3月7日、インドネシア、スマトラ島のリアウ州において最初の「村落林(Hutan Desa)」が林業大臣によって承認された。インドネシアの二大紙・パルプ企業、エイプリル社とAPP社の系列会社が持つアカシア植林用のコンセッション地に挟まれるように存在する4,000ヘクタールの村の慣習林に対して、地域住民による自律的な利用を認めた森林利用権の発効をズルキフリ・ハサン林業大臣が公表した。
「村落林」は2008 年、林業大臣規則第49 号(Permenhut P.49/Menhut-II/2008)によってスタートした住民参加型森林管理スキームのひとつである。政府による2012年までの累積目標面積は30万ヘクタールだが、林業省のデータによれば、2013年1月現在の最終登録面積はわずか15,611ヘクタールに過ぎなかった。そんな中、アカシア産業植林とアブラヤシ農園のための土地転換が拡大する一方のリアウ州にあって「村落林」が正式登録された意味は大変大きい。
場所はリアウ州の熱帯泥炭湿地の中核地のひとつ、カンパール半島の南側、セガマイ(Segamai)村とセラプン(Serapung)村が慣習的に利用してきた各々2,000ヘクタールの計4,000ヘクタールの森林である。今回の登録の背景には、企業による土地収奪に焦燥感を募らせてきた住民たちの強い懸念があった。そしてその懸念を「村落林」という形で軽減させた最大の貢献者は、2009年から両村に入って精力的なファシリテーションを積み上げてきたミトラ・インサニ財団(Yayasan Mitra Insani; YMI)だろう。ただしここまでにたどり着く道のりは決して平坦ではなかった。セガマイ村の慣習林については当初、7,532ヘクタールで申請していたものの、地元パララワン県の森林局や県長(Bupati)との折衝の中で2,000ヘクタールにまで妥協せざるを得なかった。また、出口のなかなか見えないロビーイングでは、村にも踏み入れを断れるほど住民側との信頼関係が危うくなった時期もあったと聞いた。
すでにカンパール半島でYMIが「村落林」申請のための活動をはじめている村は、この両村以外にも複数ある。これからYMIの活動は忙しさを増すだろうが、第二、第三の登録例が出てくることを期待したい。
※JATANでは、公益財団法人トヨタ財団および公益信託地球環境日本基金からの助成金を通して、ミトラ・インサニ財団の活動を支援しています。
パルプ用アカシア植林のコンセッション(ピンク)、天然林伐採用コンセッション(イエロー)が多数発効されているカンパール半島。半島の内陸部は深さが20mを超えるドーム状の泥炭層。産業植林には不向きな土地である。
出典: Yayasan Mitra Insani
セラプン村とセガマイ村の「村落林」対象地域(“Proposed Hutan Desa”)。後者の場合、当初申請時の7,532haから
2,000haまでに減じられた。
出典: Yayasan Mitra Insani
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