2003年2月14日
日本に輸出されて紙原料となるために「安く」伐採されているオーストラリア・タスマニアに残る世界で最も背の高い広葉樹を守るため、日本の市民がその伐採権料を買い取り、守りたいという意志を表明した。
世界の森林保全のために活動している日本のNGO、熱帯林行動ネットワーク(JATAN)は、2月14日、タスマニアの州有林を管理しているタスマニア林業公社(Forestry Tasmania)に対し、原生林の大木の伐採権を売り渡して伐採権を放棄し、その大木を保護する権利を与えることを依頼した。
JATANは、昨年9月より「タスマニアの原生林をわたしたちの手で救おう!」キャンペーンを展開し、世界に現存する森林の中で最も古く、最も壮大な冷温帯性の原生林が、1トンあたり平均700円前後という安い伐採権料で伐採され、日本に輸出されて紙原料となっていることを訴えた。そして、日本人がこうした伐採に反対する意思を表明するために、いくつかの大木を買い取り、シンボル的に伐採から保護する運動を日本で進めていた。タスマニアでは、オーストラリア国内で生産される木材チップの約6割が生産されており、オーストラリアで最も森林破壊が進行している場所である。高さ90m、重さ300〜400トンにもなる大木でも、伐採権料は20〜30万円程度にしかならず、環境に与える影響と比較すれば非常に「安く」伐採されている。
JATANは、E-mailやホームページ等によって、この運動への参加を呼びかけたところ、65名が伐採権を買い取って保護する活動に「参加する」と回答した。65名がこの活動のために払う用意があると回答した金額は、合計100万円以上にもなった。計算上は、300トンにもなる大木の伐採権を3〜4本買うことができることになり、日本人が原生林を守りたいという意志が示されている。合わせて行ったアンケートでも、回答者の67%がタスマニアの原生林を「絶対に伐採すべきでない」と答え、「他の方法があるなら伐採すべきでない」と答えた30%と合わせ、97%が原生林の伐採に反対意志を示した。
タスマニア林業公社が公有林の伐採権を外部に売り渡すことを認めるかどうかは不明だが、JATANは、日本人が貴重な原生林を守りたいという意志を示すことができただけでなく、日本人の紙消費のために原生林がいかに「安く」伐採されているかを日本人や現地のオーストラリア人にも訴えることができたと考えている。
オーストラリアでは、伐採された広葉樹天然林の約4分の3が輸出用の木材チップに加工されており、そのほとんどが日本に輸出されている。一方、日本が輸入する広葉樹木材チップの約3割がオーストラリアからのものである。広葉樹木材チップは、日本では主に印刷・情報用紙の生産のために用いられている。詳しくは、「紙と森林伐採について考えるページ」 まで。
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