出光ボガブライと隣接のホワイトヘイヴン鉱山事業地で現地の住民、NGO、先住民などから成る広範なグループが抗議行動を活発化させている。
ボガブライでは9日の日曜から、ボックスガム老齢樹の樹上で活動家が伐採阻止のために抗議のツリー・シッティング(tree sitting)を開始。12日現在も、続行中である。
出光による拡張予定サイト一帯には、連邦政府の環境・生物多様性保護法(EPBC)により絶滅危惧種(critically endangered: CE)に指定されている“White Box Yellow Box Red Gum Grassy Woodland”というボックスガムの自生地が分布している。拡張事業では624ヘクタールにも及ぶボックスガムの森林エリアが皆伐される。犠牲となるのはボックスガムだけではない。森林に生息するコアラやミミナガコウモリといった27種の危惧種野生生物が脅威に晒されることになる。
出光は代償用地(オフセット)として用意する対象地の生態系について第三者アセスメントの結果を環境大臣に提出しなければならなかったが、その評価にはボックスガムの検討がなされていないという。現地の活動家であり生態学者でもあるフィリップ・スパーク氏は、「オフセット対象地で(伐採予定地と)同等の質と面積の生態系が維持される確証もなしに出光が露天掘りのために絶滅危惧種の森林を破壊するとは驚きだ」と述べている。リアード州有林にはとりわけ多くの貴重なコウモリが生息している。その理由は、ボックスガムの老齢樹林がつくる多くの樹洞(じゅどう)と肥沃な土壌にあるという。しかし、出光が用意する名ばかりのオフセットではこうした特質はかなり低減する。国際協力銀行は2013年5月に出光のボガブライ事業に対し350百万米ドルの融資を決定した。JBICを所管する財務省はいまのところ、このオフセットについて十分な対策が取られていると判断し見直しの必要を感じていない。
鉱山拡張事業に対する地元の懸念は生態系の破壊だけにとどまらない。煤塵、騒音、地下水の低下、汚染水の流出など、日常生活の質の維持に対して募る不安は抗議運動の広まりからもうかがえる。
一部住民と草の根のNGOが中心だった抗議活動も今年になってからグリーンピースや原生自然協会(The Wilderness Society)など大きな組織力を持つ団体が加わるなど大きな広がりをみせている。一方で、先祖の埋葬地などの聖地に立ち入りをさえ許されなくなったゴメロイの先住民グループも、ホワイトヘイヴンとボガブライをふくむ鉱山開発事業に不満と抗議の声を挙げはじめた。