インドネシアで最も重要なオランウータンの生息地の一部は、アブラヤシとパルプ用植林の開発造成地内に存在しています。オランウータンが野生で生存可能な種として生き残るためには、事業地内のオランウータンの生息地を保護し、近隣の生息地とのコリドーを確保する必要があります。インドネシアの非営利組織サンガ・ブミ・レスタリは、西カリマンタンのプランテーション事業地が支配するランドスケープにおいて、そのような生息地の確保に州政府、大学、企業と連携して取り組んでいます。サンガ・ブミ・レスタリは報告会において、西カリマンタンの伐採許可地とその周辺で、どのように重要な生息地を保護できるかを実例とともに示し、インドネシアのオランウータンの将来について説明します。
インドネシアに生息する三種のオランウータン(カリマンタンのPongo pygmaeus、スマトラのPongo abeliiとPongo tapanuliensis)はすべて、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に分類されています。狩猟、違法なペット取引、生息地の農地・植林地・鉱山事業地への転換の結果、すべての個体数が著しく減少し、生息地が分断されています。
低地熱帯林のアブラヤシ農園や産業植林への転換は深刻で、現存する最も重要なオランウータンの生息地の一部は、現在、企業の事業地内にあります。2021年、インドネシアのNGOサンガ・ブミ・レスタリ(Sangga Bumi Lestari)とオランダの非営利団体エイドエンバイロメント(AidEnvironment)は、事業の許可地内にオランウータンがどれだけ生息し、どのエリアに最も生息地が多いか、そしてオランウータン保護への長期的な影響について、最新のデータを発表しました。
両団体の調査によると、インドネシア国内には森林に覆われたオランウータンの生息地が14,110,153ヘクタール残されているものの、そのうち保護区の境界内にあるのは3,456,191ヘクタール(24%)に過ぎず、そのほぼ二倍にあたる6,219,661ヘクタール(44%)が、企業のアブラヤシ農園、木材伐採などの事業地の中にあることが判明しました。セクター別に見ると、4,757,727ヘクタール(34%)が天然林伐採地、563,282ヘクタール(4%)がアブラヤシ農園の造成地内にありました。
過去20年間、インドネシアではパーム油生産のアブラヤシ産業に多くの懸念が寄せられてきました。しかし、分析によると、オランウータンの生息地に最も大きな影響を与えているのは木材関連のセクターです。オランウータンの生息地は択伐用の伐採事業地にも多く見られますが、このセクターでは厳しい要件と森林の樹冠被覆の維持が重視されているため、オランウータンは択伐伐採地でも生き残ることができます。これに比べ、産業造林セクターでは、アカシアなどのパルプ材用の単一早生樹を植林するために自然林が皆伐されるためオランウータンにとって最大の脅威となっています。
伐採許可地内にオランウータンの生息地が最も多く存在する三つのパルプ用の伐採許可地は、それぞれインドネシアのオランウータンにとって最も重要な三つのランドスケープに位置しています。西カリマンタンのメンダワク(Mendawak)にあるマヤワナ・ペルサダ社(PT Mayawana Persada)、中央カリマンタンのカハヤン・カプアス(Kahayan-Kapuas)にあるインダストリアル・フォレスト・プランテーション社(PT Industrial Forest Plantation)、そして中央カリマンタンのルンガン河(Rungan River)にあるタイヨン・エングリーン社(PT Taiyoung Engreen)です。マヤワナ・ペルサダ社とインダストリアル・フォレスト・プランテーション社は、インドネシアの最大の天然林伐採業者です。これらの土地に生息するオランウータンは深刻な危機にさらされています。
保護地域外でオランウータンが生き残るためには、伐採権所有者は伐採権内の広いエリアで森林保護プログラムを実施しなければなりません。もしそうしなければ、オランウータンの生息地はますます分断され、その結果、ますます孤立し、生き残りが不可能となるでしょう。
【日時】
2024年7月2日(火) 18時~20時
【会場】
東京ウィメンズプラザ視聴覚室(東京都渋谷区神宮前5-53-67)
※(地下鉄の場合)メトロ銀座線、半蔵門線、千代田線の表参道駅下車、B2出口を出て直進、右側のオーバルビルと国連大学の間を入り、右手のビル。徒歩約7分
交通アクセス https://www.twp.metro.tokyo.lg.jp/outline/tabid/136/Default.aspx
【お申込み】ご登録フォーム(クリックしてください)
※オンライン参加も可能になりました。参加方法をお選びください。
【参加費無料】
【プログラム】※逐次通訳(英語-日本語)が入ります
●趣旨説明 熱帯林行動ネットワーク
●サンガ・ブミ・レスタリによる報告
≪演題:インドネシアの熱帯林開発が脅かすボルネオ・オランウータンの生息地≫
●質疑応答
主催:熱帯林行動ネットワーク
協力:地球・人間環境フォーラム、Mighty Earth
助成:パタゴニア環境助成金プログラム
報告者プロフィール:
クリス・ウィッグスさん (Chris Wiggs)
霊長類研究者。2017 年にAidEnvironment Asiaに加入する前は、インドネシアの西カリマンタンのオランウータン保護団体で働き、アブラヤシ農園内のオランウータンの生息地やその他の保護地域での保護のために活動。現在はSangga Bumi Lestari のエグゼクティブ・ディレクターとして、インドネシアの林業と農業部門の持続可能性を向上させ、カリマンタンの森林を保全・回復・維持するプロジェクトにも専門的知見を使って貢献している。
オキタ・ミラニングラム・ヌル・アツァリさん (Okita Miraningrum Nur Atsari)
スウェーデンのチャルマース工科大学で産業生態学の修士号を取得。Sangga Bumi Lestari ではインドネシアのパーム油セクターおよび木材部門の調査を担当し、企業やその他の主要な業界関係者とのエンゲージメントを主導。特に、アブラヤシと森林の利権を管理する企業を特定し、森林のランドバンク、所有権構造、他の企業とのつながり、サプライチェーンをマッピングすることに重点を置いている。彼女はまた、林業と農業部門の重要なトレンド、特に政府の規制がさまざまな部門の土地利用にどのような影響を与えるかについても研究している。
お問合せ
JATANの窓口メール info[α]jatan.org に「7/2(火)緊急報告会」の件名で、ご氏名、連絡先等を添えてご連絡ください。なお、送信時に [α]を@に置き換えて下さい。
「緊急報告会」後、引き続き、熱帯林行動ネットワークの2023年度会員の集い(総会)を併せて開催します。会員のみなさまにはこちらにもご参加ください。(20時40分終了予定)
【参考ビデオ】
CNN Indonesia: MELAWAN PENJAGAL HUTAN KALIMANTAN(カリマンタンの森の虐殺者たちとの戦い)
(註)ビデオ後半で企業事業地内に生息するオランウータンの窮状が描かれています。
【参考画像】