【プレスリリース】パーム油を利用する日本企業の取組状況を評価する「パーム油企業格付け2024年実績」を発表

プレスリリース
2025年10月1日

プランテーション・ウォッチ事務局
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)

プランテーション・ウォッチ(注1)は、本日、「企業格付け2024年実績」を発表しました。本評価は、2016年より実施しているアンケート調査に基づいており、プランテーション・ウォッチ独自の基準により企業の取組状況を比較したものです。パーム油を利用する主要な8つの業界(注2)について、これらの業界における売上上位の企業を対象としています。

9回目となる2024年度のアンケート調査では、対象とした77社のうち40社(全体の52%)から回答が得られました。残りの37社からは、残念ながら回答はありませんでした。総評としては、森林問題に対処するためのグローバル・スタンダードであるNDPE方針(注3)を採用していると回答した企業(B-評価以上)は、14社(全体の18%)でした。また、ミルリスト(搾油工場リスト)を公表していると回答した企業は、15社(全体の19%)でした。その一方で、これまでと同様に、小売業界、パン業界、外食産業については、アンケート調査への回答率が低く(それぞれ10社中1社、8社中1社、8社中2社)、パーム油の環境社会問題に対する意識の低さを露呈する結果となりました。

評価結果と総評

以下は、2024年度にアンケート調査の対象とした77社に占める、それぞれの評価の内訳です。もっとも高いA-評価を取得したのが1社、B+評価が2社、B評価が7社、B-評価が4社、C評価が20社、D評価が6社という結果でした。37社(48%)からは回答がありませんでした。

回答のあった企業の中では、B+評価に位置している企業とC評価に位置している企業の比率が特に多い結果となりました。前者のB+評価は、すでにNDPE方針やミルリスト(搾油工場リスト)を公表し、是正措置の要求や取引の停止などの規定を通じてリスクを排除しようとしている段階です。後者のC評価は、パーム油に適用される調達方針を持ち、RSPO認証油を調達しているが、まだ完全なNDPE方針の公表には至っていない段階です。

この評価の中で、B-評価の「NDPE方針の採用」とB評価の「ミルリスト(搾油工場)の公表」は、パーム油の生産国での問題に対処するために特に重要であると考えています。私たちとしては、RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)をはじめとする認証制度に頼るだけでは、パーム油の生産国で起きている環境・社会問題に十分に対応することができないと考えているためです。RSPO認証油であっても、認証油のほとんどを占めるマス・バランス(Mass Balance)方式では、独立した第三者による確認がされていないリスクのあるパーム油が混入するリスクがあります。そのため、パーム油の調達におけるNDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ)を明記した調達方針を策定し、搾油工場や農園までのサプライチェーンを開示した上で、NGOを含むより広範囲な情報収集を通じて生産国でのリスクを特定・対処することが重要であると考えています。サプライチェーンの確認は、自社が調達・利用しているパーム油が現地での問題に関与しているかどうか特定するために必要不可欠です。

業界別に見ると、特に油脂、総合商社、お菓子、インスタント食品が全体として取り組みを進めていることが見てとれます。その一方で、これまでと同様に、小売業界、パン業界、外食産業については、アンケート調査への回答率が低く(それぞれ10社中1社、8社中1社、8社中2社)、パーム油の環境社会問題に対する意識の低さを露呈する結果となりました。

評価方法について

プランテーション・ウォッチが定めた評価基準にもとづき、A〜Dまでのアルファベットでそれぞれの企業の進捗状況をスコアリングしています。それぞれの評価基準には段階を設けており、到達しているところまでの基準を最終的な評価としています。例えば、B+の基準を満たしていたとしても、Bの基準を満たしていなければ最終的な評価(到達点)はB評価となります。

評価方法については、基本的には企業からの回答をそのまま採用していますが、私たちが重要であると考えている項目(NDPE方針の採用とミルリストの公表)については、いただいた回答をもとにプランテーション・ウォッチとして判断しております。例えば、NDPE方針に関する問5.3については「明記されているものを選択してください」という質問であるため、企業の調達方針の中に「環境や人権に配慮する」などの表現ではなく、「森林破壊、泥炭湿地、強制労働・児童労働、先住民族の権利」などが明記されている場合にのみ基準を満たしていると判断させていただきました。

注1)プランテーション・ウォッチは、以下の7団体が協働して、熱帯地域での単一作物の大規模栽培が抱える問題について情報提供し、責任ある原料調達を目指す取り組みを支援するNGOネットワークです。
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)、地球・人間環境フォーラム、ウータン・森と生活を考える会、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表部、国際環境NGO FoE Japan、サラワク・キャンペーン委員会(SCC)、メコン・ウォッチ
https://plantation-watch.jp

注2)菓子会社:15社、インスタント食品会社:10社、食料品販売会社:11社、パン会社:8社、外食サービス会社:8社、日用品会社:7社、油脂会社:13社、総合商社:5社

注3)NDPE(森林破壊ゼロ、泥炭地破壊ゼロ、搾取ゼロ)方針では、森林減少禁止のために、保護価値の高い森林や高炭素貯留林の転換禁止、火入れ禁止、泥炭地開発禁止に加えて、労働権や土地権の尊重などを含んでいる。https://japan.ran.org/wp-content/uploads/2023/10/JP-NDPE-briefing.pdf

免責条項について
この評価は2025年1月〜3月に実施したアンケート調査の回答に基づいています。本プレスリリース発表時までに、企業の取り組みに変化が生じている可能性があります。

お問い合わせ
プランテーション・ウォッチ事務局
熱帯林行動ネットワーク(担当:中司、吉田)
Email:jatan.office[@]gmail.com