ロンドンとワシントンを活動拠点にする環境保護団体EIA(Environmental Investigation Agency)と、インドネシアのボゴールが拠点の環境保護団体テラパックは2月17日、蔓延するインドネシアから中国への違法材の取引は10億ドルの規模になっており、アジア太平洋地域の最後に残る原生の熱帯林を脅かしているとのレポートを発表した。
EIAとテラパックが公表した最新のレポート『最後の秘境(The Last Frontier)』によれば、インドネシアのパプア州で行われたメルバウの木の大量略奪行為の背後には、国際的な犯罪組織が関与している。主にフローリング材として用いられる高価な広葉樹であるメルバウは、パプア州から毎月約30万m3が違法に輸出され、中国の木材加工産業に供給されている。現在の好景気により、中国は世界一の違法材の買い手となっている。
多くの場合、パプア州における違法伐採には、インドネシア軍との共謀、マレーシアの伐採グループの関与、地域社会の搾取が見られる。利益は莫大である。地域社会の人びとは、彼らの土地で切り倒された1m3のメルバウに対して約10米ドルしか得ていないが、その同じ1m3のメルバウが中国では約270米ドルにもなる。
EIAとテラパックの秘密裏の調査によって、インドネシアから中国への違法木材の輸送には、仲買人のネットワークが存在することが明らかにされた。現在、インドネシアは丸太の輸出を禁止しているため、これらの強力な犯罪組織は、インドネシア領海で違法木材が没収されるのを回避するために、1回の輸送に約20万米ドルの賄賂を支払っている。
パプア州から違法に伐採されたメルバウ材の大半は、中国の上海近郊に位置する張家港の港に送られ、真の原産地を偽るためにマレーシアで偽造された文書を用いて税関を通過している。これは中国の法律に違反している。
その後、これらの木材は、中国の木材フローリング製造業の中心的都市である南潯の近郊の町に運ばれる。5年前、この町にはわずかな数のフローリング工場しか存在しなかったが、現在その数は500以上に上り、メルバウ材のみを扱う200以上の製材工場から原料が供給されている。工場では毎日、毎分一本のメルバウの丸太がフローリング材に加工されている。
EIAのジュリアン・ニューマン氏は「インドネシアと中国は、2年以上も前に違法材の貿易に対して共同で取り組む内容の同意書に正式に調印した。しかし、現在まで、この合意は実行に移されていない。インドネシアと中国間のメルバウ材の違法貿易は、両国の法律に違反している。つまり、行動を起こす明確な理由はある。違法貿易の犯罪組織を撲滅させるためには、両政府による連携した取り組みが必要である」と述べた。
注1;インドネシアのパプア州は、ニューギニア島の西部に位置する。原生林が約70%を占めるニューギニア島は、アジア太平洋地域で最後に残る広大な未開地域である。
注2;中国の木材輸入量は、1997年の100万m3から、2002年の1600万m3へ増加している。
(2月17日、EIA/Telapakプレスリリースより)
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