Endangered Forestとは何か?

 北米では、世界の破壊的な森林伐採を止めるために、森林環境に配慮した木材の調達(購入)を行なうユーザー企業が増加しています。調達方針を進めるにあたって、"Endangered Forest"から生産された木材については取り扱いを避けるべきであるという考え方が広がっています。

 しかし、この"Endangered Forest"はわかりにくい表現です。これは原生林やオールドグロス林等の生態学的見地からのみ捉えたものではなく、人権や先住民の権利の侵害が行われている森林や、違法に伐採された林産物も含んでおり、利用を避けるべき木材を包括的に表した概念と言えます。

 また、環境面についても、原生林のみならず、世界的に見て希少なタイプの森林や、人間の活動によって稀少となった森林も含まれており、保護すべきと考えられるものがより広く含まれています。

 この"Endangered Forest"の概念は、アメリカのNGOが合同で提案しているもので、木材の利用者に対して、(1) Endangered Forestの消費を削減すること (2)十分な保全手段が講じられるまで、この地域から原料調達することを避けること (3) Endangered Forestではないと思われる地域から調達すること (4)合法な木材原料を入手することが非常に難しい地域、人権や先住民社会の権利が侵害されている地域を避けることを求めています。

 日本国内でもこのような概念を広めていくことによって、保護すべき森林や避けるべき木材を体系的に提示していくことが必要と思われますので、今後、国内の他のNGOとともに検討していきたいと思います。

※これまでJATANでは、"Endangered Forest"を「危機的状態にある原生林」とか「保護価値の高い森林」などと訳していましたが、訳語を再検討しています。■

Endangered Forest(EF)の定義

◆カテゴリー1:自然環境の理由により稀少な森林

EF定義:自然環境の面で希少な森林の中で、未開発であるすべての森林地域

事例:地中海性気候の森林(北米、南米、オーストラリア南西部、ユーラシア、南アフリカ)、温帯雨林(北米、チリ、タスマニア)、熱帯雲霧林(中米、南米、アジア)

◆カテゴリー2:人間の活動によって稀少となった森林

EF定義:人間の活動によって希少になった森林の中で、すべての未開発の森林、原生林、オールドグロス林

事例:南米大西洋岸の森林、インドネシアの低地熱帯雨林、タイやコスタリカの熱帯乾燥林

◆カテゴリー3:手付かずの(未開拓または未開拓に近い)森林

EF定義:十分な保全対策がないか、過渡期にある手付かずの森林

事例:カナダやロシアの亜寒帯林、インドネシア、ベネズエラ、アマゾン西部、コンゴ盆地、ニューギニアの低地林、アラスカ、チリ、アメリカのロッキー北部

◆カテゴリー4:その他の生態学的に重要な森林

EF定義:オールドグロス林区域、絶滅に瀕した生物種や群れの重要な生息地、アメリカ国内の道路が建設されていない地域、地域の調査によって生態学的に重要であると認められた回廊や緩衝地帯内の森林

◆カテゴリー5:人権や先住民の権利の侵害が行われている森林

EF定義:先住民族の権利の侵害などの人権侵害が引き起こされている森林。先住民の権利、人権の侵害は、以下を含む:

  • 地域住民の生活、慣習地、安全、健全な環境の権利を損なう林業
  • 森林に依存する人々の権利を尊重せずに、対立が起きている場所での林業
  • 先住民への事前の説明・同意なしに行なわれている操業
  • 国際的な人権に関する基準に反した制度の下で行なわれている林業

◆カテゴリー6:違法な林産物

EF定義:合法性は、生産国または生産地域の法律や関連した国際条約によって定義される。違法に伐採され、輸送された林産物には、没収された後に市場に戻った商品が含まれる。違法に伐採された林産物を販売ルートを通して得たものも、このカテゴリーに含まれる。

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