森林は、木材や紙を生産するための経済的な価値の他にも、数多くの動植物の生存の場であり、森に依存する人々の生活を支え、また、私たちの生活環境を守る役割も果たしています。
森林には多くの動植物が生息しています。地球上の生物種の総数は、数百万とも数千万種とも言われていますが、その3分の2以上は森林を住処としています。その中でも、熱帯林は非常に繊細で豊かな生態系を維持しており、地球の全陸地面積の7%を占めるに過ぎないにも関わらず、全生物種の半数以上がこの地域に生息していると推定されています。現在、森林の減少によって40〜70%の野生動物が影響を受けていると言われており、生物の歴史から考えると、過去とは桁違いの速度で絶滅が進行しています。遺伝子資源の面から見れば、医薬品の半分近くは自然界からのもので、その多くは熱帯植物が原料となっています。アメリカの研究所では、抗ガン性のある植物3,000種のうち、70%は熱帯林産のものと認めています。
森林に住む人々は、食糧、住居など生活のあらゆる面で森に依存した生活を送っています。動物や果実などの食糧、様々な種類の薬草、衣料としての繊維、工芸品の材料、住居やボートを作る木材、燃料としての薪のほか、狩りや調理のための道具も森から得ています。彼らは何世代にもわたって蓄積してきた森林資源に関する伝統的な知識を持っており、「森は自分たちのスーパーマーケットのようなものだ」と言います。世界の熱帯諸国において、熱帯林で生活し、それに依存している先住民の数は100万人に及ぶと言われています。先住民は多種多様な民族・部族で構成されており、それぞれが独自の文化や信仰、伝統を持っています。こうした人々が熱帯林破壊による直接の被害を受けているのです。■
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