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丸紅・MHP社に質問状を送付 (チャワン・グミリール集落強制排除問題)

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)は国内およびインドネシアのNGO、大学研究者との連名で「元チャワングミリール集落住民への代替地の提供等に関する公開質問状」を丸紅、ムシ・フタン・ペルサダ社(PT. Musi Hutan Persada, MHP)の代表取締役社長宛に送付しました。

2021年6月21日付でわたしたちが送付した 「元チャワングミリール集落住民の生活再建のための支援にかかる要望書」については、丸紅サステナビリティ推進部の担当者よりメールによる回答を受け取りました(下記「質問状」参照)。ただ、その内容は具体性を欠き、わたしたちの求めに十分応じるようなものではありませんでした。

この8月にムアラエニム県スギハン村においてMHP社が住民の農地を重機で破壊するという報道が地元のメディアからなされています。今回の「質問状」でわたしたちは、先の「要望書」回答に対するより具体的な説明を求めるとともに、地域住民とのあいだで引き続き、暴力による紛争を生じさせているMHP社の姿勢を問うています。

質問状本文は以下の通りです。

「質問状」(PDF)
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丸紅株式会社
代表取締役社長 柿木 真澄 様
PT. Musi Hutan Persada
代表取締役社長 中林 靖治 様

元チャワングミリール集落住民への代替地の提供等に関する公開質問状

時下、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

2021 年6 月21 日付で私どもが送付した「元チャワングミリール集落住民の生活再建のための支援にかかる要望書」(以下、「要望書」)に対して、2021 年8 月10 日、丸紅株式会社サステナビリティ推進部の担当者様から以下のご回答をメールでいただきました。

  当社社長及び当社事業会社PT Musi Hutan Persada(MHP)社社長宛に頂きました2021年6⽉21 日付、
  「元チャワングミリール集落住民の生活再建のための支援にかかる要望書」につき、下記にてご返答
  申し上げます。

  MHP 社にて各ステークホルダー(現地住民、現地 NGO、監督官庁)と協議を続けてまいりましたが、
  政府指導のもと、代替候補地の選定、政府への返還を完了しており、同代替地の元住民への提供等に
  つきましては、政府主導で手続きが進められていると理解しております。

  引き続き当社といたしましても経過を見守ってまいりたく考えております。
  
  以上、宜しくお願い申し上げます。

ご回答を送っていただき、ありがとうございました。このご回答に関連して、以下の点について教えていただきたく存じます。

1. 「要望書」では、元チャワングミリール集落住民のチャワンへの帰還の可能性について検討していただくよう要望しました。この点について検討が行われたのか、行われたとすればそれがどのように行われたのか、また、どういった理由でチャワンへの帰還ではなく代替地を提供するという判断に至ったのか、教えていただけないでしょうか。

2. ご回答では、「代替候補地」の選定とその土地の政府への返還が完了したとあります。また、インドネシアのメディア「Liputan 6」の7 月16 日付の記事によると、MHP 社職員の発言として、チャワングミリール集落住民の移転先候補のひとつとしてMHP社はTerasと呼ばれる385ヘクタールの居住に適した土地について議論をしている、とあります。この土地が、ご回答にあった「代替候補地」のことを指すのでしょうか。「代替候補地」の位置、それが含まれる行政区の名前(どの村に含まれる/隣接する土地なのか)、面積を教えてください。

3. 「代替候補地」の選定は誰がどのように行ったのか、また、その選定プロセスにおいて、元チャワングミリール集落住民や彼らの支援をおこなってきた「インドネシア環境フォーラム・南スマトラ(WALHI Sumsel)」への事前の情報提供や相談が行われたかについて教えてください。

4. 代替地の提供にかかる今後の手続きは、政府主導で進められると理解している、とご回答に書かれています。今後の代替地提供のプロセスに、御社および MHP 社はどのような形で関わるご予定でしょうか。そのプロセスにおいては、チャワングミリール集落住民を代表する組織であるチャワン森林農民組合(Kelompok Tani Hutan Cawang)の参加はもちろんのこと、住民から信頼を得ている「インドネシア環境フォーラム・南スマトラ(WALHI Sumsel)」のようなNGO がそのプロセスをファシリテート(側面支援)することが必要であると考えます。この点について、御社としてどのような対応を考えていらっしゃるか教えていただけないでしょうか。

5. 「要望書」では、強制排除によって破壊された地上物への補償を行うよう要望しました。この点について、インドネシア環境フォーラム・南スマトラからは、強制排除で破壊された地上物には、住民の家屋や農地のみならず集落の公共施設(学校など)が含まれており、これらに対する補償も必要であるとの意見や、物的な被害だけでなく強制排除が住民にもたらした精神的被害についても補償をすべきであるとの意見が寄せられています。御社の「丸紅グループ人権基本方針」では、「丸紅グループのビジネス活動が、人権に対する負の影響を引き起こした、あるいは関与したことが報告される仕組み(苦情処理メカニズム)を構築します。その仕組みを通じて、当該影響・関与があったと判断した場合には、十分な事実確認を行った上で、適切な手続きを通じてその救済に取り組みます」と述べられています。この「苦情処理メカニズム」を通じて、元チャワングミリール住民への補償を真剣に検討していただきたいと私たちは考えます。この点について、御社として今後どのような対応を考えていらっしゃるか教えてください。

6. インドネシア国営通信(ANTARA)は、「要望書」へのご回答をいただいて間もない今年8月14 日、ムアラエニム県スギハン村住民が十数年以上前からゴム園及びアブラヤシ園として利用してきた土地約 15 ヘクタールをMHP 社が重機で破壊したと報じています。御社の子会社が事業地確保のために、このような抑圧的で強硬な手段を再び採られたことに対して私たちは強い遺憾の念を抱いています。御社が定めている「丸紅グループ人権基本方針」では,「人権を侵害しないこと」、および、「本方針に沿った取り組みの推進において、関連するステークホルダーとの対話と協議を真摯に行」うことが謳われています。これらの方針に照らして考えた時、今回の強制排除はどのような理由で正当化できるのでしょうか。御社のお考えを教えてください。

7. 今後、MHP 社の事業地において、農業その他の活動を行ってきた住民と、MHP 社とのあいだで土地をめぐる問題が起きた場合、御社が定めている「丸紅グループ人権基本方針」の理念に従って、抑圧的で強硬な手段ではなく、対話を通じて問題を解決していただきたいと考えます。この点について、御社がどのようにお考えか、教えてください。

上記の点について文書でご回答いただきたく存じます。
よろしくお願い申し上げます。

2021 年9 月13 日

インドネシア環境フォーラム・南スマトラ(WALHI Sumatra Selatan)代表 Hairul Sobri Eep
国際環境NGO FoE Japan 理事 三柴淳一
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)代表 原田公
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)運営委員 川上豊幸、中司喬之
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)事務局長 佐伯奈津子
北海道大学大学院文学研究院 教員 笹岡正俊

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【参考】
プレスリリース「インドネシア・南スマトラ:丸紅およびMHP社に対する要望書を提出」(2021年06月30日掲載)

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