〜国際的な取り組みの状況〜

生物多様性条約第6回締約国会議の結果は「複雑な心境」

 生物多様性条約(CBD)の第6回締約国会議が4月7日から19日までオランダのハーグで開催されたが、成功とも失敗とも言い難い終幕であった。特に、主要な協議事項のひとつであった森林の生物多様性の問題に関しては、出席者の多くが「複雑な心境」を抱いた、というのが最も適切な表現であろう。

 締約国会議の主な成果は、閣僚宣言と森林の生物多様性に関する作業計画の採択である。

 概して、閣僚宣言には評価できる部分の方が芳しくない部分より多く盛り込まれた。宣言文では、生物多様性が今なお破壊され続けていることや、「いくつかのすぐれた事例を除けば、我々の対応はあまりに少なく、あまりに小さく、あまりに遅すぎる」ことを認めた。各国の大臣は、「対話から行動への移行」、そして森林に関する作業計画を「完全に実行すること」を約束した。また、貿易に関連した協定が森林の生物多様性保全と相反していることさえも認め、CBDと貿易に関連した国際協定(特にWTO)との間に「相乗効果と相互支持的であること」を求めた。これらはどれも非常に評価できる点である。

 閣僚宣言の主な芳しくない点は、15項(b)において、締約国が他国の環境に影響を及ぼさない範囲において「自国の環境政策に従って自国内の資源を開発する主権」を有することを再確認している点である。これは、条約が法的拘束力があるものであり、批准すれば遵守しなければならないことを意味しているという事実を無視しているかのようである。こうした声明は、「国家主権」論議の下では、各国は条約に従う必要がないことを意味することになる。

 CBDの科学技術助言機関(SBSTTA)により昨年11月に作成された作業計画は、非常に有用な文書である。しかし、締約国会議では、誰もそれを実行する義務はないことを確認した。このことは、「各国国内の森林とその生物多様性に係る国家の主権と責任を明確にし、・・」と始まる11項に盛り込まれている。

 これは、「国家主権」を守るという建前の下、政府がやりたいことを何でもできるということを意味している。さらに11項には、「各国の優先順位と必要性に従って」締約国が作業計画を施行するべき(「しなければならない」ではない)であること、そして活動は「国や地域それぞれの必要性や国策、法律、森林に関連する問題に関する状況や優先順位、各国の森林及び生物多様性戦略に基づいて優先順位が付けられる」と書かれている。もし、決議事項の遵守義務がないのなら、国際的に法的拘束力をもつ合意文書を主権国家が批准しても、いったい何の意味があるのか、という疑問がわいてくるのは当然だ。

 実際、この文言は今回の会議の主な問題点をよく表している。すなわち、「北」も「南」もほとんどの国において、決議事項を遵守するという政治的意思が欠如している。政治的意思は森林保全における重要課題である。こうした状況において、閣僚宣言と作業計画は、森林関連の合意文書の実行を求める声を大きくすることに役立つかもしれない。この2つの文書はスタート地点としてはいいものになり得る。

(WRM Bulletin No.57よりJATANにて編集)

ニュースレター記事一覧 | ホームページ

© 1999-2003 熱帯林行動ネットワーク(JATAN)