森林破壊の原因について、前回の商業伐採に続き、今回は農地開発を取り上げます。
農地開発は、特に中南米、アジア、アフリカで森林に大きな影響を及ぼしています。農地開発(農地転換)とは、農業を行うために森林を切り開くことですが、それには焼畑農業や、アブラヤシ(オイルパーム)やゴムなどの商品作物の農場経営などがあげられます。ここでは、熱帯林破壊との関係について論議の多い焼畑農業と、特にアジアで拡大しているアブラヤシについて見ていくことにしましょう。
焼畑農業とは、森林、草原を刈り払い、倒れた樹木や草などを燃やしてから陸稲、イモ類、雑穀類などを栽培する農業のことです。焼畑農業の本質は、単に火を使用することではなく、1回ないし数回作付けした後に畑を放棄して別の場所に移動し、焼畑跡地を自然の植生回復に任せることにあります。
樹木を燃やすと後に灰が残ります。これが作物の肥料になります。また、火の熱により有機物の分解が促進されて養分が増え、同時に土壌が殺菌されて病害の予防にもなります。さらに、一度焼いた後の燃え残りを集めてもう一度燃やすことで、後に生えてくる雑草の量を少なくすることができます。
放棄された焼畑跡地では、次第に植生が回復します。まず、放棄直後には草と一緒に樹木が一斉に生えてきます。そして、樹木がある程度の大きさになって葉が茂り、太陽の光が地面にあまり届かなくなると、樹木の下に生えていた草が急激に減少します。樹木が人間のももの太さくらいまで成長すると、再び耕作地として利用されることになります。すなわち、焼畑耕作は以前利用した土地で循環して行われるものであり、切り開かれるのは再生した二次林です。
このように、焼畑民族によって営まれている伝統的な焼畑農業は持続可能なもので、熱帯林破壊の原因ではありません。
しかし、近年はコショウなどの商品作物や、貨幣経済の浸透により現金収入を得るために、休耕期間を短くして完全に回復していない休耕地を利用することで土壌を劣化させてしまったり、さらなる収穫のために農地を広げるなど、焼畑農業のやり方も変化しています。また、新たな農地を求めて森林地域にやってきた入植者が、非持続的で地力収奪的な火入れ開墾を行なうことも多く、こうした方法は熱帯林破壊の原因のひとつとなっています。
このように、農民が森林に火を入れて行う農業を、まとめて「焼畑」として熱帯林破壊との関係を論ずる方法は誤解の原因となるため、その農業のやり方に注意する必要があります。
アブラヤシのプランテーションは、現在、熱帯林地域の100万ha以上に広がっています。メキシコからブラジル、西アフリカから東アフリカ、東・東南アジアからオセアニアにかけてのほとんどすべての国において、さらなるプランテーション拡大事業が推し進められています。
アブラヤシプランテーションの開発は、森林を皆伐して行われるため、商業伐採よりもさらに悪い影響を環境に与えています。プランテーションは広い範囲で除草剤を使っているので、一度破壊された森林は再生できない上、その土地の動植物、土壌、水資源にも深刻な影響を与えます。さらに悪い場合は、1997〜98年のインドネシアのように、プランテーション開発会社による開墾のための火入れが原因で、森林火災が発生することもあります。
一方で、プランテーションが地域の人々に与えている社会的影響も無視することはできません。プランテーションは無人地帯に造られるわけではなく、地域の人々の土地はプランテーション開発会社によって奪われてしまいます。ほとんどの熱帯地方で、地域の人々は伝統的な土地の所有権が認められていません。会社は政府から土地権を与えられ、地域社会からのどんな反対をも抑圧するための支援を受けます。また、プランテーション開発によって森林が失われることは、彼らが受けていた森林からの生産物や恩恵を失うことでもあるのです。
出版物「世界の森とわたしたち:今 世界の森林がどうなっているか」のお知らせ
ニュースレター記事一覧 | 世界の森林の現状 | 熱帯林Q&A | ホームページ
© 1999-2003 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)