わたしたちはモールス・クリーク炭鉱に反対します ―炭鉱開発が自然生態系と地域社会にもたらす甚大な影響への懸念―

2014年1月30日
伊藤忠商事株式会社
代表取締役社長 岡藤正広殿
電源開発株式会社
取締役会長 前田泰生殿

わたしたちはモールス・クリーク炭鉱に反対します
―炭鉱開発が自然生態系と地域社会にもたらす甚大な影響への懸念―

拝啓

下記連署にある諸団体を代表し、多くの問題を抱えるモールス・クリーク炭鉱に対する深甚なる懸念を以下に述べさせていただきます。日本にとって石炭の最大供給国であるオーストラリアは現在、資源ブームに沸いています。しかし、オーストラリアの炭鉱事業がもたらす影響はコミュニティ社会の分断や地下水の枯渇など多岐にわたっており、オーストラリアで最も肥沃とされる農地に破壊的な影響をあたえたり、炭鉱に近接するコミュニティには深刻な健康被害をもたらしています。モールス・クリークはオーストラリアの炭鉱産業の拡大よって大きく翻弄されている多くのコミュニティのうちのひとつです。

オーストラリア国内で現在開発が進められている炭鉱事業で最大規模のホワイトヘイヴンのモールス・クリーク炭鉱はニューサウスウェールズ州北西部のガネダ盆地に位置しています。モールス・クリーク炭鉱は権益の15%を伊藤忠商事が、10%を電源開発(J-POWER)が保有しています。

このエリアには数万年前からゴメロイ(Gomeroi)の先住民たち居住しており、地球上で最も古くから継承されている文化を守っています。ゴメロイのグループは、モールス・クリークをはじめとする多くの炭鉱開発企業のサイトをふくむエリア一帯の土地に対して先住権 (Native Title)を請求しています。かれらは炭鉱事業によってリアード州有林内のかれらの聖地が破壊されるのではないかと深く憂慮しています。実際、ゴメロイのコミュニティはオーストラリア連邦政府による緊急的介入を要請しており、「アボリジナル・トレス諸島島民文化遺産保護に関する法」に基づいて先祖の埋葬地をふくむ、開発によって影響を受ける恐れのあるエリアの破壊を食い止めようとしています。モールス・クリークの炭鉱事業はゴメロイの伝統的な土地保有による文化遺産を壊滅させようとしているのです。

リアード州有林には、連邦政府が絶滅危惧種に指定している”ボックスガム”のオーストラリア大陸最大の手つかずの森林地帯が分布しています。リアード州有林内の数千ヘクタールにもおよぶ在来植生は、400種近くの動植物を育んでおり、その中には31種の希少種と数種の絶滅危惧種の生態群衆の生息地が存在しています。

モールス・クリーク炭鉱は地下数百メートルにわたって永久的なボイド(空隙)を生じさせるため、かけがえのない地下水に永続的な影響をもたらすでしょう。開発事業は全一週間、24時間稼働し、それにともなう騒音と煤塵は地域の住民コミュニティの健康に悪影響をあたえるでしょう。

高い保護価値を有するこのエリアは保護されてしかるべきです。わたしたちは、ここの自然環境と地域コミュニティを救うために御社の持てる影響力を行使されることを要望いたします。

この問題の重大性にかんがみご検討のほどよろしくお願い申し上げます。

敬具

熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
Front Line Action on Coal
Lock The Gate Alliance
Northern Inland Council for the Environment Inc.
350.org
Greenpeace Australia Pacific
The Wilderness Society Inc.
Quit Coal Sydney
「環境・持続社会」研究センター(JACSES)
インドネシア民主化支援ネットワーク(NINDJA)
環境=文化NGO ナマケモノ倶楽部
国際環境NGO FoE Japan
レインフォレスト・アクション・ネットワーク

PDF: Maules Creek Cosigned Letter (Japanese)

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