JATAN NEWS No.57で、インドネシアの合板会社が違法に伐採された木材を利用している実態について、JATANがスマトラ島リアウ州で行った現地調査の報告をしました。今回は、前回報告できなかった他の3つの合板会社の調査結果について報告します。
ラジャ・ガルーダ・マス(Raja Garuda Mas)グループの合板会社、アジア・フォレスタマ・ラヤ社(PT. Asia Forestama Raya)の工場は、リアウ州の州都パカンバル郊外にある。生産された合板は、日本やタイに輸出されている。 同グループの伐採会社、フタニ・ソラ・レスタリ社(PT. Hutani Sola Lestari)は、リアウ州中南部のテッソニーロ近くに伐採権地を所有しており、伐採した木材はアジア・フォレスタマ・ラヤ社などに運ばれている。フタニ・ソラ・レスタリ社の労働者や近くの村の村長の話によると、伐採権地内では、近くの村の村人が、たくさんの仲介業者の支援を得て伐採を行なっている。また、フタニ・ソラ・レスタリ社自体も、年間伐採計画の認可を用いて、その計画に違反した伐採を行なっていると言う。
フタニ・ソラ・レスタリ社の伐採地の近くにあるグヌン・サヒラン村の村長は、伐採会社やアカシア植林などによって村は大きな影響を受けていると言う。グヌン・サヒラン村は、マラユ人が暮らす伝統的な村である。村人は森林の伝統的な所有権を主張しているが、政府は認めていない。10年前はラタンなどの林産物を採取して暮らしていたが、政府が会社に伐採権等を与えてから村人は森に入れなくなった。伐採によって川の水位が下がり、土壌流失によって水質が汚染され、堆積が起きた。森の中の林産物も少なくなり、森林伐採によって生息地を失ったゾウなどの野生動物が村のゴム園を荒らすこともある。植林されたアカシアの森には野生動物はおらず、また、アカシアの葉は枯れ落ちても腐食しにくいため、地面に堆積し、他の植物が育たないと言う。
1998〜99年には、他の村とともに伐採会社に抗議行動を起こしたが、警備員や警察、軍によって鎮圧された。その際、2人が負傷し、車を壊されたため、村人には悪い記憶となっている。会社は、一度は伐採を止めることに合意したものの、その後も伐採を続けている。
現在では、伐採権地内で直径が25cm以上の樹木を見つけるのは難しくなっており、伐採会社は直径15cmの小径木も伐採していると言う。インドネシアの林業法では、伐採権地内においても直径が50cm以下の樹木を伐採することを禁止しているので、明らかな違法行為であり、政府が定めた天然林の択伐システム(TPTI)に反している。また、ジャワ島や北スマトラからの移民や出稼ぎ労働者が、仲介業者の支援を得て違法な伐採を行なっており、伝統的な所有権を主張している村人は不満を抱いている。そのため、現在では、村人も伝統的な森林の所有権があることを理由に伐採を始めており、森林の所有権があいまいになっていることが森林の破壊を加速させている。伐採された木材は、アジア・フォレスタマ・ラヤ社のほか、製材工場や紙パルプ工場に売られている。
ウニセラヤグループの合板会社、パンチャ・エカ・ビナ・プライウッド社(PT. Panca Eka Bina Plywood Industri)の工場は、リアウ州中部を流れるシアク川沿いにある。同グループの伐採会社、ダイアモンド・ラヤ・ティンバー社は、インドネシアで天然林伐採を行なう会社の中で唯一FSC認証を取得している会社であるが、地元NGOの調査では、違法伐採や地域住民との対立も引き起こしていることから、多くのインドネシアのNGOが同社のFSC認証に疑念を抱いている。
パンチャ・エカ・ビナ・プライウッド社の労働者の話によると、同社が使用している木材は、ダイアモンド・ラヤ・ティンバー社やウニセラヤ社の伐採権地のほか、カリマンタン、マンダウ川、カンパール川からも来ていると言う。マンダウ川からの木材は、アジア・パルプ&ペーパー(APP)グループのアララアバディ社の皆伐によるものか、伐採権を持たない地域住民が違法に伐採したものである可能性が高い。また、カンパール川からの木材は、陸路を運ぶ際に警察などに多額の賄賂を払うことを避けるために水路を用いているものであり、伐採された木材が違法なものであることを物語っている。工場に運び込まれる木材は直径40cm前後のものが多いと証言していることから、違法であり、持続可能な伐採ではない。
地元の人の話では、パンチャ・エカ・ビナ・プライウッド社の労働者は、ほとんどがジャワ島や北スマトラからの移民で、地元住民はあまり雇用していない。また、住民に対する社会貢献や利益の還元を行なっていない。
スルヤ・ドゥマイグループの木材会社であるプラワン・ランバー・インダストリ社(PT. Perawang Lumber Industri)は、シアク川沿いのピナンスバタン村に位置している。日本への合板輸出が多く、2003年に改正JAS(日本農林規格)の認定も取得している。
ピナンスバタン村の村長の話によると、1ヶ月100万ルピア(約1万4000円)と給料が低いため、村人は会社で働きたくないと考えており、プラワン・ランバー・インダストリ社で働いている村人は5人だけであると言う。会社が加工している木材は小径木が多く、直径は30cmのものも少なくないと言う。 スルヤ・ドゥマイグループの伐採会社、ロカン・ペルマイ・ティンバー社(PT. Rokan Permai Timber)は、リアウ州北部に伐採権地を所有している。この土地は、元々は先住民族サカイ人が、漁業のほか、シカ、イノシシなどの狩猟で暮らしていた場所である。しかし、インドネシアでは先住民の土地権が認められておらず、政府は会社に伐採権を与えてしまった。200家族いたサカイ人は、70km離れたランガンに移住し、農業やアブラヤシ、会社の労働者として働いている。会社が伐採を始める前は広く森林が残っており、30頭くらいのゾウが生息していたが、今は伐採の影響で1〜2頭しか残っていない。
伐採会社の事務所の警備員の話によると、伐採している木材の直径は30〜50cmで、50cm以上のものはほとんどないと言う。伐採された木材のほとんどが合板工場に運ばれる。
事務所には、8人のサカイ人が働いていた。彼らは現在の状況について、森林は元々サカイ人のものであったが、会社の操業が止まると給料をもらえなくなるので、ジレンマであると言う。政府は10軒の家を提供してくれたが、彼らに必要なのは生活の手段であると言う。
これまでに紹介したリアウ州の5つの合板会社の調査結果から、いずれの合板会社も違法に伐採された木材を原料として利用していることが明らかになった。インドネシアでは、林業法において直径50cm以下の樹木の伐採が禁止されているにもかかわらず、どの会社においても、利用している木材のほとんどが50cm以下のものであることがうかがえた。また、それぞれの会社の伐採権地内では、他の州からの移民や出稼ぎ労働者による違法伐採が行なわれており、それによって得られた木材を積極的に利用している例も見られた。言うまでもなく、違法伐採は管理されたものではないことから、持続可能なものではない。
一方、森林に依存した生活を送っていた地域住民は、会社によって森林を奪われ、野生動物や非木材林産物の収穫ができなくなっただけでなく、伐採による水資源の枯渇や河川の汚染などの影響を受けている。また、他の州からの移民や出稼ぎ労働者による違法伐採が進むことによって、伝統的な森林の所有権を主張する地域住民との対立が起きたり、住民同士の間で伐採競争のような状況を招き、森林の破壊を加速させている例も見られる。伐採が進むことによって、森林に生息する野生動物が減少していることは言うまでもない。
こうした状況がリアウ州だけでなくインドネシア全土で進行していることは、インドネシアで生産される木材の8〜9割が違法伐採によるものであることや、合板がインドネシアの主要な木材製品であることからも容易に想像できる。
違法な方法や環境・社会に悪影響を与えている方法で生産された製品を取り扱うことは、現地のそうした操業を支持していることにもなる。インドネシア合板を利用している日本企業は、取引先の企業の操業状況について確認し、生産地における環境や社会への影響に対しても責任ある調達を行なう必要がある。
インドネシアの合板会社と違法伐採への関与(前編) | 出版物「インドネシア合板と違法伐採」
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