昨年7月からのインドネシアの森林火災と煙霧被害。すでに10名を超える犠牲者と50万名以上の呼吸器系疾患を引き起こしている。最悪の影響を受けているのは都会の住民だけではない。「オラン・リンバ」と呼ばれている、スマトラ島のほぼ中央部、ジャンビ州のブキッ ト・ドゥアブラス国立公園周辺で遊動型の狩猟採集を営む森の民たちにとっては、熱帯林の消失はまさに生活基盤の破壊を意味する。国立公園は10年前と比べ、三割も縮小しているという。政府は森林火災の温床となっているアブラヤシ農園などの企業を取り締まることができない。その最大のつけをオラン・リンバが払わされているのだ。
2013年、インドネシアの憲法裁判所は先住民の慣習林を保障する裁定を下したものの、依然、施行がされないまま、企業のコンセッションは維持され、熱帯林の伐採とプランテーションは拡大する一方だ。
国立公園や鳥獣保護区ができるはるか前からオラン・リンバや他の先住民は熱帯林に生活の拠点を築いてきた。「ガーディアン」紙の記事によれば、政府はそうした住民を保護の名のもとに排除する。それでも権利を主張する先住民は逆に起訴され、挙句の果ては犯罪者として刑務所に収監される。読み書きのできない彼らはまた、企業の餌食にもなっているという。土地の権利書に意味も知らされずにサインさせてられてしまうのだという。「ワルシ」というNGOは「スコラ・リンバ」というフリースクールを主宰して、オラン・リンバの子供たちに読み書きなどの教育を提供している。