうした中で、報告書の表紙と中味のギャップ、すなわち政治的な背景が抜け落ちたapolitical ecologyでよいのかと自問しました。狩猟採集を生業とするプナン人たちとの出会いがあり、曲がりなりにもポリティカル・エコロジーと題した書を著すことができました。
今でもサラワクの地域研究者からは「金沢さんの研究内容は過激だから命を狙われないように」と注意されます。一方、NGO仲間からは「問題の核心からずれていて、はがゆい研究」と嫌みをいわれます。そうした狭間で揺れながら考えてきたことを、比較的最近の学会報告(下記①②③)を交えて、共有させていただきたいと思います。
① Environmental injustice and social interrelationship: Examples from illegal logging issues of
tropical timber(環境不正義と社会的相互関係:熱帯木材の違法伐採問題の事例)
The 19th International Sociological Association World Congress of Sociology (The Metro Toronto Convention Centre, Canada) 2018(Jul.)での報告
② What protects the primary tropical forest of the Upper Baram River in Sarawak?: Networking, resistance, the Penan(サラワク、バラム河上流域の熱帯原生林を何がまもったのか?ネットワーク、抵抗、プナン人)
The 12th International Conference on Hunting and Gathering Societies (The Universiti Sains Malaysia, Penang, Malaysia) 2018(Jul.)での報告
③「ボルネオ奥地で行う 教養実践ゼミと 学生の反応」
日本熱帯生態学会第29回年次大会 2019(Jun. 15)での報告