JATANが昨年立ち上げた「タスマニア原生林(TOG)保護基金」では、現地の3団体の活動に対して支援を行ないました(JATAN NEWS No.60参照)。2回目の報告として、ジャッキーズ低湿地地域住民の会(JMRA)の活動について紹介します。
2004年に、JMRAはJATANから基金の提供を受け、ジャッキーズ低湿地地帯(タスマニア中央北部)の保護価値の高いオールド・グロス林の伐採計画に対する対応を行った。
基金の使途は以下のとおり。
1. 調査のために雇用された3名のコンサルタントは、JMRAと林業公社に対して提言書を提出。同提言書は2004年後半にJATANに送付済み。
提言書では、伐採予定地域内における保護価値が高いエリアを特定した。また3名のコンサルタントは、コンサルタント、林業公社、森林施行評議会の三者間でデータ妥当性を検証するプロセスを策定し、三者の各々が、判断の根拠を形成する情報の共有化をはかれるようにした。
*この提言書により、すべての関係者が合意する、保護価値が高い森林地域を特定することができた。これら地域は、域内の50%以上が伐採予定だったにもかかわらず結果的に伐採から救われることになった。(強調はJMRA)
2. 地域住民による協議から後押しを受け、JMRAは地域森林のために次の四つの対応案を提示した。@公式な保護地化による完全なる保護、A非公式な保護地化による完全なる保護、B公式な保護地化による、「ジャッキーズ低湿地道路」(Jackeys Marsh Road)下方の全伐採予定森林の部分的な保護、C非公式な保護地化による、「ジャッキーズ低湿地道路」下方の全森林の部分的な保護。地域住民による協議では林業公社も会合に参加したが、上記三者による最初のデータ妥当性検証後には、林業公社自体も独自の対応案を提示した(問題になっている地域の完全伐採)。
結局、この協議プロセスではひとつの妥協案に落ち着いた。地域住民側の4つの案はいずれも林業公社の賛同を得られなかった。林業公社側はその独自案を地域住民側に再提案し、さらなる審査を要求した。
この結果、合同プロセスがつくられ、地域住民側コンサルタント、林業公社の開発専門官、地域住民代表が、相互に受入れ可能な伐採計画案を策定することとなった。「森林施行計画」なる案はその後、より小規模な、最終的な地域住民との協議に任せられた。その後JMRAとの広範囲の協議の末、地域住民代表は、林業公社にとっても賛同し得るいくつかの小さな修正を加えた上で「森林施行計画」を支持した。
* 全体としては、伐採地域は当初の50ヘクタールから約37ヘクタールにまで縮小された。実質的にはこれは、4つの協議段階を経て20ヘクタールまでになった。
3. キャンペーン活動は、環境権の配慮、とりわけ植林問題と保護価値の高い森林(オールドグロス林)の保護をめぐり、林業公社との折衝を試みることを重点的に行われた。
今回の協議は、JMRAがはじめて公式に伐採について林業公社を相手に行った交渉であった。JATANからの基金提供によって環境に関わる協議提言書をつくることができた。この提言は、地域住民による懸念をプロセスに反映させる上で欠かすことができないものだったのである。
* 最終の「森林施行計画」では、伐採予定地域内における新しい4ヵ所の非公式保護地と植林特定地域の創設が含まれることになった。これらの場所は伐採の適用を受けず、さらに周辺域の緩衝地帯も認められた。重要な保護価値の高い森林(オールド・グロス林)のすべては伐採の対象外とされ、最終的には伐採は、これまですでにその地域で伐採が行われていた森林にのみ制限されることになった。しかしこの地域でも、重要なオールド・グロス林が残っているものの、過去に伐採の影響を受けており、その生態系はすでに価値が低減している。JMRAとしては、どのような伐採も受け入れたくなかったが、コンサルタント、林業公社、森林施行評議会の三者による共同作業を含め、協議プロセスの結果として保護が決まった地域のあることを踏まえて、伐採に反対する環境面の根拠がすでに失われていることを認めるしかなかった。
JATANの基金がなければ、こうした成果は得られずオールド・グロス林を木材チップ化から守ることはできなかったであろう。(強調はJMRA)
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