6月24日、メガワティ大統領とともに来日していたプラコサ林業大臣と亀井農林水産大臣は、日本インドネシア違法伐採対策協力「共同発表」と同アクションプランに署名した。思えば、昨年アジア森林パートナーシップ(AFP)がスタートして以来、JATAN等が求めてきた二国間の行動計画がやっとできたことになる。
インドネシアは現在、伐採の持続可能性や先住民族の権利といった重要な問題とは別に、違法伐採という大きな問題に頭を抱えている。違法伐採はインドネシアにおける森林破壊の最大の原因のひとつである。こうした森林破壊によって、5000万人とも言われる森林に依存している人々の生活が影響を受けているだけでなく、森林破壊が原因の洪水も多発し、多数の死者を出すなどの大きな被害が続いている。違法伐採の対象は国立公園などの保護区も例外でなく、違法伐採が行われていない国立公園は1つだけであるとも言われている。
イギリスとインドネシアは、昨年4月に違法伐採に関する二国間の覚書(MoU)を交わしたが、AFPはその直後の5月に日本政府とインドネシア政府との間で合意された。イギリスとのMoUでは、インドネシア国内の木材追跡システムの構築や木材の違法貿易への対処などに触れていたことから、AFPでも同様の行動が進められることが期待された。しかし、AFPは扱うテーマが違法伐採だけではないことや、参加国が多いこともあって、具体的な行動については意見がまとまらない状態であった。こうしたことから、JATAN等は「違法伐採問題の解決が急務なインドネシア等との二国間MoUを結び、優先して進めること」を提言していた(JATAN NEWS No.54参照)。
今回署名されたアクションプランの内容は、以下の通りである。
(林野庁プレスリリースより) |
6月24日に東京で開催された「違法伐採対策国際シンポジウム」において、プラコサ林業大臣は、「持続可能な森林経営が行われる水準まで伐採量を段階的に引き下げる。それによって合板などの生産量も減少することになり、インドネシア国内だけでなく、日本などの輸入国にも大きな影響がある」としながらも、「違法伐採問題の解決のためには避けられない」と、強い意欲を示した。日本側の出席者にも、大臣の意気込みが伝わったのではないかと思う。
このアクションプランに関しては、JATANはドラフト作りの段階から意見を提出し、木材貿易データの逐次収集・交換システムなどを用いて、違法材である(インドネシア側を通関していない)ことが判明したものに対して輸入禁止措置をとるための新たな法律の制定や、国内の産業界による取り組みを促進することを求めた。また、6月21〜22日に名古屋で開催した「全国森林NGO戦略会議」でも、このアクションプランについて議論を行った。その結果、ラミンなどの違法材排除のための木材関連業界に向けた通達及び指導・啓発を行うことなどを求める要望書を作成し、14団体・個人の連名により関係省庁に提出した。しかし、こうした日本側の行動や責任については、小さな項目としてあげられているだけで、強い意志が感じられないのは残念である。
違法伐採の対策を研究している専門家の間でも、違法伐採の解決のためには、伐採現場よりも木材需要側(国内加工産業、海外需要を含む)における対策の方が重要であるという意見で一致している。また、インドネシア国内からは、「違法材の輸入国やユーザー企業も犯罪のパートナーである」といった声も聞かれる。インドネシアの木材製品の最大の輸出先が日本であることを考えれば、消費国としての日本もインドネシアの違法伐採問題に大きく関わっていると言える。
近年、欧米では、自社が取り扱う木材製品の原料供給源を確認し、木材原料の選別を行う企業が急速に増加している。国内でも、全国木材組合連合会は、「森林の違法伐採に関する声明」を発表し、「明らかに違法に伐採され、又は不法に輸入された木材を取り扱わない」ことを傘下の木材業界に勧告した(JATAN NEWS No.54参照)。こうした取り組みをさらに促進し、日本政府と産業界が一体となった取り組みを進める必要がある。
JATANは今後も、アクションプランに盛り込まれた内容について実効性のある行動を求めていきたいと思っている。■
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