2020年東京オリンピックの不祥事疑惑

2020年東京オリンピックの不祥事疑惑
熱帯林破壊や人権侵害のないオリンピックを求めて
世界中の日本大使館に14万を超える署名が届けられる

マレーシアのサラワク州と、東京の新国立競技場建設現場でバナーによる抗議

【東京、ベルン(スイス)、ベルリン(ドイツ)、ミリ(マレーシア)】
今週、世界中の活動家たちが東京で新しいオリンピック施設を建設するための熱帯材使用を直ちに停止するよう求める抗議活動を行っています。水曜日、スイスとドイツの日本大使館に、日本政府の緊急行動を呼びかける14万件以上の請願署名が届けられました。これは、人権侵害、違法伐採、熱帯林破壊に関与を続けてきたマレーシアのサラワク州の伐採会社であるシンヤン社(Shin Yang)から供給された熱帯材を日本政府が使用しているという証拠に対して行われたものです。 市民団体は、東京オリンピック調達政策の見直しと、オリンピック施設建設に使用されている熱帯材の合法性と持続可能性の徹底的な調査を求めています。

2017年4月3日、サラワクの伐採会社シンヤン社が提供する熱帯材合板が、東京の新国立競技場建設でコンクリートを成形するために使用されていることがわかりました[1]。4月27日、日本の当局は、建設現場で確認された合板が実際にシンヤン社製であることを認め、サラワクのビンツルにあるシンヤン社の合板工場からのものであることが明らかになりました。

請願署名の提出にも協力したサラワク州のロング・サイート村長であった先住民プナン族のビロン・オヨイ(Bilong Oyoi)は、オリンピック会場の建設現場で使用されているシンヤン社からの、また他のサラワク由来の可能性がある熱帯材合板に大きな懸念を抱いています。「プナン民族から日本の各当局にメッセージを伝えたい。サラワクでは、私たちの森林は伐採され続けており、木はほとんど残っていません。 まだ熱帯林に残っているものを守る私たちを助けてください」。

ドイツで請願署名を届けたレインフォレスト・レスキューのマティアス・リットゲロット(Mathias Rittgerott)は、「オリンピックは『フェアプレイ』と『一堂に会する世界の青年』と表現されています。 現実には、サラワクの先住民族の人権と環境はオリンピックによって脅かされています。サラワクの熱帯材をオリンピック施設の建設現場に使用することは、たたえられることではありません」。

請願署名者は、東京オリンピックの会場建設に熱帯材を使用しないことと、木材について合法性、持続可能性、人権に関して厳格で拘束力を持った基準を導入することを求めています。スイスの日本大使館に請願署名を提出したブルーノ・マンサー基金のアニーナ・エベリ氏は、「日本の当局と国際オリンピック委員会(IOC)は、人権侵害、環境破壊、法律違反の背景を持つ木材は建設現場において利用されないことを確保するよう直ちに措置を取る必要があります。」と述べています。

水曜日には、マレーシアのサラワク州ミリにあるシンヤン事務所の前で活動家グループが抗議を行いました。5月8日に東京では新国立競技場の建設現場で日本のNGOが抗議活動を行いました。熱帯林行動ネットワークの原田公(あきら)は「当局は、この容認し難い状況のグリーン・ウォッシュを行っていますが、サラワクでの人権を蝕み、熱帯林を消滅させる上で私たちの国が果たす役割に関して、高まっている懸念を日本国内にリレーでつなげました」と述べました。

今日まで、日本政府による熱帯林破壊、違法伐採、人権侵害に関連するリスクへの取り組みは不十分でした。日本の建設で使用されているほとんどのコンクリート型枠合板は、熱帯材で作られており、その圧倒的多数がマレーシア・サラワク州とインドネシアを供給源としています。サラワク州は世界で森林減少率が最も高く、各種調査により木材事業の腐敗行為や違法伐採のリスクが明らかになっています。 シンヤン社は、日本へのコンクリート型枠合板の主要サプライヤーであり、特に「ハート・オブ・ボルネオ」と呼ばれる国境付近の保護地域での非持続的な伐採の継続、地元コミュニティの権利の侵害、違法伐採で知られています[2]。

日本のオリンピック当局は、シンヤン社製合板の使用についてPEFC認証であるので問題はないと主張していますが、環境団体は、由来に問題のある木材が混入している可能性があることを指摘しました。ビンツルにあるシンヤン社の合板工場には、シンヤン社がいくつかのプナン民族の先住民族コミュニティに対して人権侵害を犯している地域からの木材も供給されています[3]。

さらに活動家たちは、東京オリンピック組織委員会の木材調達基準は、熱帯林破壊、違法伐採、先住民族の権利侵害に関連した木材使用のリスクを軽減するのに適切でないと主張しています[4] 。特に、別の現場で使用された型枠パネルが新競技場に持ち込まれると、環境面での持続可能性と人権に関する要求項目を満たす必要がなくなることに注目しています[5] 。「この基準では持続不可能な熱帯材であっても、問題のないものへのロンダリングが可能となっています。オリンピック施設の建設には、サラワク産合板のようにリスクの高いものの代わりに低リスクの国産材を使うべきでしょう」とレインフォレスト・アクション・ネットワークの川上豊幸は述べています。

2016年12月に、40以上の市民団体がIOCと日本の当局に対し、サラワクとインドネシアの木材製品の使用に伴うリスクについて警告していました[6]。

注:
[1] メディアリリースを参照:「熱帯林の破壊及び人権侵害につながる疑いのある合板の使用について緊急の調査を要請 新国立競技場建設で」(2017年4月20日)http://ranjapan.wpengine.com/?p=1032
[2] 一例として以下を参照:グローバル・ウィットネス 「マレーシアの熱帯雨林破壊と日本:持続可能な2020年オリンピック東京大会へのリスク」(2015年12月) https://www.globalwitness.org/ru/reports/shinyang/
[3] ビンツルにあるシンヤン社の合板工場は、人権侵害と関連し、先住民族コミュニティによる進行中の土地所有権侵害に関する訴訟の対象であるLPF / 0018の木材許可証対象地から原料を調達している。 PEFCでは認証ラベル利用には原料の70%が認証された供給源からの由来であることを要求している。次を参照:ビンツル工場のCoCに関するGlobal Forestry Registryによるレポート; SUHAKAM(マレーシア人権委員会)「Report On Penan In Ulu Belaga: Right To Land And Socio- Economic Development」(2007年); PEFC の認証事業体: (以上すべて英文); グローバル・ウィットネスの前掲文書
[4]国際オリンピック委員会への公開書簡「東京2020オリンピックのための違法かつ持続不可能な熱帯材使用のリスク」(2016年12月6日)を参照。
[5]公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会「持続可能性に配慮した木材の調達基準」 (註:組織委員会解散のため現在は閲覧できません)
[6] 国際オリンピック委員会への公開書簡(前掲)

プレスリリース(仮訳) 2017年5月10日 2020 年東京オリンピックの不祥事疑惑