出光興産による豪州ボガブライ石炭鉱山拡張に反対する  ―拡張開発が森林を含む自然生態系と地域社会にもたらす影響への懸念―

プレスリリース
2013年12月16日
熱帯林行動ネットワーク (JATAN)

出光興産による豪州ボガブライ石炭鉱山拡張に反対する
―拡張開発が森林を含む自然生態系と地域社会にもたらす影響への懸念―

日本に輸入される石炭の最大供給国であるオーストラリアは現在、資源ブームに沸いている。しかし、企業による土地の収用によって存続の危機を迎えている地域は少なくなく、また採掘の事業によって生じる煤塵、地下水枯渇、農地の分断化などで生活自体を脅かされている農民も増えている。ボガブライ(Boggabri)はまさに、そうした石炭採掘によって大きく翻弄されているコミュニティのひとつである。

豪州ニューサウスウェールズ州リアード州有林で進められている出光興産の現地企業によるボガブライ石炭鉱山拡張開発は貴重な森林ばかりか、国の絶滅危惧種に指定されているコアラの生息地を破壊し、さらに地域農民の生活や土地権を主張する先住民社会に深刻な脅威を与えている。JATANはこのような石炭開発を中止するよう出光興産に要求するとともに、当該プロジェクトに多額の融資を行っている国際協力銀行(JBIC)に対しても融資の見直しを求める。

州北部のリバプール平原で最大の在来植生エリアであるリアード州有林には州・連邦両政府が絶滅危惧種に指定している”White-Box Gum Woodland”が分布し、またオトメインコ(swift parrot)をはじめとする危惧種鳥類やグレーター・ミミナガコウモリ(greater long-eared bat)、コアラ(koala)などの野生動物が生息していることが確認されている。

リバプール平原に数万年前から居住しているゴメロイ(Gomeroi)の先住民たちは、ボガブライをふくむこのあたり一帯の土地に対して先住権 (Native Title)を請求している。リアード州有林にはかれらの多くの文化的な遺産が存在しているが、一帯の石炭採掘事業によって大きな影響を受けるだろうと言われている。

出光興産は当地において2006年から一般炭の生産を開始し、2010年から生産量を拡大し2012年見通しでは生産量378万トンだった 。JBICはこのプロジェクトに対し、日本企業によるエネルギー資源の開発促進を支援する目的から、融資金額350百万米ドルを限度とする貸付契約を締結している

JBICの融資については「環境社会配慮のためのガイドライン」に抵触するのではないかと思わせる疑問点がいくつかある。出光興産が講じようとしているオフセット案については、事業が自然環境に与える影響によって策定しなければならない代替措置を規定する条項(p.12)に照らして、本来的に逸脱することが懸念される。また、上記ゴメロイのコミュニティによる請求を考えても、FPIC(自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)(p.15)が十分に配慮されたかという疑念も払拭されない。

じっさい、農民や住民をふくむ現地の団体は7月に、ボガブライと隣接のモールズ・クリーク(Maules Creek)に対して下された環境大臣の事業認可の撤回を求めて、連邦裁判所に提訴した

本日、モールズ・クリークで行われた大規模な抗議集会には住民団体に加えて、グリーンピースや現地NGOも参加して、ホワイトヘイヴン(Whitehaven)のみならず、出光興産のボガブライに対しても抗議の声が挙げられていた。先祖代々からの農業を受け継いでいる住民のリック・リアード氏は、出光の拡張事業が貴重な森林と生活に与える危惧をつぎのように語っている―「わたしたちは森と農地、水を守ろうと三年以上も前から企業の石炭採掘拡大を阻止しようと闘っています。出光による拡張は、希少動物や先住民の聖地をふくむ2000ヘクタールの森林を破壊することになります。出光がこのまま、地元コミュニティの生活ニーズをないがしろにし、暮らしと未来を壊すような事業をつづければ住民への信頼を裏切ることになります」。

このような大きな影響を現地社会と自然環境に与えることが懸念される拡張事業を速やかに取りやめることを要求する。
以上

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2013.12.16 Press Release (JATAN)