SFIがアメリカ南部の科学者から批判を受ける

 90人以上の科学者が、環境を守る面で信頼のできない森林認証制度の見直しを求めて、SFI(持続可能な林業イニシアティブ ※注;アメリカ合州国、カナダで適用されている森林認証制度で、全米林産物製紙協会(AF&PA)が開始したもの)の理事会に意見書を送った。

 3月31日、ノースカロライナ州のローリー市とテネシー州のナッシュヴィルで合同記者会見が開かれ、SFIの認証基準についての再検討を促すことを求めてアメリカ南部の90人以上の著名な科学者が署名した意見書が発表された。その意見書では、SFIが伐採会社が誤解を招く販売と宣伝方法を用いることによって、その製品があたかも適切に管理されている森林からのものであるかのように顧客に信用させている、と指摘している。

 「過去20〜30年以上にわたる大規模な皆伐や森林から植林への転換、化学物質の使用によって、アメリカ南部の多くの森林の生物多様性と生態系が傷つけられてきた。こうしたことは、森林の長期的な生態系の未来に懸念を抱く科学団体にとって、看過できない」と、デューク大学のドリス・デューク保全団体会長、スチュアート・ピム博士は語った。

 2005年の初め、SFIは新しく改訂した認証基準を発表した。この改訂された基準や手順は、多少の進歩が見られるものの、変更点の多くは現場での具体的な結果を必要としていない。

 アメリカ南部で活動する地域社会・環境団体のネットワークであるドッグウッド・アライアンスのキャンペーン部長、ケリー・シーハン氏は、「アメリカ南部の森林は国の貴重な財産であり、現世と後世のために保護する価値がある。私たちは、SFIが基本的な環境基準を満たすまで、紙製品のラベリングなどの誤解を招く宣伝や販売を中止するよう求める科学者たちに賛同する」と言う。

 北アメリカの中でも、アメリカ南部は樹種の多様性が最も豊かな地域であり、また淡水生物の多様性にも世界的にとても恵まれた地域である。製紙業界は、南部の天然林や保護価値の高い森林を皆伐し、マツの植林地に転換している。南部では毎年、約240万haが主に製紙用に伐採され、1300万ha以上の森林がマツの植林地へと転換されている。

 「アメリカ南東部の植物相の多様性は極めて豊かであり、第三紀(約6500万年前から180万年前まで)から生き残っている植物が何種類も存在している。これらの植物は、生物地理史や現代の植物相の未来を理解するのに重要である。この地域の天然林群落の皆伐は、間違いなく種の豊かさを減少させ、地域に根ざした動物の生息地を破壊し、この地域のすべての段階の生物多様性を脅かすだろう。私はこの地域の自然群集を守るいかなる活動も強く支持する」と、ノース・カロライナ州立大学のキユン・シャーング植物学博士は言う。

 SFIは、科学者や保全生物学者たちが信頼のおける認証と製品のラベリングに必要と考えている多くの要素を制度に取り入れていない。とりわけSFIの基準は、オールドグロス林や保護価値の高い森林、絶滅危惧種、水質、魚や野生動物の生息地、そして生態系の機能に必要な天然林の特性を適切に保護しようとしていない。また、SFIは地域や先住民の権利も保障していない。さらに、SFIはその低い基準さえ満たしていない森林から生産された木材や紙製品へのラベリングを認め、製品の本当の中身を明らかにしていないのである。

(ドッグウッド・アライアンスHPより)

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