カナダの雑誌が原生林不使用へ

 カナダの雑誌出版協会は2004年6月、環境にやさしい雑誌の出版の取り組み方法をまとめたガイドを発行した。この中で、カナダの森林の重要性に触れ、他地域とともに世界の原生林を保全するために、市中回収古紙を最大限に使用し、原生林材を使用しないコート紙の需要を作り出す先導的な役割を果たすよう提言している。

極めて貴重な役割を果たすカナダの原生林

 カナダの原生林には、国内に生息する14万種類の動植物のうち、約3分の2が生息していると推測されている。カナダには2種類の森林が存在している。ニューファウンドランドからアラスカまで北部を横断する亜寒帯林と、北米西岸部のアラスカ南部からブリティッシュコロンビアを通り、カリフォルニア北部まで広がる温帯雨林である。

 温帯雨林は全世界の陸地の0.2%しか残っていない。多様で複雑なこの森林生態系は、氷河期以降の1万年以上にわたる自然活動によって形成された。ブリティッシュコロンビア州の原生温帯雨林では、樹齢1000年以上にもなるスギや、樹高90m以上になるシトカスプルースなどが見られる。こうした豊かな温帯雨林には、数多くの鳥や動植物が生息している。

 ブリティッシュコロンビア州の原生林は、その半分以上がすでに伐採されており、元来あった大きな温帯雨林の渓谷のうち、手つかずに残っているのは20%しかない。

 亜寒帯林は、カナダとロシアを合わせると地球上の炭素蓄積の約40%を占めており、地球温暖化防止にきわめて重要な役割を果たしている。亜寒帯林の果たす役割は非常に大きいため、樹木が成長する季節には、大気中の酸素濃度が上昇することが確認されている。

 カナダの亜寒帯林は5億3000万ha(日本国土の約14倍)におよび、世界に残る手つかずの森林の中でも最も大きな面積を誇るもののひとつである。ヘラジカ、クマ、カリブーが生息しているほか、186種類の鳥が確認されている。現在、亜寒帯林の南部地域が激しい開発の被害を受けており、ウッドランドカリブーやクズリ、ハヤブサなどの絶滅が危惧されている。

雑誌出版業界が原生林使用停止へ!

 紙生産に用いられる原料の一部は植林地や持続可能な方法で伐採されたものもあるが、雑誌やカタログ、電話帳、コピー用紙、書籍に用いられる原料のかなりの部分に、今も原生林材が用いられている。カナダの環境保護団体、消費者、多くの業界代表者は、現在の紙生産は環境面において持続可能なものではないという意見で一致している。

 カナダ雑誌出版協会は、2004年6月に開催された定期会合で発表した「コート紙に関するエコキット」の中で、紙原料を転換する取り組みを進めていくことを提言した。

 古紙を原料にして作られた紙は、紙の大口消費者にとって、現在入手可能で、価格的にも最も手ごろな代替品である。脱墨処理とパルプ生産技術の向上によって、再生紙の質はこの15年間で劇的に改善した。また、非塩素漂白技術によって、紙生産時に発生する有害化学物質の排出を減少させることができるようになった。現在、古紙100%の再生紙を純パルプ紙と比べても、実質的にすべてのグレードにおいて同じ質が得られるようになっている。

 「エコキット」では、原生林にやさしい方針を策定している雑誌出版社として33社を紹介すると同時に、より多くの企業が同様の方針を策定するよう呼びかけている。

 ブリティッシュコロンビア州では、書籍を出版する企業で構成している業界団体が同様の「エコキット」をすでに発行しており、多くの出版社が原生林への負担が少ない紙の利用を進めている(JATAN NEWS No.59参照)。

望まれる日本出版業界の取り組み

 日本では、カラー写真を掲載する雑誌などにコート紙が多く利用されている。印刷・情報用紙全体の古紙利用率が約20%であることから、コート紙の古紙利用率は非常に低いと推測される。出版社が取り組みを進めることによって、国内において森林環境に配慮した紙の利用が進むことが期待される。

※カナダ雑誌出版協会の「コート紙に関するエコキット」は、http://www.oldgrowthfree.com/pdf/Coated_Paper_Ecokit.pdf に掲載されています(英語です)。■

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