JATANは今年2月に、タスマニアの原生林を守るため、現地で原生林の保護運動に取り組む小規模グループへの経済的な支援を目的とした「タスマニア原生林保護基金(TOG保護基金)」を開始し、この基金の趣旨に賛同いただける方々からの募金を集めてきました。最終的に集まった額は、453,355円にのぼりました。ご協力いただいた方には感謝申し上げます。一方、タスマニアからは、3団体から支援の申請を受けました。これを受けて、日本及びタスマニアからの合計4名からなる審査委員会が審査を行なった結果、いずれの活動も当基金の支援基準を満たしていることから、ターカイン全国連合(TNC)とジャッキーズ低湿地地域住民の会(JMRA)にそれぞれ2,020ドル、『フォーレスト・ボイス』紙に1,500ドルを支援することと決定しました。以下に、それぞれの団体と活動内容を紹介します。
ターカイン全国連合(以下、TNC)は1994年の結成以来、タスマニア北西部にひろがるターカイン原生地域保護を目的とするキャンペーン活動を精力的に展開してきました。現在、地域・国内および海外の170を超える会員とさまざまな自然保護団体がメンバーに名前を連ねています。TNCキャンペーン運動の原動力を担っているのが、地元在住の中核メンバーと2名の非常勤スタッフです。およそ44万ヘクタールに及ぶターカインは、州政府の保護対象となっていない原生地域としては、タスマニア最大の広さを誇ります。ターカインは世界最大級の、先住民の残した考古学的な遺跡を有しており、氷河期の爪跡をそのまま残す険しい山々、手つかずの海岸線、広大なボタングラスとヒースの草原、それにオーストラリア最大の温帯雨林により、非常に稀有な自然地形を形成しています。このようにターカインは世界遺産登録に必要な多くの基準を満たしており、現在、TNC先導のもとに、登録認可に向けた運動が続いています。
TNCでは地域住民による支援活動を促進すべく、さまざまなイベントを行っています。抗議デモや啓発用チラシの発行のみならず、市民の集い、公開スライドショーなどを企画しています。ターカインの置かれている窮状について議員達と頻繁に討議を重ねたり、映画製作者たちと共同して、一般市民の意識覚醒に努めています。また、国立公園および世界自然遺産指定への推奨に向けてターカイン深奥部にまで大規模な現地踏査を行なっています。しかし、連邦議会選挙が迫っている今、首都キャンベラでのロビー活動に力を注ぐべき時です。ボランティアスタッフは定期的な「キャンベラ詣で」をしています。
TOG基金は、TNCに対して2,020ドルの支援を決定しました。基金は、この世界的に重要な温帯雨林地帯を伐採から守る活動、とりわけ、次の連邦議会選挙で有力視される政治家やその選挙参謀に配布しなければならないおよそ400部の情報キット製作費の一部に充てられます。
ジャッキーズ低湿地地域住民の会(以下、JMRA)は、グレート・ウェスタン・ティアーズ(クーパルーナ・ニアラ)国立公園提唱地域(以下、GWT/KN)の森林保護運動において、この30年近く中心的な役割を果たしてきました。とりわけ1992年から1997年は、94,000ヘクタール規模の国立公園化をめざす促進運動にかかわりました。
GWT/KNは非常に保護価値の高い、急斜面に位置する森林地帯です。いまやここだけにしか残らない、多くの動植物群を擁しています。中央台地(Central Plateau)保護区における低地林から山岳地帯に至る生態系の垂直的な推移をあらわす、ひとつの重要で代表的な特徴を提供しています。ジャキーズ低湿地は、GWT/KN の中にすっぽり収まる、2,000ヘクタールの渓谷を形成しています。この地域に残る、最後の貴重な未開発森林相のひとつに数えられています。これまでの努力のおかげで、部分的な保護を勝ち取ることができました。しかし、1997年の地域森林協定の締結時に、広大な面積が、タスマニアの伐採会社ガンズ社に木材チップを供給するため伐採されることが認められてしまいました。
TOG基金は、JMRAに対して2,020ドルの支援を決定しました。基金は、GWT/KN内における保護価値の高い森林の木材チップ用伐採を阻止するために、伐採の脅威にある森林の保護価値の評価、通信費(電話、電子メール、ファクス)、そして伐採の脅威のあるエリア(HU303Y)の保護価値を広く広報するための広報活動費の一部に充てられます。
『フォーレスト・ボイス』紙の創刊号は、「オーストラリア保護基金」から資金提供を受けて2001年春に発行され、成功裏にデビューを飾ることができました。全国および海外に向けて25,000部が配布されました。『フォーレスト・ボイス』紙の目的は、タスマニアで原生林保護につとめる活動家達に発言(ボイス)の機会を提供することにあります。
『フォーレスト・ボイス』紙はタスマニア中で配布されています。場所は、各地の店舗、カフェ、環境センター(地域の自然環境保護のための住民による団体組織)、街の情報コーナーなどです。また、「原生自然協会」や「地球の友」、「オーストラリア保護基金」、大学といった主要施設でも配布されています。キャンベラのすべての連邦政府議員にも送付されています。
『フォーレスト・ボイス』紙第3号はまもなく発行される予定です。記事の執筆予定諸氏を紹介しますと、「オーストラリア緑の党」代表で連邦議会上院議員のボブ・ブラウン、「緑の党」選出の上院議員候補のクリスティン・ミルン、「原生自然協会」キャンペーンコーディネーターのジェフ・ローといった面々です。『フォーレスト・ボイス』紙ではまた、日本の製紙企業を相手におこなわれているロビー活動の模様をつたえる記事や、スティックス渓谷で展開されている国際的なキャンペーン、Global Rescue Stationについての「グリーンピース」の記事も掲載する予定です。
TOG基金は、『フォーレスト・ボイス』に対して1,500ドルの支援を決定しました。基金は、『フォーレスト・ボイス』紙第3号の発行部数を確保するため、その発行費用に用いられます。
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なお、活動支援金によって行われた活動および会計の報告は、現地団体からの報告を受け、2005年7月頃までにJATANのホームページなどに掲載する予定です。
「タスマニア原生林(TOG)保護基金」支援活動報告
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