12月13日、豪州タスマニアの原生林の樹上から「監視の樹」と名づけられた新しいキャンペーンが始まりました。地元の保護団体、Still Wild Still Threatenedのメンバー、ミランダ・ギブソン(Miranda Gibson)さんが、州の林業セクターであるタスマニア林業公社による伐採施業が行われている原生林地区、マウント・ミューラーの高木ユーカリ、地上60メートルの樹上から画像、ハンディカムなどのハイテクを使い、世界中に「監視」の模様を発信しています。
今年8月、連邦政府のジュリア・ギラード首相はタスマニアの保護価値の高い森林43万haの保護を公約しました。しかし、林業公社はこの公約を履行しないどころか、保護の推奨地内で皆伐と伐採道路の敷設をすすめています。豪州緑の党の党首のボブ・ブラウン上院議員はララ・ギディングス州知事もギラード首相も、皆伐を黙認することで彼ら自身の公約を反故にしようとしていると怒りの声明を出しています。「二人の約束は、私に言わせれば違法伐採でまさに「皆伐」されようとしている。この合意が法的拘束力を持つ以上、いまの伐採は違法と呼ぶしかないのだから」。
ギブソンさんが「監視」する樹は、両政府首脳が「早急なる保護」を約束した43万haの一角にあり、彼女のハンディカムが大型のハーベスタがユーカリ老齢林を伐倒する様子が克明に捉えています。地上17階に相当する高さから映された大型機械の動きはまるでゲームセンターのクレーンゲームのように見えます。しかしこのアームが実際に掴んでいるのはタスマニアン・デビルなど稀少種野生動物に棲み処を提供する古樹ばかりです。ギブソンさんの監視日記にはクリスマス休暇はありません。
林業公社は今年末までに、「監視の樹」一帯を含む20を超える伐採予定地で施業を終える計画です。「監視の樹」のある場所もTN044Bというコード名をもつ伐採地で、12日から施業がはじまっています。ここから伐出されたユーカリの天然木はヒューオン地区のタ・アン・タスマニア(Ta Ann Tasmania)の単板加工工場に運ばれます。単板はさらにマレーシア・サラワクにあるタ・アン本社工場でフローリング材用の合板に加工されます。その9割の行き先は日本の市場です。
彼女が毎日書き込むブログにはテントを「訪問」する昆虫や対岸の渓谷から聞こえてくる鳥の鳴き声など、何気ない「日常」の描写もつづられ、手付かずの自然と眼下で起こっている破壊とのコントラストを一層引き立たせています。「これまでとはちがうアプローチです」とギブソンさんは言います。「わたしたちの大きな懸念のひとつは、(タスマニアの)森がすでに保護されているという誤解があることなんです」。
現在、タスマニアの森林で起こっていることは日本の住宅用建材の消費のあり方と密接につながっています。みなさんからもギブソンさんに応援のメッセージを送ってあげてください。
【参考】熱帯林行動ネットワーク オブザーバー・ツリー(監視の樹)を訪問