インドネシアの合板会社と違法伐採への関与

 これまでのJATAN NEWSにおいて、インドネシアで違法伐採による森林破壊が進行している現状について報告してきた。インドネシアの違法伐採問題と日本との間は、どのような関係があるのだろうか。それを考える時、日本がインドネシアからどのようなかたちで木材を輸入しているかをみる必要があるだろう。

 2002年に日本がインドネシアから輸入した木材および木材製品の量は、製材が34万m3、合板が256万m3、パルプ14万トン、紙29万トンなどであった。丸太については、インドネシア政府が輸出を禁止している。すなわち、日本はインドネシアからは、木材の多くを合板の形で輸入している。また、日本が輸入している合板のうち、インドネシアからのものが55%を占めており、インドネシアの合板産業と違法伐採との関係は、消費国である日本も無関心ではいられない。

 2000年現在、インドネシア国内には、108の合板工場があるが、多くは企業グループの中で活動している。

 グリーンピースは、インドネシアで最大の伐採権地を保有し、世界最大の合板輸出企業であるバリト・パシフィック・グループについて調査を行い、バリト・パシフィック・グループが押収された違法伐採材を競売によって落札して合法化(ロンダリング)した経緯を詳しく報告している。アメリカの研究者ブラウンは、2001年にバリト・パシフィック・グループの製材工場と合板工場に供給された木材の3分の2は、出所不明または違法木材であると報告している。

 JATANが2003年にスマトラ島リアウ州で行った現地調査においても、合板会社が違法に伐採された木材を利用している実態が明らかになっている。今回は、シアク・ラヤ・ティンバー社と、カンパリ・ウッド・インダストリ社についての調査結果について報告する。

シアク・ラヤ・ティンバー社(PT. Siak Raya Timber)

 シアク・ラヤ・グループに属しているシアク・ラヤ・ティンバー社は、スマトラ島リアウ州の中央部に位置するテッソ・ニーロ地区に伐採権(HPH)を所有している。

 伐採キャンプで私たちのインタビューに応対した労働者の話によると、警察などに多額の賄賂を払うことを避けるため、伐採した木材はカンパール川を下って一度海に出て、合板工場があるシアク川を上って運んでいる。こうした行為は、伐採された木材が違法なものであることを物語っている。伐採権を持っていない地域住民が違法に伐採した木材も購入しているが、それを止めようとすると伐採者が抗議するため、買うのを止めることはできないと言う。

 インドネシアの林業法では、生産林内においても直径が50cm以下の樹木を伐採することを禁止しているが、シアク・ラヤ・ティンバー社のキャンプの敷地内に積まれていた木材の直径は30cm程度しかない小径木が多く見られた。明らかな違法行為であり、政府が定めた天然林の択伐システム(TPTI)に反している。

 シアク・ラヤ・ティンバー社は、地域住民との軋轢も抱えている。同社の伐採権地内にあるランタウ・カシ(Rantau kasi)村の村長の助手は、私たちのインタビューに対して、会社は地域住民に対して利益を与えていないと答えた。モスクを建設してくれたことはあるが、経済的なものは感じていない。1999年に、政府は利益の5%を住民に還元するよう命令したが、それを誰が受けているのかは不明である。会社は、住民の上層部とだけ関係があるようだと言う。

 シアク・ラヤ・ティンバー社はシアク川沿いに工場を持っている。自社の伐採権地からも木材が供給されるが、その多くは直径が25〜30cmのもので、林業法に違反している。木材は、カンパール川のランガンから、川を下って一度海に出た後、シアク川を上って工場に運ばれる。また、シアク川沿いのブンガ・ラヤ村やプダダラン村の地域住民が違法に伐採した木材も購入している。

 シアク川を挟んで工場と反対側に位置するマレンパン村の村人の中で、工場で働いている人は20人しかおらず、若者が就職を申請しても断られているという。また、工場から排出される煙はひどく、雨が降ると水源が汚染されたり、干している洗濯物が汚れたりする。インタビューに応じてくれた男性は、降ってきた灰が目に入り、それ以降、目がよく見えなくなったと言う。同じような被害にあった人は他に4人いる。この被害について村長や会社に訴えたが、回答は得られていない。飲み水は、雨水を一晩沈殿させたものを利用している。村人にとって、工場の排煙による大気汚染は最も深刻な問題であると言う。

カンパリ・ウッド・インダストリ社(Kampari wood industry)

 バリト・パシフィック・グループに属しているカンパリ・ウッド・インダストリ社は、シアク川沿いに工場を持つ。シアク川やその支流周辺に位置するスンガイ・マンダウやスンガイ・ガシップから木材供給を得ている。スンガイ・マンダウには伐採権を持っておらず、地域住民が違法に伐採した木材を購入している。スンガイ・ガシップでは、中国人の仲介業者が地域住民に資金を供給して伐採させており、カンパリ・ウッド・インダストリ社は、その業者から木材を購入している。生産された合板はJASマークが付けられ、1ヵ月に3回の頻度で日本に輸出されている。

 工場が位置するブアタンI村には300家族が暮らしているが、その多くがカンパリ・ウッド・インダストリ社に雇用されている。労働者の話によると、会社は村人に良質な水を供給したり、住宅用の建材を無料で提供するなど、住民に対する配慮は行っていると言う。しかし、違法伐採によって雨季に洪水が発生することもあるので、伐採とその影響については、「ジレンマだ」と話していた。

 インドネシアの合板会社による違法伐採への関与については、現在も調査中だが、以上の通り、伐採権を所有している合板会社も違法伐採に少なからず関与していることが明らかになった。2000年時点の情報で、インドネシア林業省は、インドネシア国内の合板企業の約50%が違法伐採による丸太を購入していると報告していた。その後の状況から考えると、今や、その割合は少なからず高くなっていると想像される。違法伐採がインドネシアの木材生産の8割を占めるとも言われる今、インドネシア合板を利用している日本企業は、その操業状況について確認すべきである。

インドネシアの合板会社と違法伐採への関与(後編) | 出版物「インドネシア合板と違法伐採」

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