インドネシアで最も重要なオランウータンの生息地の一部は、アブラヤシと産業植林の開発造成地内に存在している。政府による認可を受けたこれら開発事業者は、農園や植林地の経営のために生物多様を育む生息地を開発することが可能だ。じっさい、そうした破壊的な履歴を持つ原料でつくられる合板などの木材製品が大量に日本の市場に流入している。したがって、森林破壊をともなわないサプライチェーンを望むバイヤーは、国の法的要件を上回るデューデリジェンスをサプライヤーに対して実施しなければならない。インドネシアの非営利組織のサンガ・ブミ・レスタリは、セミナーで森林破壊に関連した製品(木材製品やパーム油)がどのように日本市場に入り込んできているか、また、日本のバイヤー企業がどのようにすれば森林破壊のないサプライチェーンを確保できるのか議論する。
インドネシアとマレーシアの熱帯林は、生物多様性の豊かな低地林でアブラヤシ農園の造成や木材の伐採が行われたため、過去20年間で大幅に減少した。これはインドネシアとマレーシアの生物多様性、特に絶滅危惧種に指定されているオランウータンの個体数に悪影響を及ぼしている。また、季節的な火災や洪水に見舞われ、ランドスケープの劣化が進んでいる。
森林伐採のペースを減らすために、業界ではいくつかの取り組みが始まっている。これは主にパーム油セクターで見られ、NDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation:森林破壊・泥炭・搾取禁止)方針の導入により、森林保全がより重視されるようになり、森林地域の保全と回復のためのプロジェクトが始められている。現在、世界のパーム油のほとんどが精製・取引されているインドネシアとマレーシアでは、精製能力の83%がNDPE調達方針の対象となっていると推定されている。
木材分野では、森林管理協議会(FSC)のような認証制度が、サプライチェーンの透明性と持続可能性を高めようとしている。しかし、特にパルプ・製紙部門では大きな課題が残っている。インドネシアの紙パルプセクターは、アジア・パルプ・アンド・ペーパー(APP)とアジア・パシフィック・リソース・インターナショナル・ホールディングス(APRIL)という2つの大手製紙メーカーに支配されている。APPとAPRILは、それぞれ、シナル・マス(Sinar Mas)とロイヤル・ゴールデン・イーグル(Royal Golden Eagle: RGE)という大財閥企業の傘下にある。
これら二社は、パーム油企業のNDPE方針をほぼ反映した持続可能性コミットメントを掲げているが、重大な例外がひとつある。シナル・マス社と RGE 社は泥炭地での植林地造成を認めている。 全体として、産業植林セクターは持続可能性に関するコミットメントを遵守しているとは言い難い。インドネシアの大手アブラヤシ生産者 21 社のうち、16 社が NDPE 方針にコミットしている。 一方、インドネシアの 21 の産業用植林企業のうち、NDPE に近い持続可能性にコミットしているのは、シナルマス社、RGE 社、丸紅(PT Musi Hutan Persasda)のみである。
こうした動きにもかかわらず、森林破壊に関連する木材やパーム油製品は依然としてサプライチェーンに入り、店頭に並んでいる。製品の多くは、いまだに日本で販売されている。
日本はパーム油の生産国ではないが、日本はインドネシア、マレーシア、シンガポールに次いで4番目に大きな資金をアブラヤシ農園に提供している国である。日本はまた、インドネシアとマレーシアからのパーム油と木材製品の主要なバイヤーであり、とくに合板の需要が大きい。バイオマス政策もパーム油と木材製品の輸入を奨励している。
国際貿易データからの分析によると、2019年から2021年の間に、日本企業はインドネシアから約60万トンのパーム油製品を輸入しており、主要なバイヤーとしては伊藤忠商事、不二製油、三井物産、MCアグリアライアンス(三菱商事の子会社)などが挙げられる。多くの日本企業はインドネシアから合板を購入しており、2020年から2021年にかけてほぼ55万トンの合板が輸出されている。日本からの最大の合板購入企業には、住友林業、伊藤忠建材、双日建材、SMB建材、大建工業などがある。
【日時】
2024年7月5日(金) 16時~18時
【会場】
聖心グローバルプラザブリット記念ホール(メトロ日比谷線広尾駅4番出口から徒歩1分)
アクセス
【プレゼン形式】
インドネシアのゲストスピーカー2名によるプレゼンテーション(オンラインによるハイブリッド形式を併用)逐次通訳(英語-日本語)が入ります。
【お申込みフォーム】ご登録フォーム ※ご参加が対面、オンラインのいずれかをご選択ください。
【参加費無料】
【プログラム】
■趣旨説明 熱帯林行動ネットワーク
■サンガ・ブミ・レスタリによるプレゼン
≪演題≫「日本市場に流入する高リスク木材製品・パーム油」
■質疑応答
主催:熱帯林行動ネットワーク
協力:聖心女子大学グローバル共生研究所、地球・人間環境フォーラム、
アーユス仏教国際協力ネットワーク、Mighty Earth
助成:パタゴニア環境助成金プログラム
報告者プロフィール
クリス・ウィッグスさん (Chris Wiggs)
霊長類研究者。2017 年にAidEnvironment Asiaに加入する前は、インドネシアの西カリマンタンのオランウータン保護団体で働き、アブラヤシ農園内のオランウータンの生息地やその他の保護地域での保護のために活動。現在はSangga Bumi Lestari のエグゼクティブ・ディレクターとして、インドネシアの林業と農業部門の持続可能性を向上させ、カリマンタンの森林を保全・回復・維持するプロジェクトにも専門的知見を使って貢献している。
オキタ・ミラニングラム・ヌル・アツァリさん (Okita Miraningrum Nur Atsari)
スウェーデンのチャルマース工科大学で産業生態学の修士号を取得。Sangga Bumi Lestariではインドネシアのパーム油セクターおよび木材部門の調査を担当し、企業やその他の主要な業界関係者とのエンゲージメントを主導。特に、アブラヤシと森林の利権を管理する企業を特定し、森林のランドバンク、所有権構造、他の企業とのつながり、サプライチェーンをマッピングすることに重点を置いている。彼女はまた、林業と農業部門の重要なトレンド、特に政府の規制がさまざまな部門の土地利用にどのような影響を与えるかについても研究している。
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