2014年12月22日
日本製紙株式会社
代表取締役社長 馬城 文雄 様
熱帯林行動ネットワーク
事務局長 原田 公
日本製紙株式会社による豪州ニューサウスウェールズ州での
生物多様性価値を脅かす調達について
拝啓
時下、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
以下に署名した団体を代表して、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州での日本製紙株式会社と、その子会社であるサウス・イースト・ファイバー・エクスポート(SEFE)社による、コアラを含む野生動物の生息地である天然林からの継続的な木材調達について、私たちの深い懸念をこの書簡にてお伝えいたします。
SEFE社は、天然林の木材をチップにし、主に貴社の工場に供給するために、伐採業者と契約しています。イーデン地域での伐採施業を承認するためには、法律上SEFE社の代表者が署名しなければなりません。これがなければ、伐採は行えないのです。SEFE社に供給されている、この地域の天然林は、オニアオバズク、ススイロメンフクロウ、オトメインコ、オオフクロモモンガ、オオフクロネコのような絶滅危惧種を含め、森を棲家とする多くの野生動物の生息地です。最もよく知られているのは、かつてはこの地域に多く生息していたコアラです。長年にわたる木材チップ事業を経て、現在では貴重な存在となっています。ニューサウスウェールズ州において、1992年にまず「希少・危急種(Rare and Vulnerable)」として登録され、絶滅危惧種保全法(1995)の下で「危急種(Vulnerable)」として再確認されました。
2012年には、オーストラリア連邦政府もコアラを「危急種」として登録しました。しかし、地域森林協定(RFA)の対象となる地域は、環境保護と生物多様性保全法のような連邦の絶滅危惧種法から除外されており、州有林に住むコアラを助けることにはなりません。代わりに、連邦政府と州政府間での地域森林協定の下では、1999年以降、絶滅危惧種の保護を想定した伐採のためのルールやガイドライン(統合林業実施合意-IFOAs)が存在します 。これらのルールは、論争の的となり、多くの環境キャンペーンや法的異議申し立ての対象となっており、専門家は、それらのルールは十分に実施されておらず、有効でもないと主張しています 。
州政府でさえ、このルールは機能していないと認めています。2014年初頭、伐採ルールを見直すことが発表され、州政府も、IFOAが失敗であり、野生動物を保護しているかどうかも不明であることを認めています 。また、ルールが実施可能でないことも認めています。
イーデン地域のコアラにとって、今後、法律となるIFOAシステムの変更提案は、状況を悪化しかねません。州政府は、コアラの生息地となる森林の大半で、伐採前に実施すべき調査をもはや要求しないとしています。
最近、SEFE社が雇った業者が、伐採作業中にウォンバットを生きたまま埋めたことで、国際的に大きな非難を浴びました。ウォンバットは、コアラに最も近い近縁種で、森の巣穴に住んでいます。ウォンバットは、絶滅危惧種として登録されていないので、伐採事業での残酷な行為や死から、ウォンバットを守るルールはありません。ニューサウスウェールズ州政府は、もしも、彼らの巣穴がブルドーザーや他の伐採機械で塞がれると、ウォンバットが生き抜くことはできないことを認めています。
SEFE社の契約業者が行なった伐採によるコアラを含む野生動物の生息地の破壊は、貴社の「原料調達に関する理念と基本方針」で述べている「生物多様性の保全」が持続可能な森林管理の重要な構成要因であるとの主張と矛盾しています。
現在の状況の下では、これらの天然林に依存しているウォンバットや危急種であるコアラ、他の野生動物種へのさらなる被害を確実に避けるために有効な唯一の方法は、この天然林からの原料製品の購入を停止することです。
貴社の調達方針に従い、SEFE社からの木材チップを、紙製品の原料としないで下さい。
敬具
署名団体
熱帯林行動ネットワーク
ナマケモノ倶楽部
Bega Environment Network Inc.
Chipbusters
Chipstop Campaign
Environment East Gippsland
Forest Media
South East Region Conservation Alliance (SERCA) Inc.
World Temperate Rainforest Network, Pat Rasmussen, Coordinator.
Wombat Protection Society
PDF版ファイルは以下よりダウンロード可能です。
「日本製紙株式会社による豪州ニューサウスウェールズ州での生物多様性価値を脅かす調達について」(日本語)
「On NPI’s procurement threatening biodiversity values in NSW, Australia」(English)