持続可能性を謳う2020東京五輪ですが、じっさいにはその施設の建設だけでも大量の熱帯材が使用されています。この問題には多くのメディアが懸念の注視を向けています。いくつかヘッドラインを挙げると…「新国立の建設、熱帯林の木材使用に批判 東京五輪に課題」、「持続可能な五輪を目指して/新国立競技場の木材調達を契機に」、「SDGsの理念はどこへ 使い捨てられた21万枚、五輪建設木材の出所を訪ねた」。
2020年東京五輪競技大会の施設整備で調達されたコンクリート型枠合板は31万枚(2019年5月時点)。そのうち、マレーシア産合板はおよそ8万3000枚でした。2018年に日本に輸入されたマレーシア産合板のうち93パーセントはサラワク産でしたから(「木材建材ウイクリー」2019年3月18日No.2198号)、五輪施設の建設に使われた約7万7000枚の型枠合板はサラワクに由来していたことになります。
近年、国産針葉樹合板(すべて国産材が素材とは限らない)の生産が増えています。その供給量はすでに熱帯材合板をふくむ外国産の輸入量を上回っています。ただ2018年現在でも、日本で使用された合板のうち三枚に一枚の割合で、インドネシア産、サラワク産の熱帯材合板でした。
サラワク州ではいま、行き過ぎた伐採などのため森林資源の枯渇が深刻です。「ビッグ6」と呼ばれる6つの大手伐採会社は海外にどんどん進出しています。リンブナンヒジャウ社や WTK 社はパプア・ニューギニアの熱帯林を皆伐してプランテーションをつくっています。タ・アン社は2005年に豪州タスマニアに進出して、合板素材として州政府から天然林ユーカリの提供を受けています。豪州といえば砂漠のイメージを持たれる方も多いと思いますが、大陸の南端に位置するタスマニア島にはユーカリ原生林と温帯性雨林による壮大な森林パノラマが存在しています。タ・アンに伐採木材が供給される森には絶滅が危惧されているタスマニアン・デビルの生息地やオトメインコが繁殖に使っているエリアがふくまれています。また、多くの五輪関連施設の建設現場で目撃された型枠合板のメーカー、シンヤン社も、タ・アンにつづいてタスマニア進出を企ています。
合板原料の供給先である森林の現場ではいったい何が起こっているのでしょうか? セミナーでは、マレーシアとオーストラリアからレインフォレスト保護のために最前線で活動されている2名の活動家をお招きし、貴重な現地報告をしていただきます。
オリンピックという国際的な祝祭が終わっても熱帯材合板の問題が解決されるわけではありません。日本の住宅や各種施設の建設現場ではコンクリート型枠やフローリングをはじめとするさまざまな建材製品にサラワク産の合板が大量に使用されつづけているからです。また、たくさんのカーボンを吸収・固定してくれる雨林の伐採問題は気候変動の問題とも密接に関わっています。参加される皆さんとともに、熱帯材消費大国の日本がこれから果たすべき役割についても議論ができればと思っています。奮ってご参加ください。
【日 時】
2020年2月18日(火)開場:18:15 開演:18:30 終了(予定):20:30
【会 場】
中央区立環境情報センター 研修室1(定員45名)
《中央区京橋三丁目1番1号 東京スクエアガーデン6階》
東京メトロ銀座線「京橋駅」3番出口直
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」7番出口より徒歩2分
都営浅草線「宝町駅」A4番出口より徒歩2分
JR「東京駅」八重洲南口より徒歩6分
JR「有楽町駅」京橋口より徒歩6分
アクセス
【講演者】
ジェニー・ウェバーさん (ボブ・ブラウン財団キャンペーン・マネージャー)
マテック・ゲラムさん (サラワク・ダヤック・イバン協会)
■ ジェニー・ウェバー(Jenny Weber)さん (ボブ・ブラウン財団キャンペーン・マネージャー)
1988年以来、タスマニアの森林保護のために精力的な活動をおこなっている。2014年、ボブ・ブラウン財団にキャンペーン・マネージャーとして参画。財団ではタスマニアのみならず、豪本土の重要な自然環境を守る仕事に携っている。2014年、二回にわたりマレーシア・サラワク州を訪問。現地の熱帯林保護活動家たち、先住慣習地を守る住民たちとともにキャンペーンをおこなった。2008年にはJATANの招聘により来日。住宅関連企業数社を訪れ、タスマニアの天然林ユーカリ材を基材とする合板製品の不使用を訴えた。同年、ボブ・ブラウン財団環境賞(Environmentalist of the Year Award)を受賞した。
■ マテック・ゲラム(Matek Geram)さん (サラワク・ダヤック・イバン協会)
サラワク・ダヤック・イバン協会(SADIA)のメンバーとして20年近く、マレーシア・サラワク州のクチン、ムカーを拠点に先住慣習地の保護のために精力的な活動をつづけている。活動家としての出発点は、実家のロングハウスがあるクアラ・バリンガン(Kuala Balingian)の森をアブラヤシ農園企業、伐採会社による収奪の手から守った経験にある。GPSの講習会を各地で開催し、先住民コミュニティにマッピングの技法を広めている。農園企業などから度重なる脅迫、警察による逮捕、拘留を経験するも先住慣習地を守る訴訟活動に継続的に取り組んでいる。
【参加費】
無料
【申込み】
申し込みフォームよりお申込み下さい。※定員に達し次第、締め切らさせていただきます。
プランテーション企業による河畔林の破壊(サラワク、バワン河)
シンヤン社コンセッション(サラワク、タタウ)
伐採予定地の老齢樹林(タスマニア、クィーロード)
タ・アン・タスマニア合板工場(スミストン)
新国立競技場建設地(撮影: 2017年5月)
※本セミナーは「公益社団法人 国土緑化推進機構 緑と水の森林ファンド(令和1年度)」助成を受けて開催されます。