世界の森林問題ニュース

APP社の行動計画をWWFが拒否

 インドネシアなどで紙パルプを生産しているアジア・パルプ&ペーパー(APP)社とWWF(世界自然保護基金)の6ヶ月に及ぶ交渉は、森林保護地域を追加する持続可能性行動計画を合意することなく終了した。

 APP社とそのグループ企業は、世界で最も生物多様性に富み、スマトラゾウやトラの重要な生息地でもあるインドネシアの森林を皆伐している。2003年8月、APP社とその親会社であるシナルマス・グループは、APP社の持続可能な木材調達と、社会面・環境面ともに価値の高い森林の保全に関する、今後12年間の行動計画を作成することに合意する趣意書に署名していた。

 「国際社会が責任ある企業に期待する計画を、APP社は立てなかったのです。我々は、APP社から買い付けを行っている小売店に対して、その買い付けが森林にどれだけの影響を及ぼすのか、またスマトラに生息するゾウやトラをどれだけ危機にさらしているのかを考えてみて欲しいと訴え続けています」と、WWFの生物種保全計画部長のトム・ディロン氏は語る。

 WWFは、いくらかの進展が見られたことと、またAPP社が所有地の一部を伐採せずに保全地域とすることに合意したことを歓迎している。しかし、同社が今回提出した計画は、流域保全と気候調節、主要な種の生息地としての森林の非常に重要な役割を考慮していない。また、APP社は今なお今後2年間に18万ヘクタールの天然林を伐採する計画である。スマトラでは、世界で最も急速に森林が失われている。

 APP社のスポークスマン、ジョイス・ブディスサント氏は、WWFが同社に森林伐採をやめるよう求めているが、それは不可能だと発言した。

 APP社が製造しているコピー用紙、ノート、その他紙製品は、世界の大手小売店で販売されている。オフィス・デポ社やステープルズ社などの、APP社のアメリカ国内の顧客は、WWFのAPP社との交渉を支持している。

 「現在、稀少で傷つきやすいスマトラの天然林が伐採されていることや、それによって絶滅の危機に瀕した種にもたらされる悪影響は、当社の企業価値と環境方針に合致しません」と、オフィス・デポ社の環境部長タイラー・エルム氏は語る。「当社では、APP社に我々の懸念を直接伝えています。特に、2004年1月19日には、持続可能な原料である明白な証拠が得られるまで、オフィス・デポ社はAPP社からの買い付けを行わないことにしたことを伝えました」

 アメリカと日本の顧客企業は、APP社がインドネシアの天然林の伐採をやめないことを理由に、同社との契約を見合わせている。

 APP社にとって、顧客を失うことは、米ドルにして139億ドルの負債を解消するどころか、より一層事態を困難にする可能性がある。1990年代の拡大の資金のために、銀行と国際金融市場から何年も多額の借金をした後、2001年3月に同社は債務不履行に陥っている。

 インドネシア政府は、2月に開催された生物多様性条約の締約国会議において、テッソ・ニロ地域の森林の重要性を認め、その一部を国立公園とすることを公約している。

(2月20日Environmental News Network、2月21日Associated Pressより、JATANにて編集)

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