98年 4月

日本製紙連合会会長 小林正夫 殿

植林問題の新聞広告に関しての日本製紙連合会向け質問書

拝啓 

 私たちは、森林保全、リサイクル、企業進出などの問題に関する活動をしている市民です。

 私たちは5月4日付けの朝日新聞および日本経済新聞の朝刊の中の製紙連合会の全面広告を読み、その内容が事実を歪め、一般読者に誤解を与える危険性のあるものを含んでいると考え、その疑問点につき貴会のご見解を確認いたしたく存じます。

 つきましては関連の下記の質問事項についてご回答をお願いいたしたく、ご対応をよろしくお願いいたします。

1.古紙余剰等について

(質問1)古紙が余っているのは、「ゴミ減量とリサイクルが浸透したため」であるとされ、古紙の需要と供給のバランスが崩れてしまったということですが、「リサイクル55計画」では、古紙利用比率向上目標が未達成に終りました。製紙メーカーの方では、こうした問題の解決に関してどのような努力を払われたのでしょうか。

(質問2)古紙100%のトイレット・ペーパーを製造している業者を圧迫してまで、大手メーカーが100%バージン・パルプのトイレット・ペーパーを量産されているのはなぜでしょうか。

(質問3)新聞紙はリサイクルの優等生、とありますが、「紙パ技協誌」などの専門誌の論文を見ると、今日の新聞用紙をめぐる過酷な品質要求などのために、必ずしもこの広告で言われる「平均45%の古紙混入率」ではないことが示されています。30%そこそこというのが専門家の見方のようですが、いかがでしょうか。また具体的に各メーカー、新聞社の新聞用紙の古紙利用率をお教えいただけるでしょうか。

2.森林減少について

(質問4)広告では「紙の原料はほとんどが製材時に出る残材や製材に不向きな低質材を利用している。しかも多くは、森林が増加傾向にある先進地域からの輸入である。」と述べられています。

1. 製材残材の場合、北米などでは製材需要が少ない時、あるいは紙パルプ需要が大きい時、かなり良い部分もパルプ、チップ用に丸太が回される、といわれています。

またオーストラリアでは日本向けのチップ用が製材用より圧倒的に大きい、というデータがあります。製材残材であれば、森林破壊とは無関係である、とは必ずしも言えないのではないかと思われますが、どのようにお考えですか。

2. 「製材に不向きな低質材」について

何を「低質材」ととらえておられるのか、具体的例をあげて教えて下さい。これまで私たちが伐採現地の環境保護団体などから問題があると、指摘を受けてきたものだけでも、1)オーストラリアのユーカリ原生林、2)米国の南東部地域の広葉樹林二次林、3)カナダBC州、アルバータ州などの日系パルプ工場、4)チリの南極ブナ原生林、5)インドネシアのマングローブ林(カリマンタン、イリアンジャヤ、6)沖縄のヤンバルの森の広葉樹、7)かつての日本のブナなどの広葉樹林(家具、製材とともに)、8)極東シベリアの亜寒帯林など数多くあります。日本向けチップあるいはパルプ製造のために利用されるこれらの森林は、仮に高品質材は製材などに回され、パルプ・メーカーは「低質」材中心の利用であっても、「皆伐」を促進することになり、森林生態系に悪影響を及ぼしている、という指摘をどのようにお考えでしょうか。

(質問5)この広告に出ておられた前会長の会社が資本参加されているカナダBC州のCrestbrook ForestIndustries社、Howe Sound Pulp&Paper社の場合、周辺の原生林などの皆伐を行っていることや、環境汚染がかなりひどいことが伝えられていますが、どのようにお考えでしょうか。

(質問6)北米では森林蓄積は増加しているという報告はあるものの、過剰な伐採で原生林の減少スピードは著しいものがあり、多くの環境保護団体や科学者は、森林の「量」以上に「質」の問題が問われるべきであると主張しています。こうした北米における「森林の質」の劣化の問題について、またそのような劣化と紙パルプ産業との関係についてどのようにお考えですか。

(質問7)連合会や宮崎緑さんは、開発途上国の森林減少の問題に関して、焼畑や薪炭材、過放牧などを指摘されています。近年途上国におけるパルプ産業の発展には目覚ましいものがあり、その結果、熱帯雨林材をパルプ原料にしている事例や植林のために、住民の共有林を伐採したり農地を強制的に取り上げたりする事例あるいは森林火災の出火元にもなっている、との報告が増えていますが、PNGの事例、インドネシア(スマトラ)など、日本と関係が深いと思われるケースなどにつき、連合会のご見解をお聞かせください。

(質問8)パルプ工場の廃棄物を燃料として使い、エネルギー効率を高めている、と発言されていますが、現在主流の広葉樹クラフトパルプ工場の場合、原料木材の半分以上が廃棄物になると思われますが、こうした場合エネルギーベースでは効率がよくても、木材資源から見ると大変無駄の多い技術体系であるという指摘をどうお考えになりますか。

3.植林について

(質問9)海外植林活動について今後も拡大するとされていますが、植林は一般的に大規模な土地利用の転換を意味することが多く、OECDの開発援助や世界銀行などの基準では環境アセスメントの対象にしています。こうした環境、社会面に関するアセスメントやモニタリングに関しては、これまでどのような配慮をされてきたのでしょうか。また周辺住民との合意形成に関しては、どのような努力をされてきたのでしょうか。

(質問10)さらに植林は地域住民の雇用と生活の安定をもたらす、とのことですが、植林地における労働は年間を通して雇用機会があることは少ない季節労働であり、土地を奪われたり売ってしまった住民が窮乏状態に陥ることが多いという指摘がしばしばなされています。これについてどうお考えですか。

(質問11)森林によるCO2の吸収機能について触れられていますが、途上国などで製紙会社が行う植林の多くは、植林/伐採のサイクルが5〜11年という短いサイクルであり、科学者も短伐期の植林はシンクとしてカウントできないと指摘しています。また海外植林活動によるCO2吸収量を日本の貢献であるとしてカウントする一方で、なぜ海外での伐採という負の貢献はカウントされずに済むのでしょうか。このようなやりかたは不公正であると思われますが、連合会のご見解をお聞かせください。

(質問12)また短周期の植林の拡大は土壌劣化や生物多様性の喪失、火災や病虫害問題の増加など、CO2吸収以外の面の問題点とを合わせて検討すべきと思われますが、こうした問題点をどのようにとらえておられますか。

(質問13)各製紙会社の植林について、場所(国、地域)、樹種、植林面積についてのデータをご提示下さるようお願いいたします。また今後5年間くらいの計画についても同様に公開をお願いいたします。

 製紙業という社会的にも重要な産業活動が、地球上の生態系の劣化をこれ以上進めないということは、人類にとって最も重要な課題の一つである考えております。また、新聞の購読者として、消費者として、こうした問題について正確な情報が提供されるべきと考えています。

敬具

ウータン・森と人を考える会
「環境・持続社会」研究センター
GlobalWitness(英国)
古紙問題市民行動ネットワーク
サラワク・キャンペーン委員会
進出企業問題を考える会
日本消費者連盟
熱帯林行動ネットワーク

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